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神父と悪魔編 5
さらに半月が経ち、私が夜の祈りをしていると、清らかな香りが漂ってきた。
それはお香のようでもあり、またはおいしそうな香りでもあった。
「熾天使セラフ様、このようにお会いできる日を、一日千秋の思いで待ち望んでおりました」
私のベッド脇には、いつも背もたれがない丸い座席の椅子がおいてある。
熾天使はそこに座り、私と見つめあっていた。
「お主ならばそうだろうな。以前出会った時と変わらぬようで何よりだ」
熾天使は、飄々とした感じの話し方をしている。
「んだぁ。誰かいるのかあ?」
そこへ悪魔が入ってくる。
「久しぶりだな、悪魔よ」
「…セラフか。何のようだ」
悪魔は部屋のドアを閉め、鍵までかけてから熾天使と向かい合う。
「今日は君たちに、神から話があるということを伝えにきただけ。我は、いうなればメッセンジャーだ」
「では、そのお話とは、どのようなものでありましょうか」
私は悪魔をベッドに座らせながら、熾天使の話を聞き出した。
「うむ、お主らが探している本についてだ」




