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ガムゼッタ教編 6
夜の帳が、ガムゼッタ候の邸宅の周辺に降りたころ、客人がガムゼッタ候の部屋へと入ってきた。
「ガムゼッタ候……」
「ふむ、お主か。まだ生きておったとわな」
執務机で作業しながら、声の主を見ようともせずに、執務を続ける。
「いやはや、長旅でしたぞ。今回も」
「それで、例のモノは手に入ったかな」
「ええ、こちらにあります」
懐を、ぽんぽんとたたくその男の言葉を聞いて、やっとガムゼッタ候は彼の顔を見た。
「お疲れ様。では、さっそく渡していただきたい」
「ああ、よろしいとも」
そう言って、彼が一冊の本をさしだした。
「『黄泉の天使』。これが、世界を変えるというのだろうか……」
半信半疑ながらも、ガムゼッタ候がつぶやいた。
「さあ、それは、この本の暗号を全て解いてみなければわからないことでしょう」
彼はそう言うと、次の本を探しに、再び長い旅へと出ていった。




