94話 フルフル
side シトリー
「モロクが言ってたけどさー、あんた、あのアルとか言うガキの下僕になったんだって?」
「そうだ。我主人の事を侮辱するのは許さんぞ。」
主人って言った?
「ぷっwwwあははは。龍神が人間の下僕とかマジウケるんスけどw」
「お前も姫様と戦えば分かる。いや、気づく前に死んでるか。」
チッ、んな事言われるまでもないわ。相手の強さくらい測れるっての。
「お前、じゃなくてシトリーね。あんな化け物と敵立する気は無いわ。ベリアルには借りがあるから、こうして今は従ってるだけよ。」
「学院の生徒を狙った時点で姫様のブラックリスト入りなんだが?」
「マジ?蟻んこ殺したくらいで狙われたら割に合わな過ぎるわね・・・引くわ。」
「逃がすと思うか?姫様曰く、分からせてやるから生捕りね。だそうだ。」
はぁ?生捕り?・・・ムカッ
「あんたに私が倒せると思う?」
「それが主人の望みなら叶えるまでさ。少女を甚振る趣味はないが、仕方ない。」
コイツ言ってくれるじゃん。
「気が変わったわ。遊んであげる。」
両の手に魔力を込める。
「待て待て。此処は狭い。場所を変えよう。」
転移する。ここは・・・神殿?
広い空間に巨大な柱が青白い光を放ち並んでいる。
「どうだ、中々雰囲気があっていいだろう?」
「・・・この柱からは心霊力を感じるわ。ここダンジョンの外ね。」
「よく分かったな。姫様に教えて貰ったんだが、ここは始まりの神殿。ディスペアへのアプローチエリアだな。」
ふうん、どうでもいいわ。でもここなら本気で暴れても大丈夫そうね。
「さっさと始めましょ。」
「ああ。そうしよう。」
フェリドが人型から龍へと変化する。
あはっ!私も本気出さなきゃね!
─── 龍の巣 10層 ───
side キース
「やあ、お待たせー。」
「遅いぞ。待ちくたびれたわ。」
着物姿の女が岩に座っている。
「コイツか・・・。」
「童、今日は主と遊んでやる余裕はないからの。」
「うるせえ。わーってるよ。」
ムカつくがコイツは強え。
「アタシに懐いてくれてたのに・・・悲しいなあ。飼い猫に手を噛まれるとはまさにこの事ね。」
「くく、懐いた覚えは無いが、まあ それなりに楽しかったぞ。」
ゆらりと立ち上がったカイネが刀?に魔力を宿らせる。とんでもねえ密度だ。
「キース、下がってな。」
チッ、壁際まで引く。アルの気配が、変わった。
「Dimension multi wall」
障壁が張られる。こっちも凄え密度だな。
「フェニー。」
ん?
「此処に。」
フェニーがアルの前に、召喚?された。オイあの鳥いつの間にアルと契約しやがった!?
スッ
アルが右手を前に出す。
「御意。」
剣に変化したフェニーをアルが握ると、何だ!?黒刀に変わった。んだよあの禍々しい魔力は!
歩み寄る二人。ヤベぇ、震えが止まらねえ!
!!? なんだ、魔力が消えた・・・。凪。静寂。冷たい空気が深く深く沈んで行く感覚。
カイネから表情が消える、対してアルは・・・おいおい、何て顔してやがる。
ゴクッ
「「 流星 」」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
─── 龍の巣23層 ───
side モロク
「始まったな・・・。」
ベリアル様が呟く。カイネと姫様の戦闘が開始されたのだろう。
ん?姫様?なぜ私は敵のガキを姫と?
「モロク、娘の様子はどうだ?」
「ハッ!弱ってはおりますがまだ息はあります。」
魔力も尽き掛けて生きているのが不思議なくらいだ。
「フォーリングダウンは決して解除するなよ?仮にも元魔王だからな。」
「ハッ!承知いたしました!」
死にかけのガキに対して用心し過ぎだとは思うが、そういう慎重な所もこの方の強さの一端なのだろうな。
天幕を抜け部下に念話を飛ばす。
「ガキの様子は?」
「死んだように眠ってますよ。警戒する意味わかんねえんですけど。」
ナイフ使いのジャックが答える。
「ベリアル様が気にされておられるのだ。気を抜かず見張りを続けろ。」
「へいへい。」
「モロク様、上層の結界に反応が!」
重力使いのシーダから念話が入る。
22層に張られた障壁に複数の魔力反応。
何だこの兵士の数は!?数千はいるぞ。連隊級が突然湧くなど有り得ん。召喚術か!?しかしこれだけの大規模召喚聞いた事が無い。
アルの戦闘と同時に攻めて来たわけか。
「シーダ!兵隊を連れて迎撃だ。ジャックの部隊は檻の周囲を警戒しろ!狙いはあのガキだ!」
「ハッ!」「了解!」
召喚された兵士一体一体が一騎当千の猛者だと考えると私も動く必要があるな。全くあの姫様の周りは化け物揃いだな。
ん?まただ。姫様?アルの事を私は姫と・・・
「モロク様!上層から武装したスケルトンの軍勢が!ああああああ」
ブツッ
配下からの念話は断末魔で切れる。
今考えるている時間は無さそうだ。
転移。
─── 龍の巣 22層 ───
side オフィーリア
「進め!道を塞ぐモノがいたら蹴散らせ!進め!蹂躙せよ!」
スケルトンホースに乗り檄を飛ばす女を冷めた目で眺める。この女ノリノリだな。
ゴクゴク
「ぷはぁ!キタキタキタああああ!」
アルル様から貰ったバッグからエリクサー取り飲み干した。
「今度はもっと強力な奴出すわよお!あはははは!」
はぁ。この女、もともと大規模召喚が得意だったがアルル様の力を貰い水を得た魚の様だ。
この兵士たちの中には九千層のエリアボスに匹敵する猛者もいる。宙に舞うのは竜人たち。間違いなくディスペア最強の軍勢と言っていいだろう。が、相手も一筋縄ではいかない連中だ。油断は出来ない。
【 Dimension⠀】
下層の空間を把握。
「マリー敵が動き出したわ。」
先陣を切った連中とやり合っている。異世界から召喚された戦士か、いい動きだ。スケルトンの騎士を次々と消し去っていく。
「オーケー、コンロン出番よ。」
ライオンの獣人を召喚する。
「アルル様の命を受け馳せ参じた。俺の相手は?」
「ふふ、今送ってあげるわ。暴威を見せつけて来なさい。」
「・・・ふんっ、言われずとも。」
あら、マリーに命令されてイラついてる?
最前線へと転移。
「マリー、彼がアルル様の言っていた・・・」
下賜された兵士か。
「ええ、ディスペア最強の武闘家コンロンよ。殴り合いの勝負でアルル様に敗北して配下になったみたいね。」
九千層レベルのフロアボスを相手の土俵で完膚無きまで叩き潰す。アルル様の楽しそうな顔が目に浮かぶわ。
相手の兵隊が次々と消えていく。単純な武力なら八柱を超えるだろう。
「マリー、あなたコンロンの他にもアルル様から戦士の下賜を受けているの?」
「んー?ええ、現状、魔王の加護を受けているものは誰でも呼び出せるわよ。さしずめ今の私はディスペア最強の軍師ってとこかしらね。ふふんっ!」
えっ、待って!?アルル様!このバカにそんな過剰な武力与えちゃって大丈夫なの!?
秒で調子乗っちゃってますけど!?
「さあて、フロアボス、ガンガン呼び出すわよー!」
物量で押し切る作戦か。作戦なんて代物じゃないけど。
「もう少し相手の出方見た方が良いんじゃない?」
「はあ?何、あんたビビってんの?」
子供の喧嘩じゃないんだから闇雲に突っ込んで大丈夫かって言ってんの!おバカ!
「て言うかアルル様も良く許可したわね。こんな全戦力投入なんて・・・」
アルル様が陣頭指揮を取るなら分かるが。
「許可?そんなもの貰って無いわよ。私がシス様助けたくて動いてるわけだし。」
へ?
「アル様なら気づいてるはずよ。何も連絡が無いって事はオーケーって事でしょ?」
なわけ無いでしょ。まあ、気付いてはいるんだろうけど戦闘中みたいだし。大丈夫かなあ。
「はぁ、シス様助けたいのは私も一緒だから協力はするけどさ。」
「あんたは私のガード頼むわ。召喚中は無防備になるからね。」
「はいはい。」
「おーっ!ぎょーさん集まっとるやんけ!絶景やな!」
誰!!?
上から声が!!
見上げた瞬間
ザシュ
マリーの胸に剣・・・
「がふっ、」
馬上から崩れ落ちるマリー。
くっ!
キィィィン!
刺客の一撃を防ぐ
辺りにいた召喚された兵士の一団が消える。
「スッキリして見通し良ーなったなあ。」
こいつ・・・
「あなた、刺客だったのね・・・ベルゼビュート。」
「ちゃうちゃう、ボクの名前はフルット・フルーリや。皆からはフルフルって呼ばれとる。オフィーリアちゃんもそう呼んでええで。」
それも偽名なんでしょ?
「アルル様、緊急の・・・」
念話を飛ばそうとしたが結界で繋がらない。
「張らしてもろたで、今アルルちゃん呼ばれると面倒やからな。」
用意周到ね。とりあえずはマリーの救助が最優先か。
異変に気付いた竜人たちが引き返してくる、が
スパアアアン!
翼を切断され首を切り裂かれる。
「あなた、アルル様と対立するつもり?」
「そんな怖いことする訳ないやん。」
「矛盾しまくりだけど?」
「今は大人しく引いてくれんかな。頼むわ。」
逡巡する。
「無理ね。私あなたの事嫌いだったの。ここで倒したら・・・さぞ気持ち良いでしょうね。フフフ」
「・・・そうか。んじゃ、しゃーない。やろか。」
胡散臭い奴だったけど刺客だったとはね。心置き無く始末出来るわ。
アルル様に敵将の首捧げたらぁ、褒めて貰えるかしらぁ。くふふ
邪悪な笑みが溢れてしまう。
「・・・怖っ。」




