神父と悪魔編 20
夕食を食べ、部屋に戻り心の平穏のために聖書を読んでいると、ノックの音がする。
「どうぞ、鍵は開けておりますので」
いつでも信徒が来れるように、私がいつもいる教会でも鍵はかけないようにしていた。
ここでも、同じことをしているに過ぎない。
悪魔は部屋の中にはおらず、おそらくはホテルにあるゲームコーナーか、あるいは珍しい温泉という施設に行っているのだろう。
やってきたのは、スーツ姿の人物だ。
「何か御用でしょうか」
聖書を閉じ、私はその人を見る。
男性、身長はだいたい170くらいだろう。
部屋の中だというのにもかかわらず、サングラスを着けているが、他は標準的な日本人のようにみえる。
「猊下、大変心苦しいことではございますが、こちらとともに来ていただきたく存じます」
「それでは行きましょう」
あっさりと私が言ったからか、彼は驚いているように思えた。
「いかがしましたか」
「いえ、あまりにも簡単に答えなさるので……」
「人を呼ぶのは、困った時。困難に立ち向かうものがいる限り、私は良心に従って動きます。私は、今までも、これからも、明らかな良心に従って行動をしてまいりました」
そして、それは私の内なる心、信仰心ともいうべき者の宣言でもある。
私の言葉にたじろいだのか、彼はそれでも私に言った。
「それではついてきていただけますか」
「ええ、いずこへと参りましょう」
正直、悪魔を置いていくのは気が引けるが、それでも呼ばれているのであれば、私は行かなければならない。
一応書置きだけを残して、私は聖書、ロザリオとそれらを入れるための小さなかばんをもって、男について部屋から出た。




