悪神編 5
1間といえば、おおよそ1.8メートルとなろうか。
髭を生やし、髪はちぢれ、目つきは鋭い。
服装は今風になっているが、シャツはダサさがにじみだしている。
それらが相まって、近寄りがたい雰囲気を出していた。
「ほぅ、懐かしいやつが顔を出したな」
髭を撫でつけながら、グイと我へと顔を近づける。
わずかな酒の匂い、それと鉄臭い。
「まだまだ現役の神であろうな。その酒の匂いからすると」
我が尋ねると、神社の隅を指さす。
供物が並べられている。
この町にある酒屋、それといくつかの商店からの供物のようだ。
鉄臭いのはここにはない、こやつ自身に原因がある。
「預けておいたものをな、返してほしいのじゃが」
「ああ、あれか。ちょいと待っておけ」
神社の奥に戻り、再び出てきたこやつには預け物を手にしていた。
「何ですか?」
大人の男の手のひらほどの長さがある筒状に入れられ、さらに袱紗に包まれているそれを、一つずつ封を切っていく。
人形が興味深そうにのぞき込んでいるが、それもつかの間のことのようだ。
最後の封を、言霊で切ると、一瞬中が光る。
何十何百の太陽を刹那に閉じ込めたかのような輝きは、すぐに終わる。
「おお、使えるようになったの」
それは小刀である。
「いつか忘れたがの、こやつに作ってもらっておったのじゃ。小刀、銘は夜半」
0.4尺にわずかに届かぬ、おおよそ12cmといえば長さはわかるじゃろう。
小刀一つとってみても、この者の能力の高さがわかるじゃろう。
「まあ、暇だったから研いでおいてやったぞ」
「おお、有難いことじゃ」
元のように戻し、それをポケットに入れる。
そこまで大きくなかったのに、いつの間にやら小刀が入る大きさとなっておった。
「それでは行こうかの」
「どこへ行かれようと、ご案内しますよ」
手を振っておる天津甕星命は神社の億へと戻り、扉は閉まる。
「そうじゃの、まずはどこへ行こうかの」
ここから先は当ての無い旅となろう。
「ひとまずはおぬしの神社へと戻ろうかの。それからどこに行くかを決めようぞ」
「承りました」
ひょこと人形は言葉を発した。




