六話 王都についたよ
「うわっ、大きい」
そんな定番な発言をしてしまった。いや、実際大きい。何がって、中央に見える城もそうだし、城壁も大きいし、街も広いし…。それはもう田舎と比べて、半世紀くらい時代が違いそうな感じ。異世界スゲー。
行商B「ひさびさに見たが、やはり大きいな。流石は大国の都と言ったところか…。」
「大国…。ほうほう、あれより大きい街は、ほぼ無いと見て良さそう。」
行商A「いやいや、氷華ちゃん。あれより大きい街となると、東にあるイースタン帝国の帝都イスターンだけで、他は西にあるキリス神聖法王国の首都キリシュ、あとは神教の総本山の都市メイルタ、くらいが比較されるだけだぞ。」
「なるほど。勉強になります。」
どうやら、口に出てたらしくて、行商Aさんが教えてくれた。ちなみに行商Aさんの名前はラルドっていうらしい。姓は無いらしいが、そもそも無いことのほうが多いらしい。今後はラルドさんって呼ぶことにする。
レーン「ラルド。南の国のことも忘れてるぞ。」
ラルド「いやいや、あそこの情報はほとんど入ってこんし、信憑性が無いんだよ。ただ、東西に長い長城を築いてて、侵入を拒んでるらしいがな。」
「長城…。それを築けるだけの国力があるとしたら、ここの王都より大きい街とか普通にありそうだと思いますけれど。」
ラルド「まぁな。そこは仮説の域を出ないから、考えても仕方ないが、聞く話じゃ、ずっと内戦してるらしくてな。」
南…内戦…。それってあれか?三○志とかそういう?島国もあるとか聞いたら確定っぽそう。ってあれ?神子さーん。もしかして、あっちの世界と同じ惑星ですか?ここ。
(ん~?いや、10倍サイズで同じ形だね!)
へ?10倍?ていうか、何さらりと心読んでんですか!怖っ。ていうか、この状態でも話できるんじゃねーか!とりあえず転生後に何故服を着せておいてくれなかったのか聞かせてもらおう。
(それじゃあ、私は仕事があるので)
おい、こら!待て!…。
それでいいのか神様。
ラルド「さてと、城門前は…混んでるな。並ぶのも面倒だし、あの手を使うか。」
え?何するんですか?
その間にも馬車を走らせるわけだけど、城門前はほんとに混んでる。流石王都と言うべきか?どうも受付が2つあるらしく、並んでるのは商人用っぽい?。これ、何日かかるの?
レーン「あぁ、面倒だな。俺は顔が利くから、少し呼んでくるとする。」
ラルド「頼むぜ!」
なんか慣れてらっしゃる。
「というか、あの手って…」
ラルド「言ってなかったと思うが、俺らは王都に本部を持つローグ商会って言って、その商会所属の輸送班でな!レーンは専属で雇ってるんだが、あいつはちょっとした有名人だから顔が利くし、うちは有名な商会だから、証明書さえあれば、検問はパスだ!がはははは!」
は?聞いてないんですけど。いや、まぁ聞いてないから、そりゃそうなんだけど。王都に商会本部を置く商会の下っぱってところか。あれ?たしかこの隊、馬車が1、2…。5両。あれ?もしかして…。実は帝国とかにも本部があって~とか、しませんよね?
ラルド「ちなみになんだが、帝国と神聖法王国にも支部があってだな。」
「そこまで言えば察せまね!あれでしょ?一二を争うくらい有名な商会とかそういうやつでしょ!」
ラルド「ははは。なんなら一番有名な商会だと思うぜ?」
行商B「ラルドさん、嘘はよくないですよ。いや、一二を争うってのは事実なんですが、というか、ラルドさん、上の立場の人でしたよね?」
ラルド「そういうのは言わなくていいんだよバカ」
行商Bさんが訂正して教えてくれたが、行商人と思ってたら、とんでもない商会の人だったとか、心臓に悪い。無知って罪だね。どうも、ラルドさんも上の立場の人らしいし。っとそんな話をしていたら、レーンさんが受付の人を連れて帰ってきた。
「ローグ商会の隊と聞きましたが、証明書を見せていただけますでしょうか?」
「おう。これでいいか?」
「は。たしかにローグ商会のものと確認できました。では、こちらへ着いてきてください。」
本当に検問をパスしそう。普通はもっと時間かかるだろうし、巡り合わせに感謝だね。受付の人が前を歩いて誘導しているので、ラルドさん達はそれに続く。並んでる人達の視線が痛いんですが…。城門前につくと、受付の人同士で何やら話をしている。ここでもう一度ラルドさんが証明書を提示して、そのまま検問はパスになった。マジでパスしたのは笑う。
ラルド「にしても、あいつら、うちに向かって睨んでるやつもいたな…。いつものことだが、ちっとは考えられんのかね?」
レーン「大商会の宿命だろ。諦めろ。」
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王都に入ると、見えてきたのは、ケルト風?中世風?なんというか、良くある王都の街並みが見えてきた。前いた町と比べるのが失礼なくらい、道も整っててけっこう綺麗。と思っていたら、馬車が城壁沿いに曲がった。
「商会の本部ってそっちなんですか?」
「いや、たしかにほうなんだが、搬入口や馬車の置き場とか、馬の世話とかでこっちに設けてあるから、ある意味裏口に向かっている。」
「ほうほう。」
ラルドさんが教えてくれる。そりゃ、馬車を置いておくのにスペースとかいるもんね…。
「っと、そういや王都までって約束だったな。俺らはまだ仕事があるから、ここでお別れだ。」
「そうですね。乗せてくださり、ありがとうございました。」
「おう。礼を言うのはこっちのほうなんだが、まぁ護衛はサンキューな。途中の賊は危なかった。っと、長話してるわけにもいかないから、とりあえず、王都の東の区画に近付かないほうがいい、それと、中央円環通りを少し西に行くと"キノシタテイ"って飲食店があるんだが、宿もかねてて、そこが普段から部屋が空いてて飯がうまい。他の宿と比べて良心的な価格だから、そこに泊まるといいぞ。穴場ってやつだな!それじゃあ、俺らはこのへんで。またな!」
そう言ってラルドそん一行は商会のほうへ去って行く。というか、キノシタ?木下…。こっちの世界って漢字って無かったはず。記憶が確かなら無い。気にしすぎか?まぁ良いか。宿を探す手間が省けたというか、ラルドさんが気を利かせてくれて助かった。とりあえず、教えてくれた店に行くことにする。そろそろ昼時だから混んでるかな?
はい。混んでました。飲食店としてはかなり人気っぽい。そして看板を見たら案の定「木下亭」って書かれてた。読み仮名はこの世界の言語で書かれている。なんでこの世界の言語が読めるのか?神子曰く転生者特典らしい。
とりあえず場所は確認したので、他の飲食店とかも探してみる。いや、探す必要は無さそう。ここらへん、宿が多いっぽいんだけど、一緒に飲食店も兼ねてる所が多いらしく。そんなこんなで、昼食は適当に済ませることにする。
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昼食を食べ終えて、王都を見て回ることにする。昼食はサンドイッチとスープのセットを頼んで銅貨8枚だった。サンドイッチは肉と野菜が挟まってて、それなりに量はあった。正直高いのか安いのかわかんない。
「うわぁ…。」
武器屋に来てみた、んだけど。はっきり言おう。全知系能力で鑑定できるから調べたら、ナマクラばかりだった。外れっぽいので、それなりに見て回ってから出ていく。つまりひやかし。前の街で買ったナイフのほうが、まだ良質だよ。
もっと西のほうに来てみたら、職人街っぽかった。いや、職人街ですね間違いない。武器職人のとこを少し見て回ったけど、かなり良質な剣とかも売ってる。よく見かけるのはロングソードかな?バスターソードとかそういう大きな剣は見かけない。
「剣を買っても扱えないからなぁ…。」
一応、転生してから、筋トレとかはしたりして、体力をつけようとはしてる。けど、まだ剣とか扱える気がしない。やっぱ魔法のほうがいいよね!とはいえ、護身用として持っておこう。いやまぁ、重力魔法で拘束すれば大抵なんとかなるんだけどね…。
「ロングソードより、片刃の刀とかのほうが個人的には良いんだけどな…。おっちゃん!これいくら?」
「あ?あぁ。銀貨6枚だな。だが嬢ちゃん、それはやめておけ。そいつは軽いがテクニックがいる。見たところ嬢ちゃん、剣は素人だろ?ならこっちだ。こっちは打突系なんだが銀貨3枚だな。」
「軽いからテクニック…。軽くて鋭利な分、斬ることに特化してるから、ですかね?」
「概ねそんなところだ。」
うーん。テクニックタイプは扱えなさそうだし、出されたほうも自分には向かなさそうなので、謝りを入れてその場を後にする。
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場所は変わって、木下亭。今は夕食時。実は昼に寄った時に、宿について聞いたら、あっさりと部屋を予約することができた。鉄貨2枚で泊まれて朝食がついてくるらしい。相場はわからないが、ありがたい話だ。ちなみに銅貨10枚ごとに鉄貨1枚、鉄貨10枚ごとに銀貨1枚、だそうで、金貨は銀貨10枚に相当するっぽい。かなり高額じゃないですか!それはそうと、夕食の代金は別なわけで。炒飯を頼むことにする。
「この炒飯ってやつを1つください。」
「はーい」
メニューに書かれてた通りに銅貨を3枚渡して注文する…。え?なんで炒飯なんてあんの?マジで転生者が店主とかそんな感じ???そんなことを考えていたら、頼んだ品が来た。想像通りの品でした!!!
「こっちの世界でもこれが食べれるのは素直に嬉しい。にしても米、卵も市場とかには売ってなかったなぁ…。どこから仕入れているんだか。うん、美味しい。量もそれなりにあるし、銅貨3枚でこれは安くない?」
そんなことを考えながらも炒飯を食べる。いや、昼のサンドイッチとスープに比べると、遥かに安い。倍近い差だ。本当にどうやって仕入れとかしてんだ?ていうか経営大丈夫?。いや、何か食べ物を作る能力とか持ってる転生者とかいたら、この値段で出しても大丈夫か。
「ごちそうさまでした」
「まいど~」
カウンターの人に声をかけた後、予約してた部屋に向かう。なんというか、食べ慣れた食べ物とかあるとテンションあがるよね。
「えーと203号室…。他の宿がどうかは知らないけど、あっちの世界と同じ感じって…。さっきの返事といい…やっぱここの店主、絶対転生者でしょ。」
そんなことを呟きながら部屋に入る。
「一人部屋…。ベッドもある。あまり眠れないんだけど、とりあえず横になっておくか…」
氷華の今日の一日はここで終わり。
それじゃあ、また次のお話で。
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「今、あの人チャーハンって…」
「まさか同郷の人か?メニューには炒飯って書いてたはずやから…うーん、間違いなさそう…」
木下亭の店主と"店員"がそんな話をする。
「ごちそうさまでした」
氷華がそう言うのを店主は聞き逃さなかった。
(やっぱり同郷や。間違いなく同郷や。同じ世界の同じ国の人で間違いなさそうやん?わざわざ、こちらに来てまで言うって、もうそれ、あの国でよくあるやつなんよ!とりあえず返事しとこ。転生者だって気付いてくれるやろ!)
「まいど~」
(やっぱ転生者っぽいですね。どうします?引き込みます?)
(うーん。あちらから話してきてくれるんなら、それでかまわへんけど。こちらから話かけるのはやめとこ。)
念話で会話する店主と店員。
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A「あの女のこと、どう見る?」
B「一般常識を知らない、というかローグ商会すら知らなかったようだし、身なりはそれなりに良さそうに見えたが貴族ではない。その上で解明されてない重力魔法を扱う…。転生者、と見るのが妥当かもな。」
A「俺も同じ感想だ。」
ある裏路地で男2人がそんなことを話している。
A「消すか?」
B「まて。上の意思を確認してからだ」
A「へいへい。」
「消せ、なんて指示、してないよね?僕、調べろって言っただけなんだけど。」
いきなり白衣の男が現れる。
A&B「「はっ。失礼しました」」
「それで、転生者は見つかった?」
A「それと思しき人物は数人。キノシタテイの店主が…。ですがあそこの店主は、どうも護衛を雇っているっぽくて、手が出せませんね。他だと、王家の第二王子がほぼ確定で転生者かと。」
「なるほどね。木下亭の店主の護衛、どれくらいの実力っぽい?」
B「不意に手を出せば私でも返り討ちですね」
「へ~。護衛も転生者とかのパターンかな?」
B「あり得そうですね。」
A「それと、紫色の髪と目の髪を後ろ手に一纏めにしている女も転生者っぽそうでした。こちらは比較的簡単に…」
B「まて、あの女に手を出すのは危険だ。重力魔法、お前も見ただろう?。感知魔法も使えるんだ、しかも常時発動してたようだぞ」
A「な?!」
「うーん。誰に手を出すにしても、結果は変わんないし、誰でもいいや。ま、とりあえず王子からかな~。」
不穏な会話を繰り広げる3人…
後書き先輩「主人公、抜け目ないな。無属性だから常時感知魔法使えるのは強すぎる。そこまで計算づくで得意属性を無属性に?」
作者「主人公チートわっしょいわっしょい。やってるほうは楽しいけど、見てるほうはつまんないよね。それを楽しくするのが、腕の見せ見所っぽいけど、初心者なんで無理です!」