自分だけの一歩
高校生活を送る中で、ふと「自分の居場所がどこにもない」と感じたことはありませんか?
誰かと笑っていたはずなのに、気づけば孤独になっていた。
この物語は、そんな想いを抱えた一人の少年の物語です。
彼は不器用で、要領も悪く、周囲とうまく馴染めずに苦しんでいました。
けれど、偶然(あるいは必然)に訪れた「転生」という出来事をきっかけに、
彼はもう一度、自分の人生を歩き直すことになります。
これは「人生にリトライがあったらいいのに」と思ったことのある、
すべての人に捧げる物語です。
もし、あなたの心にもどこか引っかかるものがあれば、最後まで読んでもらえたら嬉しいです。
高校三年生になった。一年の最初は楽しく友達と過ごせた。みんなとカラオケに行ったり、学校の休憩時間にゲームで盛り上がったり、海に行ったりもして本当に楽しかった。一年の三学期にはその関係も崩れた... 未だに何故かは分からない。
「俺は悪くない!なんで俺はこんな目に遭うんだ!
いつもいつも俺ばっかり!家族とだって上手くいかない...もっと楽しく生きたいのに」
そう思っているうちに二年の一学期に入った。その時には友達は自分の側から静かに消える影のようにいなくなって、気づけば学校での友達は一人になっていた。
そんなある日、あるニュースの事で陽キャの奴らが騒いでいた。
「おいみんな!この近くの廻悠動物園ってとこからホワイトタイガーが脱走したらしい!」
俺はそんなことどうだっていいし遭遇して殺されても別にいい。そんな事言って本当に遭遇したらどうしよう。まあそんな簡単にねー
「やっと学校終わったーこんな苦痛早く終わればいいのになー」
「あれ、家の鍵どこやったっけ。俺ってこういうとこあるんだよなー。だからダメなんだよな」
夕日が窓を赤く染めていた。風が止み、世界が静かになる。後ろに気配を感じる。
「.....?」
振り向く間もなく、巨大な牙が視界を染めた。
肉が裂ける音。世界がグシャリと潰れた...
あー死んだのか...楽に死ねて良かったな。どうせつまんない人生だったんだ。俺が死んでも誰も悲しまないんだろーな。
俺が死んだ後どうなったんだろう...お母さん、お父さん無事かなぁ
『感傷に浸っているとこ悪いがちょっといいか?』
「なんだよイケおじ。今知っての通り感傷に浸ってんだよ。邪魔すんな」
『まぁ、そんなに怒るなよぉ。まず君に伝えたいことがある。』
"君は今から転生する"
そう告げられたがあまりびっくりしなかった。
むしろ違う人生を歩めるのがうれしい。
『ちなみに君のお母さんとお父さんは生きているから安心しなさい』
心が読めるのうざいな。
『神様だから心が読めるのは当然だよぉ』
「へぇーそうなんだね」
俺は無気力そうに言ってやった
『随分機嫌が悪いんだなぁ。しかも神様って聞いたら普通びっくりこくんだけどなぁ。まあそれはさておき、そろそろ君を転生させようか』
「なんか超能力かなんかくれんの?」
『言われなくてもあげますよぉ。多分あなたには役立ちます』
俺は嫌な予感がした。
『じゃあ魔法を使える体にしてあげよう』
「え!?転生なんだからもっと豪華なものかと思ったのになんだよそれ。」
『……。』
『では転生!』
「うわあぁぁぁ!!!」
*
眩しい。けれど目が開いている感覚がない。
耳の奥でぼんやり聞こえる女性の声と男性の声。やけにうるさく聞こえる。
身体が動かない。いや、動かせない?軽い。小さい。重力すら自分のものじゃないような不思議な浮遊感。
突然目が重くなり、世界は柔らかく滲んで音も光も少しずつ遠くなる。
体がふんわりと沈んでいく。まるで雲の中に落ちていくような、不思議な安心感。
……ねむい。
*
……真っ暗。
さっきまで目を眩ますような光が差し込んでいたのに。お腹空いた。なんだか涙が出てきた。そしていつの間にか泣き叫んでいた。赤ちゃんってこんなに気持ちが整理できないんだと初めて知った。
すぐさま母親が駆けつけて、包容力のある腕で優しく包み込んでくれた。
そして小さなスプーンで丁寧に口に運んでくれた。
とても暖かく感じた。おいしかった。
満腹になると、再び眠りについた。
*
-二歳になった-
家族名前を言えるようになった。
母親の名前はセレフィア
姉はリオラ
父親はアスク
この家系は男爵位であり、タリス家の傍系血族だ。
ちなみに俺の名前はナギトというらしい。
そこそこ気に入っている。
*
庭で黄昏ているとふと思い出したことがあった。
神様の言葉だ。魔法を使える身体…。
少し実験をしてみようと思う。
「二歳にもなったしそろそろ魔法も使えるのかなぁ」と思ったのでやってみることにした。
でもどうやって魔法を使うのか分からない。
だから色々試してみることにした。
「まずは、浮遊魔法からやって見るか!」
足に力を入れて飛ぶように念じてみるがなかなか身体は浮かない。
「そんな簡単に行くわけないかぁ。」
なにか呪文がいるのか、それともただ想像力が足らないのか…分からない。
"魔法を使える身体"という言葉が脳裏に浮かんだ。
魔法を使える身体と使えない身体があるのかもしれない。それが関係しているに違いない。もしかしたら魔力を使って魔法を使うのかもしれない。
「魔力ってどうやって操作するんだ…。」
魔法なんて使ったことないから全く分からない。
「それならこの世界の情報を集めるべきだな!」
両親に聞いてみるか…いや二歳の子供がいきなり
「お母さん!魔法の使い方教えて!」
なんて言ったらビックリするよなぁ。
本で調べるしかないかぁ。この世にスマホもパソコンもないから不便だな。
スマホ依存症だった俺には慣れない生活だった。
俺は書庫に行った。二歳が書庫に入るのは流石におかしいと思ったのでメイドや執事に見つからないようにこっそり書庫に入った。
「さすが男爵だ。貴族なだけあるなぁ。」
これだけの本があったら金持ちだと誰でもわかる。
何冊あるか数えたくもないくらいだ。
本を取って早速読もうとしたが、全く字が読めない…。
「文字から勉強するしかないかぁ。この世界でも勉強かよ。」
結局どの世界でも勉強は必要らしい。
勉強なんかしたくないので諦めて自分のやり方を見つけるとする。
*
太陽が高く昇り、森の中は明るく生命力にあふれていた。木々の葉は光を受けて鮮やかな緑に輝き、木漏れ日が地面にまだら模様を描いている。鳥たちは枝から枝へ飛び回り、楽しげにさえずる。
遠くではキツツキの音がリズムを刻み、風が枝葉を揺らして涼やかな音を立てる。虫たちはせわしなく草の間を行き交い、小川は陽光を反射してきらめいていた。
そんな中一人の厨二病が居た。
「ウィンドカッター!ファイヤーボール!とりゃー!」
「……。」
「何も起きないじゃねぇかよ!どこが魔法使える身体なんだよ!」
勢いで木を殴った瞬間…
木に大きな穴が出来ていた。
「え…。」
「これただの怪力じゃね?魔法って何か出てくるもんだと思ってたのに」
拳をまじまじと見ながら独り言を言っていたら後ろの木からミシッと音がした。
誰かいる!
すると出てきたのは長い白銀の髪を真っ直ぐ下ろした少女だった。
おそらく俺と同い年くらいだから仲良くなれそうだなと思ったが俺は人見知りだ。コミュ障だ。
少女の様子を見てみると、人見知りで緊張しているのか木に半分身体を隠したまま不安そうな顔でじっとこちらを見ている。まさか俺がこの木を倒したから怖がっているのか
とにかく俺は人と話すのが得意では無いので逃げたい気持ちでいっぱいだった。
そして逃げようとした瞬間小さな声がした。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。
この物語は、どこにでもいる「ひとりの少年」の物語でした。
現実ではつまずいて、うまく笑えなくて、誰にも理解されないような気がしていた。
でも、そんな彼にも「もう一度やり直すチャンス」が与えられた。それがこの物語の始まりです。
きっと現実には転生なんてできないし、魔法も使えない。
それでも、心が折れそうになったとき「もしかしたら、どこかでやり直せるかもしれない」と思えたなら、
それだけでこの物語を書いた意味があったと思っています。
過去は変えられなくても、未来は変えられる。
たとえ今日がダメでも、明日はきっと違う。
そんな小さな希望を、この物語から少しでも感じてもらえたなら、嬉しいです。
またどこかでお会いできることを願って。