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2001年組編 9
組長がふと見上げると、何かが漂ってきているのがわかった。
まるで絹布のように、輝いている。
「神は上に御坐すれば、何処へと行かれる」
組長がその絹布へと尋ねると、絹布は緩やかに人のような形を取った。
それは果たして本当のことなのだろうか。
「神は何処へと。何処にも」
まるで禅問答のようだが、その者は多くは語らない。
「貴殿は何者か」
「我は神の代理人。神の御言葉のままに」
「天使か」
「悪魔も天使も、神の僕。多寡に意味なし、些少に意味なし」
「それはどういう……」
意味なのか、と組長が聞くよりも先に、その天使のような者は、組長の口を、指のようなものでふさいだ。
「言葉はいるまい。すでに貴殿は理解している。広めよ、増やせよ。神の計画は、まもなく成就する」
何か、ということよりも先に、天使は、パンと両手を組長の前で叩いた。




