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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

満足度100%のカスタマーサービス

作者: やまおか
掲載日:2026/05/10

 ゴールデンウィークの休日中に電話がかかってきた。

 番号を見ると普段使っているSNSの会社からだった。正直面倒だと思った。どうせなにかのキャンペーンの勧誘だろう。このときはちょうど時間も空いていたので電話をとることにした。

  

「お客様、急なお電話への対応ありがとうございます」 

 

 丁寧な口調で男が告げてきた。カスタマーサービス係を名乗るのを生返事で返しながら要件をはやくすませてくれよと内心で舌打ちをする。

 

「実はお客様の個人情報が流出してしまいそのご報告を」

 

 たまにきく企業の個人情報流出か。自分の個人情報が利用されたとしても迷惑電話が増える程度だろう。このときは軽く考えていた。

 

「調査しましたところ、ハッキングが仕掛けられお客様のアカウントを不正に利用されてしまったようです。こちらの不手際で大変ご迷惑をおかけしてしまいました」

 

 面倒なことになったと思った。これから煩雑な手続きをしないといけないと思うと気が重くなる。淡々と事務的な口調で告げる男にもいら立ちを感じていた。返事の声もぶっきらぼうになっていたと思う。

 

「手続きなどについては問題ありません。既にこちらですべて対応済みです。お客様のアカウントは正常な状態に戻っています」

 

 対応済みといってもまたハッキングされたりしたら同じことをさせられるのだ。苦情をふくめてそのことを質問するが返ってくるのは『問題ない』という返事。

 

「100%ありえません。二度と起こさないようにしました」


本当かと思って質問しようとしたが続けれられた内容に口にしかけた言葉が止まる。


「拠点は制圧済みです。よろしければハッカーの間抜け面をご覧になりますか? ビデオ通話に切り替えていただければすぐに映しますので」

 

 耳を疑った。まさか、ありえない。混乱する頭に男の冷静な声がひやりと押し当てられる。

 

「二度とキーボードがたたけないように両手の指10本を即日お送りしましょうか?」

 

 その声は最初とかわらない事務的なものだった。ただ事実を淡々と告げているだけのものだ。

 スマホを握る指先がこわばり手のひら全体がじっとりと汗ばみだす。周囲から日常の音が遠ざかっていく。のどがごくりとつばを飲み込む音がやけに大きく響いた。

 

 なんとかしぼりだすように拒否をした。声も上ずっていたと思う。

 

「承知いたしました。今後もご愛顧のほどをよろしくお願いいたします」

 

 電話が切れたとたんに周囲の音がもとに戻った。視線を巡らせれば自分の部屋の見慣れた風景が広がっている。

 深呼吸をくりかえし気分を落ち着てけてからスマホを持ち上げる。アカウントを開いてみてもいつも通りの状態になっていた。さっきまでのやりとりが通話履歴としてのこっているだけだった。

 

 後日、例のSNSのカスタマーサービスについて調べると、だれもが好意的な評価を口にしていた。対応の早さや柔軟さを褒め称えていた。

 

『ここは世界一ユーザーに優しいサポートだ。そして悪意のある人間にたいして世界一恐れられるサポートだ』

 

 それから二度とアカウントに問題が起きることはなかった。

 

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