神父と悪魔編 24
私が宮司へと尋ねる。
「それで、お見せになられたいものとは」
宮司は、こちらへ、と言って神社の一角へと連れてきた。
そこは蔵のそばにある、数年前に建てられたといったところの小屋だった。
昔、小説の挿絵で見たような長屋を、一部屋分だけ作ったという小さなものだ。
「入るぞ」
「どうぞ」
中にいる人へとひと声かけてから宮司は、木の戸を右へとスライドさせる。
「枢機卿が参られた。ほれ、話していた」
「よく知ってるさ。来ることはこちらの『友人』から聞いていたからな」
正座している一般日本人のような人と向き合う形で、円形の背の低いテーブルをはさみ、座布団と呼ばれる敷物に立膝で座っている、実に見覚えのある人物がいた。
「よう、遅かったな。待ちくたびれていたぞ」
「……さすが、ですね」
私はその悪魔、サタナキアはすっかりくつろいでお茶を飲んでいる。
「お知り合いで?」
宮司が私に尋ねた。
「ええ、片方は、ですが」
ある意味腐れ縁だ。
ここまでくれば、もうあとはどうとなれ。
「書置きがあったから、あとを追いかけたんだよ。そしたらこんな辺鄙なところで跡が止まったんでな。ちょいっと飛んできたっていうことよ」
「あの詩篇、意味が分かるための伝承があると聞きましたが」
サタナキアを無視しつつ、少し騒いでいるがそれもすぐに落ち着いて、私は宮司の紹介の悪魔へと話を聞くことにした。
「枢機卿猊下なるものが、この時で如何程の力を持っているか、俺は知りませぬ。然しながら、その力は相当なるモノである、それは見てすぐに理解いたしました。サタナキアを従えているのが、某の証拠となりましょう。どうぞお上がりください、宮司さんも一緒に。昔も昔、今や我以外知らぬ昔話を聞かせましょう」
私が家に上がると、まずはその者が名乗った。
「遅れましたが我は壷中天と申します、以後どうぞお見知りおきを」
一礼を私にしてから、壷中天は話をしてくれた。




