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第9話 邪教のダンジョンコアの神

「ダンジョンコアって奴はな、モンスターを生み出す製造工場みたいなもんでな、大抵はボスが守ってるんだ。そいつを倒してダンジョンコアを破壊するとな、物凄い宝を落とすってんだよ」


 てのが父親ゼフダスの冒険者の知恵としての情報であった。

 かなり前にゼフダスの武勇伝を聞いた時に聞いた話だ。


「ブブリン、そのダンジョンコアは壊すしかないのか?」


「そうですね、相当古いダンジョンコアみたいで機能していないみたいです。ボスしか守っていないみたいですしね」


「それなら逆に利用できないだろうか」


 そう提案してみると。

 ブラックスライムのデルファルドさんがくっくと声を上げていた。


「それは前代未聞だな、そういう事をするのは魔王と相場は決まっているしな、大抵の冒険者は破壊して富を得るんだがな、ルボロス教祖はそういうのは興味がないのか?」


「いやーお金は別口で稼げそうだし、それに、モンスターを製造できるなら友達が沢山出来るだろ?」


「それはごもっともだ」


 モンスターにはつがいを得て夫婦となり子供をなすものもいたり、後はダンジョンコアでの誕生とされている。ただし例外もあるらしい。


「じゃあ、俺1人で行くよ」


「そ、そんなーこのブブリンを使ってください」


「教祖に死なれたら困るから、おいらが行くぞ」


「私も行ってみたい」


 なんとチャカルールまで手を上げていた。


「じゃあ、全員で行くか」


 その場がそんな感じで盛り上がった。

 とはいえチャカルールはハンマーと盾という装備で、俺は10歳相当の剣くらいしか持っていないが。


 こちらには邪眼スキルやら、何やらあるのでなんとかなるだろうと思った。


 後ブブリンもいればデルファルドさんもいるのでなんとかなるだろうしな。


「さぁ、出発だ」


 岩山の隙間からダンジョンの中に侵入していく。

 黒金色の壁やら岩肌むき出しの壁。

 曲がりくねる道。

 岩が剣のように突き出していたり、水が流れていたり。

 ダンジョンは初めて見たけど、こんなに古ぼけているのだろうか。


 俺達はモンスターが出てこない事に安堵していた。

 ひたすら下へ下へと降り続けていた。

 壁には遺跡のような跡が結構見られた。

 絵画なのか、モンスターの大軍と人間の大軍が戦う姿やら。

 ドラゴンやら巨人やら天使やら神やらが描かれていたが、何もかも欠けていたので、何を表しているのかは理解出来なかった。


 談笑を続けていると、優美で荘厳なドアが見つかった。

 その向こうに何か得たいの知れない者がいる事を、俺達は悟った。

 ゆっくりとドアを開けようとしたら。

 ドアそのものが自動で開いた。


 そこには玉座があり、1人の骸骨が襤褸を纏って座っていた。

 深紅で濁った大剣が骸骨の手にしっかりと握られていた。


 そいつはこちらを見ると、歯並びの悪い骨の口を動かした。


「これは久しぶりの客人じゃのう、それもただの人間ではないな、邪神の臭いがするな、それもとてもいい匂いだ。さてと」


 骸骨はゆっくりと立ち上がる。

 俺は即座に鑑定を発動させていた。


【セカンド ファーストの次に偉い神、奈落の底に落とされて、堕神した。人間の女性を愛してしまい、1000年の間、大事だったその女が埋葬されるダンジョンを守り続ける。いつか来る冒険者に殺されるために】


「なぁ、あんた、そんなにその女性が好きなのか」


 玉座の後ろにある棺。

 きっとそこに大事だった女性が眠り続けているのだろう。

 それも骨となりその骨はきっと朽ち果てているのだろう。


「そうじゃのう、そこまで見破るとはさすがと言わざる負えぬな、邪神の申し子よ、まだ10歳そこらじゃろうが、この朽ち果てた神と手合わせを願いたい」


「やいやい、骸骨爺、このルボロス教主様が相手になる訳がないだろう、まずはこのブブリンが」


「いやいい、ブブリン下がっててくれ」


「なんでですかー」


「この人はきっともう死ぬ寸前だ」


「そうだな、それは言えている。その首に掛けてあるメダルは神の称号だろう、セカンドと言ったところ、セカンドはこの世界には存在していないとされる神だ」


 ブラックスライムのデルファルドさんがすらりと述べた。


「俺が相手する」


「かたじけない」


 セカンドは骨の関節音を響かせながら、ゆっくりと玉座から立ち上がる。

 深紅の大剣を構える。

 それだけで、膝の骨が悲鳴を上げているようだ。

 一歩こちらに向かって突き進む。

 骨が砕けて、欠片が落ちていく。


 それでも前に突き進もうと、セカンドは歩き続ける。


「一太刀喰らってみろ」


 セカンドは命の限りをぶつけてこようとしている。

 一瞬であった。

 ひゅんと風切り音が響くと、俺の体に風圧がかかった。

 邪眼のスキルでその軌道をずらす事が出来た。

 一応剣を構えようとしたが間に合わなかった。

 邪眼スキルが無かったら瞬殺されていた。

 後ろの壁が真っ二つに両断されていた。

 そしてセカンドの体は粉々に髑髏を残して爆発した。


 ゆっくりと一歩一歩とセカンドの元にやってきた。

 地面に置いてある髑髏を持ち上げると。

 

「あんたは何を思って何千年ここを守ってきたんだろうな、こんな所で終わるのはきっともったいない、名付けようセカンド、君はライジュウそれが名前だ。その斬撃雷の如くだったよ」


 骸骨の体が音を響かせた。

 砕けたはずの骨は魔法が欠けられたように、1つの人間の個体となる。

 辺りに落下していた鎧の破片が骸骨を覆っていく。

 そこに骸骨の剣士が立っていた。

 鎧に包まれながらも、悠然と構えている姿は最強の剣士そのもの。

 ただ顔は骸骨そのまんまだけど。

 

 眼がない黒い眼窩からは、鋭い光が溢れかえっている。

 白い光はまるで神の頃の目を表しているようだった。


 うっすらとセカンド、いやライジュウの体には雷がまとわりついている。

 名付けの力で雷の力を得ている。


「ありがとう、また第二の人生をくれて、わしは神じゃが、これから邪教の申し子の信者となる事を誓おう」


「こちらこそよろしくセカンド、いやライジュウ」


 ライジュウは棺の元へと新しい足で歩いていった。

 錆びた棺を開けると、俺もそれを見ていた。

 そこには白い粉しかなくて、愛した女性の躯が骨となり粉となったようだ。

 ただ違うとしたら1つだけ大きな玉が置いてあった。

 まるで宝石のように輝いていた玉は、ダンジョンコアだという事を悟った。


「受け取れ」


 それを受け取った瞬間、頭の中にあらゆる情報が流れる。


【申告 ダンジョンコアの所有権を得ました】

【申告 モンスター製造方法のルールを申告します】

【① 素材をダンジョンコアに食わせると、それに適応したモンスターを製造できます】

【② 素材は自然物、生き物、無機物、この世にあるありとあらゆるものです】

【③ 一日に1体製造する事が可能となっています。ガチャ要素があるのでどんな性格でどんなモンスターが出てくるかは素材により確率変動します】

【④ ダンジョンコアの所有権は持ち主が死なない限り映る事はありません】

【⑤ ダンジョンコアは持ち運び可能となり、邪教の村に設置した場合、モンスター1体製造の他に建造物1軒を1日1回使用する事が出来ます】

【⑥ 最後にダンジョンコアがある周囲では生物が強くなる傾向があります】


【以上になります。ダンジョンコアライフをお送りください】


 謎の声の説明が終わると。

 

「さてと、ライジュウ、地上に戻ろう、このダンジョンは再利用できないと思うから、ダンジョンコアを邪教の村に置こうと思うんだ、盗まれても大丈夫なんだろう? 俺が所有者だから、俺の所に戻って来る?」


「その通りじゃて、久しぶりの地上は楽しみだな、それにしてもドワーフ娘よ、わしを見て怖がらないとはさぞや肝っ玉が座っとるのう、それに勇者のスライムか、珍しい話もあるものじゃて」


「骸骨のお爺ちゃん、その大事な人の骨を集めてもいいかな」


「ほう、どうするんだいお嬢ちゃん」


「ペンダントにしてライジュウさんに送ろうと思って」


「ほほう、それはありがたい、ぜひやってくれ」


 デルファルドさんが黒いスライムの体をうねらせながら話し出した。


「第二の神が信者となるか、さぞやスゴイ村になりそうだな、ルボロス教主よ」


「そうかもな」


 その後俺達は邪教の村に戻る事となった訳だ。

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