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第5話 隠れて布教活動②

 10歳になってから色々な事が起きた。

 ボスボスが近くの村を滅ぼして、チャカルールの両親を殺害した。

 そのせいでチャカルールと一緒に暮らす事になった訳だが。

 ゼフダスはチャカルールを励ます為に鍛冶場建設を計画していたようだ。


「いいか、ルボロス、チャカルールを元気づける為にな、鍛冶王国のウィングハザードから腕利きの鍛冶屋を呼び込んだ。そいつが家に鍛冶場を建設してくれるって訳だ」

「父さん、それはとても楽しそうですね、チャカルールも元気になってくれると良いのですが」


「そうだろう? 今日着くはずなんだがなー」


 山の向こうに鍛冶王国ウィングハザードがある。

 そこにはドワーフ族が大勢住んでおり、鍛冶仕事や鍛冶の勉強に勤しんでいるようだ。

 まだ1度も見た事がないので、いつか冒険した時に寄ってみたいと思っていた所だ。


「ひゃあああああああああああああ」


 その時だった。

 山の向こうから何か大きな老人の叫び声が響いてきた。

 トロッコのようなものに乗っており、巨大な猪、とはいえトロッコと同じ大きさの猪なので少し大きい程度なのかもしれない。


 それがこちらに向かって突撃してくるではないか。


「お、来たな、あれはなドワーフ族の馬車みたいなもんでな」


「誰かとめてくれぇええええええ」


「そんな事ならお安い御用です」


 俺は猪に向かってエンチャント魔法のデバフを発動させていた。

 このエンチャント魔法は【スロー】と呼ばれる物であり、動く物体のスピードをかなり遅くさせる事が出来る。


 母さんと一緒に学んだエンチャント魔法の1つでもある。

 これとは逆にヘイスト魔法だと、動きが素早くなり強くなるという傾向がある訳だ。


「うぉぉぉおおおぉぉぉぉおおおおお」


 ドワーフの老人もスローにかかってしまい。

 物凄く遅くこちらに向かってくる。

 猪は既に止まっているが、物体の動く法則で、トロッコが前に突っ込もうとしている。

 父さんのゼフダスが人差し指だけで、それを抑え込んでしまう。


 それはゼフダスが怪力だという訳ではなくて、単純にスロー効果のおかげという訳だが、それはあえて言わないでおこう。


 だがドワーフ老人は前のめりになり、スロー状態で空中に飛ばされた。

 草むらに顔面から突っ込み、丸太が崖から落ちていくように落下していく。


 家の手前で、力尽きたウサギのように動かなくなってしまった。


 30秒間その場が静まり変えると、突然ドワーフ老人が悠然と立ち上がる。

 まるで今まさに魔王を倒したとばかりに歴戦の猛者ぶりだったが、俺達を見た彼の鼻には大量の鼻血がついていたわけで。


 俺はエンチャンター魔法で肉体再生を強化させる魔法を発動させていた。

 ドワーフ老人の体から少しずつ毒気が抜けていくように、顔色がみるみる内によくなっていく。

 彼はずんぐとこちらを見ている。


「久しぶりだな、ゼフダスよ、この老いぼれをこんな辺境の家に呼び込んでからに」

「こりゃーすまないな、リガストよ、この家になドワーフ娘のチャカルールがいてな、お前の知っている奴だ」


「そうか、あの2人は死んだか」

「ああ、死体は見てないがな」


「まぁ、ボスボスが死体を残す程の愚かはしないだろう、さてと、チャカルールの為に鍛冶場でも作るとしよう、ちょっと家の構造を調べさせてもらおうか、それとそこのガキ、ありがとうな、まさかエンチャント魔法で回復してくれるとはな、わしはリガストって名前なんさ」


 リガストは顎鬚をお腹ら変まで伸ばしており、髪の毛は白髪のもじゃもじゃ頭であった。

 顔はしわくちゃで、年期の入ったハンマーと盾を背中に装備させている。

 先程のトロッコには鍛冶場道具が色々と備え付けられていた。

 猪は青空をじーっと見上げながらただ空虚な所に視線を向けている。


「ゼフダス。クインチャットにキノコでも食わせてやってくれよ」

「ああ、クインチャットは相変わらずキノコが好きなのか」


 どうやら先ほどの猪の名前がクインチャットでキノコが大好きらしい。


 リガストは突然腰のポーチから葉巻を取り出すと、マッチで火をつけてあぶり始めた。

 口から煙を吐き出しながら、彼は家の周りを観察し始める。


「じゃあ、俺はちょっと山側の森に行ってくるよ」

「あまり遅くなるなよ」


 ゼフダスがくしゃりと歪んだ笑顔でこちらを見送ってくれた。

 風に任せるかの如く、向かった先は自然豊かな緑溢れる森の中だった。

 ある場所まで到着すると、開けた場所が見えてくる。

 そこは秘密基地のような場所になっているのだが。


 ブブリンが仁王立ちしてそこで待っていた。


「遅いです。ルボロス教主様」

「ごめんごめん、今日は信者を集めるんだよな」

「そうですぞ、信者なくして邪教を広める方法等ありませぬ」

「問題はこのぼろ小屋が神殿って事になってる訳だけど、誰かが素晴らしい神殿作ってくれねーかな」

「甘えを言っていてはいけませんぞ、ルボロス教主様、まずは信者を増やすのみ、先程、スライムの群れを見つけました。行きましょう」


「ああ、良いけどさ、スライムって言葉通じるのか?」

「何を言いますか、あなた様はゴブリン語を理解しているじゃないですか」

「いや、ゴブリン語とスライム語は違うと思うし、問題は奴等に知能があるかという」


「言い訳はどうでもいいです。ささ行きましょう」


 俺とゴブリン族のブブリンは森の中をひたすら歩いた訳だ。

 途中で、湖が見えてきた。

 と思ったら、沢山のスライムが融合していただけで、10メートルを超える巨大なスライム。

 水道から出る水の色をしており、無数の核みたいなボールが液体の中に沈んでいる。


 至る所から口のような物が生まれて、虫やら何やらをぱくりと飲み込んでいた。


 俺とブブリンはそいつの近くにやって来た訳で。


「すまないが、言葉は通じるだろうか?」


「ああ、通じるよースライム語が分かる人間と出会ったのはスライム生で初めてだったねー」


 どうやら翻訳は通用してくれたようだ。

 

「所で、君は本当に子供なのかな? 見たところおっさんにしか見えないんだけど」


 これは驚いた。どうやらスライムには目がないようで、俺の元の姿を魂の目とやらで見ているのかもしれない。


「それはいい事かもしれないねーさてと、おいらに何か御用かな? これから近くの村を完璧に滅ぼしに行くんだよ」


 こいつはさらっととんでもない事を呟いた。


「おいらの友達を遊びで殺した奴がいてねー大人だったけど、滅ぼそうと思ってるんだよ?」


「お、俺はルボロス・フィールド、君は?」


「デルファルドそれが集合体の名前さ」


 デルファルドはゆっくりと立ち上がるように、二足歩行で浮かび上がった。

 鬱蒼と茂る木々より遥かに巨体。

 完全に災害級のモンスターだと察せられる。

 即座に鑑定を発動させていた。


【デルファルド スライム1000体の融合体、100年の月日を生きてきた。今日で次なるスライムになる為の儀式を行う。それが村を滅ぼす事。理由はどうであり、それが意味ある事、ブラックスライムになる為に、デルファルドは人を殺し尽くさねばならない】


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