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絶望の果て  作者: 馨
90/103

90話 胸が鳴るのは、君のせい


「総長、それにしてもその格好は・・・。」


「ああ、血がこびり付いてしまってな。扉を開いた瞬間に傷の方は完治しているがね。」


「は、裸とは気付かず、し、失礼しましたあ!」

コートを渡してくる。良い子じゃないか。


「あー、一風呂浴びて来るから構わないぞ。お前さんも行くかい?」


「お、押忍!ぜ、是非お供させて頂きます!」

ふ、そう畏まらなくてもいいんだがな。


転移、癒しの湯。


カポーン

ザパァ


先着が居るようだな。

「そ、総長、そ、そちらは男湯となっておりますが?」

ああ、知らないのか。


「私は男だよ。」

ものを見せつける。


「・・・・・・!!? し、失礼いた、いたしましたあ!」

動揺させてしまったか。


ザパア

血を流す。

ふぅー、堪らんな。ドロドロの水が流れていく。


「姫さん、何でそんな汚れてんだ?」

先に風呂に入っていた虎が話掛けてくる。


「これか、少し新しいダンジョンに潜っていてな。傷だらけのドロドロよ。はっはっはっ!」


「嘘だろ!?姫にキズを付ける奴がいたってのか!?」


「ああ、幾度となく死にかけたよ。何があるか分からないものだよなあ。人生ってやつは。ふふ」


「すげえ・・・姫さまが苦戦するとかヤバ過ぎるだろ!俺もそのダンジョンに行ってみてえ!」

はっはっはっ、虎は平常運転だな。


「今度連れて行ってやろう。だが魔力やスキルは一切使えないからな?」

虎に軽くダンジョンの様子を伝えていると、


「えっ、騎士?ドラゴン?俺が入った時はネズミしか出なかったのですが・・・。」

ヨハンの相手はネズミか。


「入る者の力が反映されてるんじゃねえか?

虎が私見を述べる。

ふむ、私と同じ見解だな。


「まあ、何にせよ修行には持ってこいの場だろう。挑戦してみなさい。」


「あ、あの・・・姫様・・・いや、アル・・・様なのですか?」

ガイウスか。


「ふふ、久しぶりだなガイウスよ。」

片膝を着き臣下の礼をする。


「あ、アルさま・・・。」

肩を震わせている。


「こんなところで野暮な真似はよしなさい。そうだ。髪を洗ってくれんかね?」


「そ、総長!総長の髪はこのヨハンが洗わせて頂きます!」

そうか?


「誰だ貴様あ!アル様は私に頼まれたのだぞ!わきまえんか!」

誰でもいいのだがね。


睨み合いを続ける2人を尻目に髪と体を洗う。


「かあああああ、たまらんなあ!」

湯船に浸かるとつい声がもれる。桶、徳利、お猪口を転移。


「姫!注いでやるから俺にも飲ませてくれよ!」

虎が舌を出してハァハァ言っている。


「勿論、皆の分も用意してやるさ。」

4人で酒を呑む。最高だな!


風呂から出ると、

「では、総長、明日のダンジョン攻略も宜しくオネシャス!」


「ああ、宜しく頼む。」

学院のイベントか。


自室へ、転移。


「ん〜っ!んーっ!」

何だこれは。


天井から開脚した状態で吊られた女とベッドで眠る男。はぁ。また彼女の仕業か。

しかしローズなら、この程度の拘束簡単に抜けられるはず・・・。


「フーッ、フーッ。」

顔が紅潮して息が荒い。

・・・・・・。


「ノエル、すまないが来てくれるか?(念話)」


「・・・ん。」

シュン


「・・・何?・・・」


「彼女の拘束を解いてあげて欲しい。頼めるかね?」


「・・・ご褒美。」

?褒美が欲しいのか?


「私が持っているものなら何でもやるぞ?」

キラン

ノエルの目が光った、気がした。


「あ、アルの着ている服が欲しい!」


「そんなのでいいのか?後で放出するから好きな物を選びなさい。」


「し、下着も、いいの!?」


「別に構わんが?」


「やった!」


「それじゃあ、頼んだよ?」


「・・・りょ!」


飯でも食いに行くか。

おっ、廊下でアスを見つける。


「おい、アス。」


「何だアルル・・・いや、アルか?」

良く気づいたな。


「ああ、久しぶりだな。アルル嬢とは仲良くやっているか?」


「・・・知ってんだろ?」

ふふ、意地が悪かったかな。


「ふふ、悪かったよ。それより飯でも食べに行かないか?」


「・・・別に、いいぜ。」


よし!酒場に直行だ。

酒場はドワーフや竜人たちで賑わっている。


「私の奢りだ。好きなものを頼むといい。」


「エール。」


「それだけか?なら私が頼もう。お嬢さん、注文いいかね?」


「アル様!?珍しいですね。こんなとこで会うなんて。」

ルナだ。バイト中のようだ。


「ああ、たまにはな。」

酒とステーキを2人分注文する。


「おい、俺は肉は食わないぞ。」


「ん?ああ、私が食べるんだ。腹がペコペコでな。」


「・・・そうかよ。」


エールが来る。乾杯!はしてくれんのか。


「かあああ、たまらんなあ!それにしてもこの肉は美味いなあ。」

何の肉だろう。


「ルナ。ぶどう酒を頼む。それとこの肉は何の肉だ?美味いじゃないか。」


「それですかあ。竜の尻尾ですねえ。」

はっ?


「生え変わる時に抜けた尻尾を再利用?してるんですよ!」


「そうなのか。」

ルナの尻尾を見る。


「やだなあ、私のは当分抜けませんよお!」

キャッキャッと笑う。


食事を終えウィスキーを注文。

私はストレート、アスはオン・ザ・ロックだ。

カラン

「学院に行ってたはずだが、何であんたが出てきてんだ?」


「それを話しに誘ったんだ。」

例のダンジョンの事を話す。


「聞いた事無いな。それにその特殊性・・・攻略した時に何かメッセージみたいなものは無かったのか?」


「あったぞ、おめでとう、今日からあなたが魔王ですってな。」


「はあ!?」

声デカいぞ。


「マジか?」


「マジだよ。ステータスを見てみなさい。」



ステータス


名前 アル・ディライト

種族 人間

年齢 14歳(時間停止中)

加護 底辺のゴミ

称号 サキュバス、次元を超えし者、時の鎖を断つ者、魔王



「おい、魔王よりも物騒な称号が並んでるじゃねえか。」


「いつの間にか増えてたんだ。ふふ」


「魔王様は死んだのか?それによって新たな魔王を生む為にダンジョンが発生した?」

可能性は高いな。だが、


「彼女は生きてるぞ。死にかけてはいるがな。」


「はあ!?何で分かる?」


「本人と話した。ダンジョンをクリアした事でディスペアに居る者たち全てと念話が可能だ。転移も自在だぞ。」


「マジか・・・!?まるで魔王様じゃないか。」

だからそう言っている。


「つーか、魔王様助けに行かないのかよ!死んじまうぞ!」


「私は冒険者だ。魔王討伐が最終目標なんだが?」


「それは、そうだが、戦わずして勝つなんて・・・あんたらしくねえなって思っただけだ。」

ふふふ、よく分かっているじゃないか。


「冗談だよ。魔王、いや元魔王は助けるし刺客は潰す。どうやらそれらを明日のダンジョン攻略で一遍に片付けられそうなのだよ。」


「・・・そうなのか・・・任せて良いか?」


「やるのは私じゃないがね。」

ウィスキーを煽る。


「アルルか?大丈夫なのか?あんたがやった方が・・・」


「あの子は強くなった。私以外は誰も勝てんよ。ふふふ」


「・・・分かった。だがもしもの時は頼む。」


「ああ、分かってる。」

その時私の意識が残っていればね。


「私はもう行くよ。後は頼むぞ。程々にな。ふふふ」


「お、おい。またか。いつも急なんだよ。」


「・・・ふぁ!?っれ、ここは?」

あれっ?ダンジョンは?攻略したんだっけ?


「酒場だよ。」


「アス・・・そうか。また(アル)に助けられたのか。」

ありがとね。


「魔王になったらしいぞ。」


「うん。・・・変だよね。魔王を倒しに来た冒険者が魔王になるとかさ。ミイラ取りがミイラになる、みたいな?あはは」


「別に何も変わっちゃいないだろ?変な称号が付いただけで。」


「まあ、そうなんだけどね。でもここを守護する責任者?みたいな感じになっちゃったから・・・。」


「いやいや、魔王、元魔王か。あー、ややこしいな。名前なんて言ったかな。思いだせねえ。とにかく奴は何もしていなかったぞ?ワルプルギスの時も雑談しかしてなかったからな。」


「ふーん、ワルプルギスねえ。開かなきゃだよねえ。トップが変わったわけだし。」


「現状意味無いだろ。八柱の半分はやられてるし残り半分はこの街にいる。」

半分ワルプルギスじゃん!


「あはは!確かに!じゃあ別に今まで通りでいっかあ。」


「そうゆうこった。」


「・・・ありがとうアス、少し楽になったよ。」


「そうか。」


「じゃあ、そろそろ帰ろっか?」


「ああ。・・・アル、少し休んで行かないか。」

あっ。


「う、うん。」

YES!


店を出ると、

「アル探したぜ。よう、アス元気だったか?」

キースだ。


「・・・ああ。」


「お腹の調子は大丈夫なの?」


「吐いたらスッキリした。」

ニカッと笑う。無駄にいい笑顔だ。


「探してたってアタシに何か用?」


「一緒に飯でもどうかと思ってよ。」


「残念、今食べたとこだから。行こアス。」


「ちょっ、待てよ。・・・お前ら付き合ってんのか?」


「そうだけど、何か?」

ガタッ

ん?今ちらっとルナの姿が・・・。


「俺と学院デートしたじゃねえか!」


「デート!?」

ルナの叫ぶ声がする。


「一緒に学院行っただけじゃん。何か勘違いしてるよ。」


「アル、相手をするな。行くぞ。」

アスに手を引かれる。あっ。


「逃げんのか?この腰抜け野郎!」


「・・・あ?」

珍しくアスが怒ってる。怒り顔かっこいい。


「勝負しろよ。アルを懸けて勝負だ!」

は?どゆこと?


「凄い!mangaみたい!」

ルナが目を輝かせている。


「・・・いいだろう。」

えっ?アス勝算あるの?

八柱のランクとか知らないけどアタシの見立てだとアスは負ける・・・と思う。出会った時と比べたら遥かに強くなってるけど、それでも負けるとアタシの直感は告げている。


「ハッハー!よく言った!明日俺が学院から帰ったら勝負な。燃えるぜ!」

そう言うと消えてしまった。マジでやるの?


「キャー!こんな事ってある?一人の男を二人の男が奪い合うとか・・・mangaじゃん・・・。ヤバっ!みんなに知らせなきゃ!」

何か盛り上がってるんですけど。


「・・・アス。」


「アル、さっき話してたダンジョンに連れて行ってくれないか。」

そうか、あそこならワンチャン、イけるかも!


「うん!分かった!」

転移。


神殿へ。おや、表示が変わっている。

アタシが魔王になったから?


【Transcend yourself】


自分を超えろ・・・か。あの試練のまんまだな。


「行ってくる。」


「うん!アスならクリア出来るよ!頑張って!」


石碑に手を載せる。転移。

アス信じてるよ。アスならきっと・・・


ぽわん


アスが現れた。ん?早いね。


「アス?」


「アル、お前あの状態であの狼を倒したのか。」

アスの場合は狼なんだ。


「う、うん。」


「・・・そうか。」

石碑に手を載せる。転移。


ぽわん


秒で殺られてるんですけど!?忘れてた。最近クールキャラ装ってるけどこの子割とポンコツなんだ・・・。


転移。ぽわん。転移。ぽわん。転移・・・


ぽわん


「・・・。」

気まずいよ!


「アル、俺は諦めない。先に休んでいてくれ。」


「う、うん。頑張って!」


「ああ!」

転移。ぽわん。


・・・頑張って!




─── アビスの街 宿屋 ───


「あーあ、アイツ、ホント使えないわねえ。魔王生み出してどうすんのよ。」


「シトリー様、明日の守備ですが・・・」


「守備?もう、ウチらの勝てる相手じゃないわ。あとはベリアルの奴に任せるしかないわね。」


「・・・御意。」

影が消える。


はあーこれは鞍替えも考えなきゃダメかも。勝った方に乗れば良いだけなんだけどねー。

どっちが勝つかな?

新たな魔王か、異界の使徒か。

どちらにしてもディスペアの運命が明日決まるのは間違いなさそ。

フフフ。楽しみー!




─── 旧魔王の居城 ───


ドンッ

扉が勢い良く開けらる。

「メフィスト!魔王様は何処だ!」

ヨルムか。


「流石に戻って来たか。お前にもあの〝声〟が聞こえたようだな。」


「ああ、新たな魔王が生まれたって言ってたが・・・魔王様は何処だ!?」


「行方知れずだよ。」


「はあ?」


「魔力が完全に消えて追跡は無理だ。」


「てめえ何余裕こいてんだ!?探しにいくぞ!」


「場所は割れてる、さっき新たな魔王と話して聞いたからな。」


「新たな魔王だと!?俺は認めねえぞ!認めねえけどよお、誰だ?八柱の誰かだよなあ!」


「アル・ディライトだ。」


「・・・アルが、魔王?マジ?」


「ああ、だが、戦おうとするなよ?私たちとは格が違いすぎる。」


「・・・お前が、そんな事言うなんてな。で、魔王様は今どこにいる!?」


「今いる場所は不明だが、明日8295層、北の山脈にあるダンジョン最下層に転移されるそうだ。」


「8295層だな!」


「待てよ。」

出ていこうとするヨルムを呼び止める。


「これはディスペアと侵略者の戦争だ。俺も動く。頭潰されて黙ってられるか。皆殺しだ・・・。」


「メフィストよう。殺気が漏れてるぜ。」

笑みを浮かべるヨルム。


シスを攫った事、後悔させてやる。



─── 9505層 ベリアルの屋敷 ───


「ああ、手筈通り頼むぞ。ああ、分かってる。」

念話を切る。


「フルーリーですか?」

部下のテッドが聞いてくる。


「明日の事でな。おい、ガキを連れ出す。モロクにダンジョン最下層に結界を張らせておけ。」


「ハッ!」


決着をつけようじゃないか。

どちらがここの支配者に相応しいか教えてやろう。フハハハハ!



─── ベリアルの屋敷 地下 ───


彼奴め、遅すぎるわ。妾がどれ程待ったか。

何度命を手放そうとしたか。


─── 回想 ───


「あー、聞こえるかね。魔王さん。」

なんじゃ・・・声が。


「ふむ。まだ生きているようだな。結構。」

この声・・・。


「待たせて悪かったな。明日、会えるのを楽しみにしているよ。ふふふ」


プツッ

──────────


それだけ言って切りおった。

此方の話も聞かずに一方的に

それにあの自信はどこから来る?


初めて話した時から生意気で我儘で自分勝手で・・・


どうしようもないほど・・・


()いやつ・・・


ふぁ!?妾、今何を!?

違うのじゃ、今のは意識が混濁して、って妾何言い訳してるのじゃ!


くっ、どうでもいい事を思考してしまった。生命力が尽きかけていると言うのに全く彼奴と来たら。

もっと話したかったのに、もっと声が聞きたかったのに・・・って違うのじゃあああ。


彼奴に文句を言うまでは絶対に死ぬもんか。死んでも死ぬもんか!

ああ、思考がまとまらない。


アル・・・早く・・・会いたいのじゃ・・・。

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