2001年組編 10
組長が瞑想から醒ますと、夕方であった。
「組長、深く想われておりましたゆえ、触れずにおりました」
「……天使だ」
「天使ですか」
組長が先ほどの情景を反芻する。
「天使が、我らに、特に我らに伝えたのだ。神の計画がまもなく成就すると」
「おお、ということは、つまり」
「地下の者らは、そのためのもの。我々に協力し、彼らがともについてくれるということだ」
宗教としては、それで正しい。
だが、果たしてそうなのだろうか。
天使は神の計画が成就すると言っただけであり、それ以上はほとんど何も言っていないに等しい。
広めよ、増やせよという言葉にしたって、2001年組の勢力を増させろということに、必ずしも繋がるということもなかった。
しかし、それであっても組長らは、天使からの天啓が訪れ、自分の教義近い事を言っただけでも大事件だ。
「全ての仲間に伝えろ。神の計画が成就するとな」
「すぐに。暗号で送ります」
1人がパソコンに向かって、すぐにキーボードを打ち始めた。
組長は、それを言いつつも、先ほどの天使について考えていた。
それがいつ成就するのかは、人間には全くわからない。
ただ、万能たる神のみが、それを知る立場にあった。




