98話 ベリアル
side カイネ
「 永久の劫火!!」
全開放した魔力、闘気を刀に乗せ放つディスペア流究極奥義。開放されたエネルギーは大規模な爆発を生み周囲を地獄へと変える。
ラビィから聞いた話しだと名は異なるがアルの奴もこの奥義を使えるようだ・・・どう受ける?
「 Day Break 」
パアアアアアアアアアアアン!
目の前が白い光に包まれる。景色も音も無い白い空間。これは・・・
「どうだい私の世界は。悪いが君の放ったスーパーノヴァは別の空間に転移させてもらった。ダンジョンが崩壊してしまうからね。」
!!?
アルの声はするが気配は無い。例の超高等隠密術か。永久の劫火を転移させた?簡単に言うがあの膨大な魔力エネルギーを飛ばす事など不可能だ。
「・・・何をした?お前の世界とはどう言う事だ。ダンジョンから別の空間に転移しただけだろ。何が私の世界だ。」
「ふむ。その考えで大体合っているよ。だが、」
ズオオッ
何だ!?空間に景色が浮かんで・・・闇が世界を包んで行く。地面が生まれ木が次々と生える。これは森林!?幻術だ!匕首を取り太ももに突き刺す。
・・・。現実・・・だと!?
「そう慌てなさんな。キズは治しておこう。」
一瞬で治癒される。
ゴゴゴゴゴ
地鳴り?
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
これは!足元の大地が隆起していく。
私は・・・夢でも見ているのか。土魔法?馬鹿げてる!この規模、世界を創造する魔法などあるものか。
・・・!この景色は!?あの日の、
底知れぬ・・・耐え難い悲哀。
「これは・・・どうして・・・」
「お前さんの頭の中のイメージから具現化して見たんだが郷愁を誘ってしまったかな。」
薄暗い木々の間を抜けアルが姿を現す。
記憶を覗いたのか。
「具現化?神にでもなったつもり?」
「神では無く魔王だが・・・似たようなものよ。」
「信じられない・・・別次元に世界を創造したなんて・・・」
「察しが良くて助かる。その通りだ。」
・・・・・・。
景色が溶けるようになくなり白い空間へと戻る。
「その力を使い神々と戦争でもするつもり?」
馬鹿げてはいるがアルならやりかねないな。
「私は平和主義者だよ。相手がちょっかいを掛けて来る場合はその限りでは無いがね。」
ちょっかいか。
「・・・私は使徒だが、どうする?殺すか?」
「ははは、君はアルル嬢お気に入りのペットだからな彼女を悲しませる様な事は出来んよ。」
「ペット?ふふふ、はははは。・・・そうか。」
「もっとお喋りしていたいのだがね。お客さんだ。」
客?
姿を現したのは、煙草をくわえたオッサン。
!
「ベリアル!?」
ここはアルの領域のはずじゃあ・・・。
「二人の気配が消えたから追ってきてみれば・・・これはこれは。・・・アル・ディライトだな。俺はベリアルと言う者だ。」
「ああ、知っているよ。私を屠るため神界から送り込まれたのだろう?」
「そのつもりだったんだが、ここへ来て考えが変わった。どうだ、俺と手を組まないか?」
組む?アルと組むと言う事は神共に反旗を翻す事になるぞ。
「私は誰とも組まんよ。捕らえている魔王を解放するならそれで手打ちにしてもいいがね。」
「フーッ、そうか。それなら仕方ない。」
煙草を投げ捨てベリアルが構える。ここで決着をつける気か。彼奴とは一度死合った事があるが、アルと近い存在だと推察する。ここに居るのがその証拠だ。
「やる気満々だな、よし、少し観せてやろう。」
アルも構える。魔力は一切感じられないが水面下ではとてつもないエネルギーが渦巻いているようだ。
二人が動く。視界から消えた。
超スピードとかそういうレベルでは無く本当に消えた。次元の狭間を移動しているのか!?
ズドッ!!バリバリッ!
ベリアルとアルの拳が交錯し、遠くで轟音が鳴った後、黒い雷光が走る。闘気のぶつかり合いで空間に歪みが生じる。
ドドドドドドドドドッ
空震と黒雷が絶え間なく続く。
私も次元に干渉する事は可能だが・・・これは。
「凄い・・・」
あの一度の攻撃だけでもディスペア流奥義数発分の魔力量が必要となるはず。
彼奴らからは魔力をあまり感じない。にもかかわらずこの力は何処から?
「これではまさに神話の戦いではないか。ハルマゲドン・・・どちらが善でどちらが悪かは分からないがのう。くはははは。
─── side ベリアル ───
ドドドドドドドドドドドドッ
「はははは!これ程の奴がこの世界にいたとはなあ!」
歓喜!打ち合いの最中に思わず口にしてしまった。
【 スタンド・スティル (止まる世界) 】
時間を停止させ、全ての物の動きを止める究極スキル。
ズドォン!
時が停止した世界で俺の渾身の一撃を受け止めやがった!
素晴らしい!
「次元だけでなく時空も支配しているのか!嬉しいぜ!天界でもここまでの使い手はそうそういないからなあ!」
「コツさえ掴めば誰でも使える。驕っていると恥をかくぞ?」
本気で言っているねか?
「聞いていた通り面白い奴だな、お前。」
ドドドドドドドドドドドドドドドドッ!
時が止まったままの世界で戦いは続く。
「先程の物言い、そこまでの力を得てなお満足せずさらに上を目指しているのか。」
「その通り、世界は広いからな。まだ見ぬ強者に思いを馳せ鍛錬をしていると最高にハイになれるのだ。オススメだぞ!」
数千年ココでそんな事を続けて来たのか。ククク、そりゃあ強くなるワケだ。
ドドドドドドドドドドドドドドドドッ
「こうして語り合うのも楽しいがそろそろ決めさせてもらう。」
テリトリー・エクスパンション
「無限の虚空」
アルのエリアに俺のエリアを上書きする。
すると・・・エリア内にディスペアの膨大な魔力が俺に向け流入してくる。
「ほう、ディスペアに引いたラインから力を得ているのか。面白い。」
この技を喰らってもその余裕が続くかな?
神霊力と魔力を右腕に収束。攻撃と同時に強大なエネルギーを解き放つ!
「パラダイス・ロスト!」
ゴオッ!!!
ガギィンッ!
「はあ!?」
弾き・・・飛ばしただと!?魔力は俺にしか流れていないはずだ!どうやって
「ふー、あぶない、あぶない。」
奴の手に剣が握られている。あれは聖剣エクスカリバーか!?神界を含め3本ある聖剣の一振が奴の手に!
「おどれ!なんちゅう場面で出しとんじゃ!」
剣に意思があるのか。
「悪かったな。だがお前のお陰で助かったよ、ふふふ」
「ちっ、げに腹立つが主に免じて許しちゃらあ。にしても、こん力は何ね?」
あの剣に宿った力・・・あれは
「ダークエネルギー、闇の力だ。詳しくはググってくれ。」
「ググ?よお分からんが魔力とは違う不思議な力が無限に入ってくるぞ。もう入らんから止めろおおおお!」
闇の力?魔力ではないのか?
これは、例のカードを切るしかないな。
「素晴らしい。流石ディスペアの頂点に昇り詰めた男だ。この手は使いたく無かったんだがな。」
スタンド・スティルを解除。動き出す世界。
指を鳴らし空間に映像を映す。
光の檻に入った元魔王のシスティーナが倒れている。傍には魔王の首にナイフを当てたジャックの姿。
「すまないが、こう言うワケなんだ。剣を離してくれないか?今は魔力0のただの少女だ、簡単に死ぬぞ。」
奴の性格上間違いなく剣を手放す。その瞬間にパラダイス・ロストを叩き込んでやる。
「なるほど、私が剣を離さなければ彼女が死ぬのか。それは悲しいなあ。彼女が助かるのなら・・・」
さあ、剣を手放せ!
「だが断る。」
何だと!?クソが!
「終わりだ!ジャックやれ!」
ナイフが魔王の首に刺さ・・・
キィィン!
ナイフが弾かれる。
何!?
ジャックの胸に刺さった長剣。あいつは魔王の側近の
「メフィスト!」
光の檻が消えている。
隣にもう一つ映像が浮かぶ。アルの仕業か。
映っているのは血だらけで横たわるモロクとその傍らに立つ
「ヨルムンガンド!」
ぐっ、動きが早いじゃないか。それにしても足止めすら満足に出来んのか。使えない奴らめ。
ズオオオオオッ
システィーナの魔力が爆発的に高まる。
ヨルムンガンドがシスティーナの元へ転移し、膝まづく。
「我、復活ッ!!カカカッ!メフィスト、ヨルム!世話を掛けてすまなかったのう。」
跪き頭を垂れる二人。
「どおれ、ちと挨拶でもしてくるかのう。」
!!?
目の前にシスティーナが現れる。
「貴様、なぜここが分かった。」
別次元だぞ。
「そこの小僧とは魂のパスで繋がっているからのう。」
「ふふふ、死にかけていた割には随分元気そうじゃないか。」
「うるさいわ。なっ!?アル!その魔王の称号はなんじゃ!?魔王は我じゃぞ!!」
「君が寝ている間に代わったのだよ。今ディスペアの頂点に立っているのは私だ。」
「ガーン・・・。マジ?」
「マジだ、すまないな。」
二人が話している間に魔力をチャージ。
「魔王の称号まで取られるとは聞いていなかったわ。まあ、取られたら取り返すまでよ。」
「おや、やるのかい?私は構わないが・・・その前にこっちのカタを・・・」
「ヴァルボルト!」
バリバリバリバリッ!!
奴が此方に意識を向ける前に技を放つ。神の雷がアルとシスティーナを襲う。塵一つ残さず消し去ってやる。
「テスラ」
ババババババババッ!
システィーナも雷撃魔法を放つが、こちらが小娘に負ける事など・・・!!?なぜだ!?俺の雷撃が飲み込まれ・・・クソったれええええ!
世界が暗転する。
死ぬのか俺は。
どうしてこうなった・・・。
俺はただ・・・祖国の勝利を・・・願って
─── 回想 ───
ドォーン!ババババババッ!ヒューン!
ドオオオオオン!
ラルフ・ベネディクト
それが転生前の俺の名だ。とある国で兵士として小隊の指揮を取っていたが前線で奮戦した後味方爆撃機の砲弾により死亡。冴えない最後だったな。部隊は壊滅。
気がつくと目の前には白装束を着て背中から羽を生やした男。
一目でピンと来たね。ああ、天国へ来れたんだって。
「これから君にはダンジョン攻略をしてもらう。」
ん?ダンジョン攻略?何を言ってる。ビデオゲーム何てやった事ないぞ?
「殺し合いをしていたじゃないか。得意だろ?」
おいおい、ここは天国だろ?昼間から飲んで騒いで女神を抱いてりゃいいじゃないのか?
「断る。」
戦争なんでクソくらえだ。
「拒否したら煉獄の炎に焼かれ続ける地獄行きだ。死よりも辛い苦しみが永遠続く。」
「・・・・・・。」
「理解してくれたようで何よりだ。さて、では初級から行ってみようか。よいダンジョンライフを。」
意識が混濁する。
止めろ!もう殺し合いなんて!・・・嫌だ。
7年後
「やるじゃないか。初級とはいえ7年で攻略とは。次はもう少し難易度を上げようか。」
弱者を甚振るのも悪くは無いな。むしろ気分が良い。
30年後
「もはや敵無しか。上級でも通用しそうだが油断するなよ。」
序盤手こずったが次元の理をマスターしてからは早かったな。
2ヶ月後
「最後のミッションだ。ディスペア・ダンジョンのイレギュラーの始末だ。上級ダンジョンを2ヶ月でクリアした君なら余裕だろう。これが成された時君は天界の上位存在となる。 」
そんなものに興味は無いがディスペア・・・最凶のダンジョンか。
「ターゲットは魔王ではないのか?」
「人間の冒険者だが魔族寄りの考えを持っていて危険だ。ディスペアの魔物をまとめ神界に乗り込んで来る懸念がある。そうなる前に消す必要がある。」
魔族の為に人間を殺すのか?無茶苦茶だな。ふん、まあどうでもいい。
ディスペアを潰し頂点に立ったその後は魔族の軍隊を纏め天界に進軍し全てを踏み躙ってやる。ククク、お前も家族も皆殺しだ。目の前の天使の話を聞き流し血に染まる天界を想像する。
ディスペアに入った後は同じ目的で集められた者をまとめ部隊を作り入念な準備を重ねた。イレギュラーと呼ばれた男。こいつを倒して全てを終わらせてやる。
─── 回想おわり ───
が、小娘の魔法、たった一撃でこの様よ。
命を奪い続けたツケを払う時が来たようだ。
やっと殺し合いの螺旋から抜けられる。
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・。
暖かい・・・。
ガキの頃、庭の芝生に愛犬ベリーと寝っ転がった時を思い出す。陽の光と風が心地良いあの良く晴れた昼下がり。
ここが・・・天国か。
・・・・・・。
「何余計な事しとるんじゃ。」
システィーナの声。
「私は平和主義者なのでね。」
俺は生きている・・・のか。
「お前さんも色々あったようだが、もう大丈夫だ。もちろん罪は償ってもらうが今は寝ていなさい。」
アル・ディライト・・・。
長い時を経てディスペアの頂点に立ち天界に目をつけられた冒険者。
なるほど、こいつは・・・
危険だ。
頬に熱いものが流れる。
心地良い気分の中、俺は意識を手放した。




