第12話 魔獣ゴルフォード
朝がやって来た。
ベッドからむくりと立ち上がると、今日も邪教の村でダンジョンコアを利用してモンスターガチャを発動させて、次に建造物を1軒設立しよう。
今畑が一軒家分の大きさで1個あるので、また畑でも設立しようか、その為に土が必用だけど。
色々とやる事があって楽しみだなーとか思いつつ。
扉を開けるとチャカルールがもじもじしながら立っていた。
「早くいこう」
「だね」
どうやらチャカルールも楽しみだったようだ。
朝ご飯を猛スピードで俺とチャカルールが食べるものだから、母親のセネレスは何事かと見守っていた。
父親は魔獣討伐の為に漆黒の旅団を率いて森の中を散策しているようだ。
問題は邪教の村が見つからない事を祈ろう。
見つかる事も考えて何か考えておく必要があるかもしれない。
今は、ブブリンとデルファルドさんとライジュウさんに相談しようと決意した。
「では、母さん、チャカルールと散歩に行ってきます」
「がんばってねー、なんでそんなに袋を持っていくの?」
「これは種で、森の中に畑でも作ってみようかと思いまして」
「ほほう、ルボロスにしてはとても良い事をするのね、筋肉バカのゼフダスも見習ってほしいものね」
「父さんは筋肉魔法馬鹿ですけどね」
「はは、それは言えてるわ、だから魔剣士なんだろうけどね、じゃあ、夕食までには帰ってくるのよ」
「いってきまーす」
「いてきます」
森の中を歩きながら、チャカルールとああでもないこうでもないと雑談を交わしていた。
内容はどうやって邪教の村を大きくしていくかだったけど、なかなかいい話合いが出来たと思った。
その時だ。先程まで太陽の光を一心に受けていた森が。
少しずつ少しずつ暗闇に包まれていく。
みしりと音を響かせて、何かがこちらに近づいてくる。
それは灰色の毛の塊。
至る所を怪我しており、血が流れている。
血は黒く変色しており、顔は狼のような姿。
だが1本の角が伸びている。
牙はずらりと鋭く並んでいる。
そいつは地面を踏みしめながらこちらにやってくる。
即座に鑑定を発動させる。
【魔獣ゴルフォード 魔王ラスガスの下部であったが、魔王ラスガスが死去した為、放浪の身となる。邪教の下部であるラスガスは邪教様の生まれ変わりを見つけろと指示を下して死んだ」
「見つけました。邪教様」
「は?」
俺は即座にこいつが何を言いたくて何をこちらに求めているのかを察した。
「俺は確かに邪教だけど。邪神そのものではないよ」
「それでも邪教の力を、力を要している。どうか、その力で、この我を導いて欲しい。ラスガス様はボスボスに殺された。ボスボスを滅ぼしたいが、ラスガス様はそれを望まない、かはかは」
「おい、治療しないと」
「もうこの身も朽ち果てる寸前ですが死に切れませぬ」
「なら、もう少しがんばれ、邪教の村に行くぞ」
「なんとか、最後の力を」
だが眼の前で重たい体を地面に横たえて生き絶え絶えに魔獣ゴルフォードは動けなくなった。
俺は直感的に、このゴルフォードを死なせてはいけないと悟った。
10歳くらいの年齢の体でシェパードの5倍くらいの大きさの狼を持ち上げて、運ぶのは不可能だ。
だが邪眼スキルで浮かばせる方法はあるだろうけど。
邪眼スキルは現在レベル20で石ころとか軽いものしか使えない。
「だけど、やるしかねーよな」
俺は邪眼スキルを発動させていた。
眼から血が流れる。口から血が流れる。鼻から血が噴出する。
耳から血が流れる。
血管が浮き出る。
「ぐぬぬぬ」
「死んじゃうよルーロス」
それでも、ここで負ける訳にはいかない。
手足に力をこめて、少しずつ動かす。
【申告 邪眼レベルが30になりました】
【申告 邪眼レベルが50になりました】
【申告 邪眼レベルが80になりました】
【申告 邪眼レベルが100になりカンストを迎えました】
【申告 邪眼レベルが派生して【神目】レベルナシを習得しました】
【申告 神目とは10秒先の未来を見る事が出来ます】
世界が暗転した。
左目だけに違和感が生じる。
あれだ。左目だけ中二病的になってしまったようだ。
左目が見る景色は10秒先の未来。
それだけなら良いんだけど、問題は随時未来を見ているので、右目とのギャップが凄い。
左目を閉じると、右目の邪眼だけになる。
「神目スキルoffには出来ないのか」
【申告 現在では不可能です】
「ああそうかい」
軽々と魔獣ゴルフォードを浮遊させている。
体中の穴という穴からの出血は止まった。
滑らかに邪眼スキルを発動させ続ける事が出来る。
この感覚は最高かもしれない。
さらに浮遊させると、雲の所まで浮遊させる事が出来る。
さらに自分とチャカルールを浮遊させる事が出来る。
そのまま高速で邪教の村へと飛翔する事に成功した。
これじゃあ、現実世界にいた時に見たアニメのスーパーヒーローやら超能力者だよなとか、思ったりした。
「何事なのですか」
邪教の村の入り口にはブブリンが仁王立ちしていたが、その頭上を飛び越えた。
広場に巨躯の魔獣ゴルフォードを定着させた。
骸骨剣士のライジュウさんが近づいてきた。
「これは魔獣ゴルフォードではないですが、魔王ラスガスは死んだと聞いていましたが」
「こいつは俺の下部になってくれる。こんな所で死なせる訳にはいかない」
「ふむ、どれも致命傷ですな、治療するには名前を付ける事です。ただし、この前あなたがわしに名付けした事により、邪教エネルギーが枯渇状態ですなぁ、下部となる事でそこを理解する事が出来ます」
「困ったな、名付け方法もダメだとしたら」
「おいらの魔力を注ごう」
ブラックスライムのデルファルドさんが地面を転がりながらやってきた。
「これでも元勇者で莫大な魔力を秘めている。魔力は回復の素となる。少し疲れてしばらく動けなくなるが、その間はライジュウさんが守ってくれるだろう、この村を」
「ありがとうございます」
俺は会釈した。
「お礼などいりません、信者として当たり前の事です」
ブラックスライムのデルファルドさんは体中から触手を伸ばすと、魔獣ゴルフォードの体を包み込んだ。
液体に包み込まれた魔獣ゴルフォードは安らかに眠り続けている。
傷口がみるみる内に治療されていく、黒く濁った血が無くなっていく。
するとブラックスライムのデルファルドさんが力なく動かなくなった。
どうやら眠っているようで、骸骨剣士のライジュウさんがゆったりと鎧に包まれた手で持ち上げてくれた。
ブラックスライムのデルファルドさんはライジュウさんの鎧の胸の中で眠り続けている。
魔獣ゴルフォードは、ほんわりとこちらを見てきた。
その眼差しは何か眩しい光でも見つけてしまったような瞳だった。
べろりとその分厚い舌で俺のほっぺたを舐めた。
「このゴルフォード、あなた様の信者となりましょう」
魔獣ゴルフォードは膝をついて、忠誠の意思を表明した。




