第15話 魔道具
現在、自宅にて夜を過ごしていた。
先程、家族と一緒に夕食を食べて腹を満腹にさせた。
リガストの暴飲暴食ぶりは肝を潰すくらい激しかった。
【申告 邪教の信者達の幸福度が上がったため、邪教エネルギーが満杯になりました】
「そうか、どうやら皆生活を楽しんでいるようだね」
【申告 近隣の森のスタンピートですが、ダンジョンが溢れかえりとスタンピートの同時発動です。危険レベルは10のうち8です。ドラゴンが数等見られます。これは冒険者Sランク相当です】
「そうか」
まだ自分は10歳なのだ、実際年齢は40歳くらいだけど、肉体のレベルではガキだ。
自分が出来る事、家族や新しく出来た絆を守りたい。
ただそれだけなのだから。
過去を思い出してもきりはない、光が見えるせいで苦しんだ。
でもこの世界では光を見る事で幸せを掴もうとしている。
真逆の人生だけど、それでも生きている心地がする。
コンコンと扉がノックされた。
扉がゆっくりと開かれると、そこにはパジャマ姿のチャカルールがいた。
彼女の手には袋が握られていた。
「出来たよルーロス」
「お、本当か」
「これね、アイテムボックスなの、改良させたの、モンスターも収容できるのよ」
「凄いな」
「アイテムボックスって名前は相応しくないから、ワールドボックスって言ってね」
「そうする」
「このアイテムボックスの中はいわゆる世界そのも、大事に使ってくれると嬉しい、いつも面白い事を教えてくれたり、新しい友達を紹介してくれたりしたから、そのお礼」
「良いって事よ、そうだ、俺からもお礼がしたい」
「うん、そうだなーそれなら、今度一緒に隣の国に行ってみない? ちょっと見て見たい物があるんだ。魔道具の素材に必要で」
「いいね、そこはどこだい」
「バルファルド王国なんだけどさ」
「そ、そうか、いつ頃だ?」
「1週間後なんだけど、いけるかな」
「それは無理だ」
「なんで」
「実はまだ説明してなかったんだけどさ、いや、ごめん、今は無理だ」
「なんで、凄い魔道具作りたいんだよ、その為にはルーロスと一緒に行きたいの、1人で行けって言うの?」
「いや、1人でも行くな、バルファルド王国はまだ行くな、危ない」
「2週間後ならいけるぞ」
「やだ、1週間後に行く」
「なんでだよ」
「1週間後じゃなくちゃダメな理由があるの」
「なんだよそれ」
「絶対1週間後に行くの」
「わがまま言うなよ」
「もう知らない」
ドアをバタンと占めて、チャカルールはいなくなった。
訳が分からない。戦争を止める為に、スタンピートを止める為に動くと言ったらチャカルールだって一緒に戦いかねない、さすがにそんな支離滅裂な乱戦の中でチャカルールだけを守るなんて無理に近い。だから彼女にはこの家で待機してもらいたい」
チャカルールに真実を言う事も出来ない、だから、俺がチャカルールをバルファルド王国に連れて行かなければ問題ないはずだ。
後は戦争もスタンピートも止めてしまえばいい。
「ふぅ、寝るか」
その日俺は深い眠りに入った。
残り6日となった。
★
チャカルールと喧嘩してから、彼女はずっと鍛冶場で何かをしていた。
一緒に邪教の村に行こうかと誘っても、きっと断られると思ったし、何より今彼女に邪教の村に来られては困る。
これから戦争の準備を始めないといけないのだから。
「おい、チャカルールと何かあったのか?」
ゼフダスが尋ねてきた。
「何もありませんよ」
「おいおい、俺の男の目を舐めないで欲しいね」
「何もありませんよ」
「同じ言語を発する辺り、何かあったのだろう、女の子はとても繊細な生き物だ、少し傷つけたからって心が崩壊しちまう、母さんを見ろ、怒らせたら爆発して俺は何度死にかけたか」
「何か言いましたか?」
「いえ、失礼失礼しました、とにかく、早く謝って、好きな事して、笑わせてやればいいのさ、ルボロス」
「それが出来れば苦労しませんよ」
「なんだ? その生意気な」
「父さんは分かりませんよ、この緊急事態に」
「いつだって父さんは緊急事態さ、お前なんか1人で抱え込んでるだろ」
「抱え込んでませんよ、父さんは良いですよね脳天気に冒険者やってればいいんですから」
「おい、お前、ちょっと表出ろ」
「ゼフダス落ち着きなさい」
セネレスがたしなめようとするが。
「こいつの性根が腐ってるからちと分からせてやる、いいか人は1人では生きていけないんだよ」
「そんなの分かってますよ、父さんこそ、生意気なんですよ」
「んだとおおお」
俺とゼフダスは表に出ると剣を構えていた。
ゼフダスは長剣を構えている。一方で俺も大人用の剣を構えていた。
毎日筋トレをしてきた。
いつの間にか体は大人用の剣でも持ってるようになっていた。
剣は玄関に飾られているのでそれを引っ張り出した。
「この、馬鹿者があああああ」
ゼフダスが問答無用とばかりに、剣に魔法を込めて足に魔法を込めて地面を蹴り上げた。
土埃が巻き起こり、瞬時にして肉薄し、俺は問答無用で邪眼スキルでゼフダスの体を叩き上げた。
ゼフダスは空中に吹き飛ばされるも、空中で静止した。
どうやら真上から魔法で叩きつけて、上昇を止めた。
そのまま高速で落下してくる。
剣を構えざま、打ち払う。
次は神目スキルで10秒先の未来を見続ける。
全てのゼフダスの攻撃を避け続ける。
ゼフダスの顔からみるみるうちに楽しいという感情が伝わってくる。
邪眼スキルと神目スキルが同時に発動する事によって、10秒先が20秒先になり30秒先になっていく。
全てがスローになっていく。
体も動く、筋トレ効果は凄かった。
「あ、ありえないわ」
セネレスが声を上げて驚いている。
邪眼スキルで何度もゼフダスの体を操作しては吹き飛ばすが、さすがは冒険者で最強とされる男だけあって、自らに魔法を叩きつけて前に飛んでくる。
その度にゼフダスの体はぼろぼろになっていくのに、彼の瞳からは敗北を意識する感情が伝わってこない。
むしろ楽しくて仕方ない感じなのだ。
「おらおらおらおら、こんなものかああああ、ルボロス」
「もう、いい加減にしてくださいよ」
全ての攻撃を避け続ける。
だが足腰が少しずつ動けなくなっていく。
「いいか、いくら先読みが出来たとしてもな、いくら念力みたいな魔法を使えたとしてもな、お前はまだガキなんだよ、そのガキの体でどこまでできるかって言うとな、そんなに長くは戦えないってことだ」
がくんと膝をついた。
次の瞬間、いくら30秒先を見ていたとしても体が動けず、顔面を叩きつけられる。
体が横に吹き飛ぶと、ごろごろと転がる。
次に頭を足で押さえつけられる。
「やめてくださいいいいいい」
悲鳴が上がった。チャカルールだった。
彼女はゼフダスの足を蹴り飛ばしていた。
ゼフダスは頭をぽりぽりと掻きながら。
「まぁ、がんばれよ、ルボロス」
そう言っていなくなった。
俺はとても惨めだった。
体がガキだからか、大人になってスタミナがつけば、ゼフダスにだって勝てるのだろうか。
だけど全ての力を使った訳でもなくて、そんな言い訳が戦場で通用するとは思えない。
悔しかった。
涙が流れてくる訳でもなく、とても悔しかった。
「良い子良い子」
そう頭をチャカルールが撫でてくれていた。
「痛いのとんでけー」
チャカルールがそう言いながら頭にキスをしてくれていた。
はっとなって、俺は顔をゆでだこ状態にさせていた。
チャカルールも照れ臭そうに笑っていた。
「なぁ、チャカルール、頼むから1週間後は」
「私1週間後、バルファルド王国に1人で行くから、止めても無駄だからね」
「ああ、そうか、なら」
「一緒に来てくれる?」
「無理だ」
「あっそ、それならいいや」
君がそこに1週間後いくなら、俺が命を掛けて1週間そこを守ってやる、帝国からもモンスターからも、全てから、チャカルールとその他大勢ついでに守ってやる。
今日、ゼフダスと戦って自分に足りない物を理解した。
いくら神目で30秒先が見えたとしても。
【申告 神目の真の力をを申告します】
「は?」
【申告 神目とは真実の姿を映す事が出来ます。あなたの魂の年齢は40歳、よって今の状態から40歳に自分を投影させる事が出来ます。さすれば40年分の筋トレが適応されます。スタミナは驚異的につく事でしょう】
「そういうのは早く教えろや」
【時間は1日、それを超えると元の年齢に戻ります。神目がなぜ先読させる事が出来るかとは未来を見通すことは未来になるという事です。真実の姿を写すというのも、未来の自分を映すという事です】
「難しい事はわからんが、これでなんとかなる」
「何独り言、言ってるのよ、もう行くわよ」
チャカルールが長い髪の毛をふわりとさせながら、甘い香りを振りまいていなくなった。
俺はぼろぼろの姿でただただ横になっていたけど、むくりと立ち上がって、始動した。




