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冠編 11
「いやはや、どうやら何か誤解があるようですね」
博士は何か苦笑いを浮かべている。
「誤解、とは?」
俺は思わず聞いてみた。
「アレは『これが賢者の冠の宝石だと伝わっている宝石』です、厳密にいえば。なので本物とは違うのです」
とはいうものの、あれ単体でも国が買えそうなほどの価値があるのは間違いない。
見る前にアーベントさんがここに連れてきてくれていたものの、映像や写真でそれがここにあるということは何度も見ていた。
「では、本物は?」
「……そうですね、では一つだけお尋ねします。これに正解できれば本物をお見せしましょう。もしも不正解であればこのままお引き取りを願います」
すでに博士のカップの中の紅茶は空っぽになっていた。
カップをソーサーに乗せ、それを近くにあった電子レンジの天板の上に置く。
そして俺の前に椅子を持ってきて、じっと俺の目を見ながらその質問を尋ねる。
「賢者の冠の宝石の色は?」