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私はイライラしていた。怒っていた。
怒りの原因は幾つかある。自分の中に理解出来ない部分を見付けて、どうして良いか解らないのも理由のひとつだった。
――何かイライラする。何かオカシイ。自分で自分がよく解んない。
苛立ちマックスでナリの家に急いでいた。
とにかく怒りを誰かにぶつけたかった。ナリなら聞いてくれると思った。
私自身に解らない事がナリに解るかは不明だったが、それでもナリなら何か気付くかも知れない。
ナリが逃げている時には私が気付いた様に。
――じゃあ私は逃げてるって云うのか?
うっかり見たくも無い何かが心を掠め、更に苛立った。
――大丈夫。大丈夫。ナリなら私を甘やかしてくれる。
多分。無意識にこう考えていた。
私はナリが気付きたくない事も突き付けるが、ナリは私が目を背ける事を言及しない。
私はその事実からも目を背けていたが、ナリはそれ話題にも気付いてる筈なのに触れる事は無かった。
――しまった。内面潜っちまった。私悩むと自家中毒になるってのに。悩むな悩むな忘れなきゃあなんだわ。
自覚しない様に、気付かない様に、問題点を先送りにして逃げ続ける。私は紛れもなく弱虫だった。
――うああ!更にムカつく!
自分の弱さを意識すると苛立ちは弥増す。私はプライドだけは肥大した愚かなガキだったからだ。
陸橋をバタバタと駆け降りた。莫迦なプライドが怒りを爆発させる寸前、私は足を滑らせた。
「ひっ!!」
痛かった。
しかし、覚悟した衝撃は来ない。
誰かに支えられていると意識した途端。
私は腕を振り上げていた。
「ざけんなっ!!」
うん。八つ当たりだった。
助けてくれた人に私は平手打ちした。
流石にヤバいと考えて、しかし殴ったモノは仕方ない。素直に謝る事も出来ず、私はその場を後にした。
「ふざけてんのは貴様だっ!」
背後から怒鳴り声が聞こえた。
――まったくだ。
私は思った。
唇が切れていた。
――ヤツのは当然ノーカン。これもノーカウントだよな。
しかし。
今の男も運が悪いが私も相当運が悪い。
触れた唇が痛くて、確かに触れた証みたいで、やたら腹が立った。
――まあ、あれだ。あの人はもう会うことも無かろうし。
失礼を働いたのは確かだが、謝罪の術も見当たらない。
だから、無かった事にしよう。そう思った。
しかし五分も経たずに再会した。
「あ………。」
「てめえ!」
ナリの部屋でアイスを食べていたら、入って来た。ナリの従兄だと紹介された。
据わった眼差しに、私は潔く頭を下げた。
「先ほどは申し訳なかった。一応理由が有るのだが聞いてくれるでしょうか?」
「まあ云ってみろ。」
「非常に腹立たしい出来事があり、八つ当たりをしました。」
「…………。」
胸を張って謝罪しました。
「まあ、あれだよ。乙女のファーストキスの代償と思って、ビンタのひとつやふたつは許そうや。ね?」
「お前が云うな。」
反論は力なく発せられた。
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