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☆☆☆


 私はイライラしていた。怒っていた。

 怒りの原因は幾つかある。自分の中に理解出来ない部分を見付けて、どうして良いか解らないのも理由のひとつだった。


――何かイライラする。何かオカシイ。自分で自分がよく解んない。


 苛立ちマックスでナリの家に急いでいた。

 とにかく怒りを誰かにぶつけたかった。ナリなら聞いてくれると思った。

 私自身に解らない事がナリに解るかは不明だったが、それでもナリなら何か気付くかも知れない。

 ナリが逃げている時には私が気付いた様に。


――じゃあ私は逃げてるって云うのか?


 うっかり見たくも無い何かが心を掠め、更に苛立った。


――大丈夫。大丈夫。ナリなら私を甘やかしてくれる。


 多分。無意識にこう考えていた。

 私はナリが気付きたくない事も突き付けるが、ナリは私が目を背ける事を言及しない。

 私はその事実からも目を背けていたが、ナリはそれ話題にも気付いてる筈なのに触れる事は無かった。


――しまった。内面潜っちまった。私悩むと自家中毒になるってのに。悩むな悩むな忘れなきゃあなんだわ。


 自覚しない様に、気付かない様に、問題点を先送りにして逃げ続ける。私は紛れもなく弱虫だった。


――うああ!更にムカつく!


 自分の弱さを意識すると苛立ちは弥増す。私はプライドだけは肥大した愚かなガキだったからだ。

 陸橋をバタバタと駆け降りた。莫迦なプライドが怒りを爆発させる寸前、私は足を滑らせた。


「ひっ!!」


 痛かった。

 しかし、覚悟した衝撃は来ない。

 誰かに支えられていると意識した途端。

 私は腕を振り上げていた。


「ざけんなっ!!」


 うん。八つ当たりだった。

 助けてくれた人に私は平手打ちした。

 流石にヤバいと考えて、しかし殴ったモノは仕方ない。素直に謝る事も出来ず、私はその場を後にした。


「ふざけてんのは貴様だっ!」


 背後から怒鳴り声が聞こえた。


――まったくだ。


 私は思った。


 唇が切れていた。


――ヤツのは当然ノーカン。これもノーカウントだよな。


 しかし。

 今の男も運が悪いが私も相当運が悪い。

 触れた唇が痛くて、確かに触れた証みたいで、やたら腹が立った。



――まあ、あれだ。あの人はもう会うことも無かろうし。


 失礼を働いたのは確かだが、謝罪の術も見当たらない。

 だから、無かった事にしよう。そう思った。


 しかし五分も経たずに再会した。


「あ………。」

「てめえ!」


 ナリの部屋でアイスを食べていたら、入って来た。ナリの従兄だと紹介された。

 据わった眼差しに、私は潔く頭を下げた。


「先ほどは申し訳なかった。一応理由が有るのだが聞いてくれるでしょうか?」

「まあ云ってみろ。」

「非常に腹立たしい出来事があり、八つ当たりをしました。」

「…………。」


 胸を張って謝罪しました。


「まあ、あれだよ。乙女のファーストキスの代償と思って、ビンタのひとつやふたつは許そうや。ね?」

「お前が云うな。」


 反論は力なく発せられた。


☆☆☆

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