神父と悪魔編 55
「……人類において、悪魔というのは神と対峙するために必要な、存在悪なわけだ。俺がそうであるように、人の欲求というのは、心の中にいる悪魔と神を天秤にかけて動き回ることとなる」
「いまいち話が見えんな。金内さんと悪魔、どういうかかわりがあるんだ」
悪魔の話がつかみようがないふわふわしている話に聞こえる。
「金内の魂の一部は人間だ。だがもう一部については悪魔が眠っている。武装警備で無類の力があると言っていたが、それが原因だろう。ただ、どの悪魔か、まではわからんかったがな」
「まるで異類婚姻譚だな。だが、彼らには彼らの幸せな家庭がある。魂の一部が悪魔ということは嘆かわしいことではあるが、悪魔祓いではない私にはどうしようもないことだ」
「……そうか、まあそりゃそうだよな。俺としては、どんな同族なのかを見ておきたかったていうことはあるんだが、結局血が薄いのか、だれかわからんかったからな」
あーあ、と悪魔は両手を組んで頭の後ろに回す。
そして、飛行機の座席に深く沈みこんだ。
「彼らについては、また日本を訪れることがあれば、また出会うこととなるだろう。だが、そうでなければそっとしておくことが一番だ」
「そりゃそうだ。向こうから向かってこなけりゃ、無駄な体力を使う必要はないからな」
いいながら悪魔はゆっくりと目をつむっていく。
私も、悪魔が言いたいことは言い切ったようだと判断して、聖書へと再び目を落とした。




