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書物編 19
「どなたでしょうか」
俺は、当然その人に尋ねる。
おそらく男性だろうが、女性的な美しさもある。
「宇宙は一つではない。どこから来たのかは知らねども、ここに来たということは、資格を有するもの」
「資格?」
だが、彼は俺の質問に答えるつもりは全くない様だ。
「万物は流転する、全ては別れ、そして一つにまとまる。人も、魂も、神でさえも」
「神も……」
「万里を駆ける悪魔も、それは泡沫の夢。瞬く暇もなく、水も落ちることもなく、速やかに舞い落ちる。そのとき、神は全ての力を手に入れる。万物をすべる力、万物を手放す力……」
「統べるのに、手放す?」
それを俺が考える前に、彼は一瞬で俺の目の前にいた。
「さあ、時が満ちるまでは、お戻り。1000年期の有資格者よ」
頭を一回グーで殴られる。
とたんに、世界は逆転した。




