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最悪の食卓と食事


 俺はお風呂場に上がったのちに、着替えたリゼと合流する。そして、リゼに尋ねる。


「そういえば、夕食は?」

「準備は出来ております」


 リゼがそう言うと、俺は食堂へと向かった。

 食堂の中へ入ると、既に料理がテーブルの上に並べられており、食欲をそそる香りが辺りに立ち込めていた。

 俺は椅子に座ると、義兄や義父、義母が集まってくる。

 そして、その姿を見ると、親族ながらに深い不快感を覚えたことは間違いない。

 まず、義父。丸々と肥え太っており、醜悪なオークの親玉みたいな顔をしている。何もしていないのに、汗をかいており、不快な吐息を繰り返している。

 次に義母。見てられないくらいに厚く化粧を塗りたくっており、しかも食事の席だというのに香水の匂いをまき散らしている。さらに、ただ大きいだけでセンスの欠片も無い宝石が付いたネックレスや指輪をジャラジャラと身に着けている。

 そして義兄。義父や義母に比べたらまだマシではあるが、性格の悪さを隠そうともしない表情をしている。

 そして義兄は俺を見ると、舌打ちをした。

 俺はそれに気が付かないふりをしていると、料理が運ばれてくる。


 まず野菜のスープから。

 そのスープは野菜がとても彩り豊かであり、また大きく食べ応えのありそうな野菜ばかり。そして匂いも、スパイシーで食欲を掻き立てる。

 そのスープだけでも、俺はとても美味しく感じられたが、俺は驚くべき光景を見てしまった。

 義父が、そのスープを見て、地面にひっくり返したのだ。


「ふん、私は野菜など食わん。とっとと肉を持ってくるんだな」


 その様子を義母は見て見ぬふりをしている。

 義兄は、顔をスープに近づけ、その匂いを嗅いだ。


「おい、これは何のスープだ?豚の餌か?」

 すると、義母が答える。

「これはエドワードのスープですわ」

 義兄はそれを聞くと、盛大に笑う。

「ははは!おい、聞いたか?エドワードの餌だとよ!」


 俺はその醜悪なやり取りを見て、怒りや悔しさどころか、何処か冷静になっている自分がいた。

 それは、俺が先にゲームの内容を知っており、エドワードについて、

ある程度知っていたことも要因かもしれない。


(こんな家族の元で育ったら、そりゃ性格歪むよな)


 俺はそう思いつつ、スプーンを手に取りスープを啜る。


「うん、美味しい」


 しかし、そのスープはとても美味しく感じられた。これが餌ならば、日本のコンビニで売られている弁当は全て餌だ。

 俺はスープを味わいながら堪能する。

 だが、三人は既にメインディッシュの肉料理に手を付けており、俺の食事の遅さに苛立っている。


「おい!早く食え!」


 義兄がそう急かすが、気にせず俺はスープを飲み干した。そして、パンを手に取り、最後の後味まで楽しむ。

 こんな不快な三人以外で食事が出来たら、もっと美味しく感じたかもしれないが、しかし、それでも俺は満足だった。


 次に、肉料理が運ばれてくる。

 それは、スパイスやらソースやらで味付けされた肉料理だった。

 俺はナイフとフォークを手に取り、その肉を切り分ける。

 しかし、俺は驚いてしまう。


(なんだこれは?)


 肉は確かに良いものが使われており、噛むと柔らかく千切れ、肉汁が溢れ出してくる。

 しかし、だ。

 問題はスパイスとソースが、その味わいを殺してしまっている。スパイスの強烈な刺激が、舌を痺れさせ、そしてソースの濃厚な甘みと酸味が、その肉本来の味を殺している。そのどろっとしたソースは、口の中で不愉快なくらいに絡みつき、そして肉の匂いと混ざり合う。

 これなら、日本のジャンクフードのほうがまだ健康的なのではないかと思える品物。

 俺は驚いて周囲を見やるが、なぜか美味そうに食事をしている。

 義父はソースと肉の油で唇をてらつかせながら、がつがつと食っているし、義母はソースで化粧が崩れるのも構わずに、肉にしゃぶりついている。

 義兄に至っては、その肉の匂いを嗅いでから、スープを掬って口につけながら、その肉を食べ進めている。

 俺はその様子を見て思った。


(なるほど……これは酷いな……これだけでも、民が反乱したくなる気持ちが解るというもの)


 俺は早々に食事の席を立つ。

「では、俺はこれで」

 俺が立ち上がると、義父は何やら侮蔑の目でこちらを見る。

「なんだァ?この肉料理の旨さがわからんとは、エドワード君もまだまだ子供だな。はは!」


 義父がそう言うと、義母と義兄も笑う。


「全くですわ」


 俺はそんな三人を無視すると、心の中で呟く。


(ふん、味も分からぬ豚どもめ。私はお前らみたいにならない)


 改めて、俺は決意した。

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