神父と悪魔編 8
そして、私が枢機卿として初めて教皇庁を訪問する際、悪魔は少年に姿を変えていた。
悪魔は私の秘書として同行することになっている。
「ここか……」
目指していた部屋は、ずいぶんと深いところにあった。
教皇博物館地下15階、安置室と呼ばれる特別な部屋だ。
さらに、門番2人が部屋の前にいる。
「お待ちください」
二人共、こちらに槍を向けてくる。
「枢機卿、教皇猊下より、書状をお預かりしておられませぬか」
その言葉を聞いて、私は定型を返す。
「我が魂こそが、その書状。だが、記しを欲するのであれば、これこそが記し」
私が見せたのは、教皇様からいただいたロザリオである。
純粋な銀でできており、首から下げるための鎖も同じく純銀だ。
十字架部分のうち、交叉しているところの表側には、サンタマリアが埋め込まれている。
これは、アクアマリンの一種で、その最上級のものを呼ぶそうだ。
ちなみに、交叉の裏側は教皇紋章が彫られている。
「失礼いたしました。どうぞ、お通り下さい」
「神の祝福を……」
門番が敬礼をして槍を収める。
その横を、私たちは通って部屋の中に入った。




