86話 HEAT
ーーー アルルが生徒のケツを叩いている頃 ーーー
ズウウウウウウウン
side ルナ
「今の地鳴りのような音は・・・。」
「あー、テステス。これはアタシの一部の配下に送ってる一方通行の念話です。そちらの声はアタシには聞こえないのであしからず。」
アル様の念話、やはり今の音と関係が・・・
「気付いてると思うけどシャンテルに張った結界が破られました。相手は殺気だだ漏れで市内へ接近中。さあ、どうする?」
えっ!?気配を探る。あっ、向かって来る巨大な魔力を感じる。
どうするって・・・迎撃するとか?
「だよなあ、アタシたちに喧嘩売るとか許せないよなあ?いいよ。許可する。死なない程度に遊んでやりな。」
えっ、私に勝てるか!?。あ、でも配下って事はフェリド様、ローズマリー様や、アス様、オフィーリア様にも連絡行ったかな。
チラリとローズ様のブースを見る。いつもと変わらず魔導書を見ている。えっ、侵入者には気付いてるよね?
「あっ、ちなみにアタシと幹部たちは今回忙しいから出られません。みなさんで協力して対処してね。よろー。プツ」
念話が切れた。忙しい・・・。チラリ。コーヒー飲んでケーキ食べながら魔導書を読むのは忙しいと言うのか・・・。
いや、これは自分を売り込むチャンスかもしれない。
「ディックさん!行こう!」
対面で本を読むおっさんに言う。
「?行くって、どこへ?」
あー、一部の配下って言ってたね。なるほど。
「あ、何でもないです。ごゆっくり。」
キョトンとした顔のディックを残し外へ。
さて、生き延びる事は出来るかな・・・。
side リリム
「よろー。プツ」
ちょっ!アルル何言ってんの!?魔力を探る。ゴクリ・・・この濃密な魔力オフィーリアさんクラスか!?八柱の可能性もある。くっ、時間はない。前にアルルが言ってた事を思い出せ!戦う前から弱気になるな!私なら勝てる!
行くぞ!
side ノエル
「・・・りょ。」
side ラビィ
「あー、これカイネ様のせいじゃないですかあ?八柱のエリア潰したとか言ってましたよねえ?」
「うにゃん?」
何すっとぼけてんの、この人・・・いや猫か。
「責任とってね。猫ちゃん。」
抱き抱えて、転移。
side ティガー&ガイウス
「はぁはぁ。お、おい、聞いたか。」
「あ、ああ、すぐにでもイかないと。ふーっ、ふーっ。」
汗だくの2匹。どんどん息が荒くなっていく。
「もう限界だ!イクぞ!」「ああ!」
サウナを出る。
side 侵入者もとい焔帝キース
「魔力の残滓が消えた。」
ありえねえ。例え死んでも魔力ってのはすぐには消えねえ。
「残滓、そんなもの分かるのか?」
「ああ、魔力ってやつはどんなに気配を抑えても出ちまうもんなんだ。ここまでも微かにしか感じなかったが、ここからは完全に消えている・・・。こいつは相当の手練れだぜ。」
「・・・まさに猟犬だな。」
チッ、見つけられねえんじゃ犬以下だぜ。
「だが、このエリアで間違いなさそうだ。ローズ、いやオフィーリアに先に会っとくか。」
「・・・どうやらその時間は無さそうだぞ。」
あん?次々と転移して来る奴ら。ここの兵隊か?
「あんた、誰よ!アルルの結界解いてんじゃないわよバカ!」
何だこの失礼な女は。
「失礼、我らはある者を探しにここまでやってきたのです。我の名はフェニックス。また会いましたね、お嬢さん。」
「あっ!あんたアルルにやられて下僕になった鳥じゃない!何飼い主に噛みついてんのよ!」
「裏切ったわけではないのだが・・・同じことか。ちなみに我の背に乗るのは・・・」
チッ、名乗れってか?
「キースだ。俺の支配領域が潰された。たった一人の手でな。そいつを探しに来た。」
「あっ、その犯人ならここに、」
「にゃにゃにゃにゃにゃ!」
ウサギ女が猫に顔を引っ掻かれてる。なんなんだ。
「では、その者を探して連れて来ればいいのだな?」
狼男が言う。
「おいおい、アル様の命令はぶっ殺せ!じゃなかったか?」
虎が言う。ん?アル?
「アルと言ったか?ここにいるなら会ってみたい。」
ヨル兄ぃを倒しオフィーリアと付き合ってる?男。
「今は別のフロアに行ってるから、残念だったわね。それで、どうするの?私たちとヤルの?いいわよ、掛かってきなさいよ!」
何だこの女は。
「落ち着けよ、ガキ。お前らに用は無え。ここには居ないようだから・・・帰る。」
オフィーリアに会ってからな。
「悪いけどよー、俺らも姫様にもてなせって言われてるんだわ。ただで帰らすわけにはいかねえぞ?」
「お、おい、ティガー。よせ。」
「ヤルのか?別にいいぜ。」
「あ、あの。それなら私いいところ知ってますけど?」
角と尻尾を生やした女が言う。竜人か。
「お前ら・・・もういい好きにしろ。」
狼は乗り気じゃないようだ。
4120層テーブルマウンテン。
懐かしいなぁ。まだあの時のまま残ってら。ふっ。
「それじゃあ始めるか!」
虎が前へ出てくる。
「お前一人かよ?全員でもいいんだぜ?」
「決闘だからな。」
心意気は買おう。それなら。
「フェニー、変化。」
「御意。」
フェニーから飛び降りる。フェニーの体が光り輝き形態変化。
魔剣【ヒノカグツチ】は俺の魔力を通す事により完成する。全てを焼く真紅の獄炎が刀身から吹き出している。
「良いぜ、来な。」
こっちも万全の態勢で望ませてもらう。
虎の体と魔力が膨れ上がる。空気が震える。
「凄い!ティガーの奴アル様との修行で私とやった時とは比べものにならないくらい強くなっている!」
ウサギが叫ぶ。
確かに中々のもんだ。俺の配下にしてもいいレベルじゃねえか。
グオオオッッッ!
速えな!だが、それだけだ。
ティガーの渾身の一撃。身を翻して躱し腕をぶった斬る。
ズパン!
肘から先が飛ぶ、が勢いは止まらず左腕で首を掴まれる。右腕犠牲にして獲りに来たか。
くぅぅ、すんげえ力。だが、
ゴオッ!
炎が肌を焼く。耐性あっても無駄だぜ?俺の魔力がブレンドしてあるからな。
肌が炭化していく。
「ディガーもういい!離れろ!」
狼が叫ぶも、
ガアアア!
今度は首を噛みちぎろうとしてきた。が歯が欠ける。残念だったな。
肩を掴んでいた腕が離れ
ドッ・・・
ついに倒れた。
「ティガーさん!」
「ティガー!!」
魔法使いの少女と狼が駆け寄る。
「うっ、酷い。」
ヒールを掛けているようだが無駄だ。対象が朽ちるまで俺の炎は消えない。
「ティガー!リリム殿、頼む何とかしてくれ!」
「わ、分かってる!分かってるけど、この炎を消さないと!何なのこれ!こんなのアルルじゃなきゃ・・・」
ブワッ!
炎が消えた。だと?
いつの間にか側に女が立っている。!この魔力・・・。
「まったく、高みの見物を決め込むつもりだったんだがのう。ラビィが五月蝿くてかなわん。」
「当たり前だよ!カイネ様のせいでティガーが死んだら死ぬまで恨んでやる!」
「だそうだ。娘、私が恨まれぬ様、虎の事は頼んだぞ。」
「ほ、炎は消えたけど重症には変わりないんだからね!」
「私も手伝うよ。回復は得意じゃないけど。」
竜人も加わってヒールを掛けている。
「おい!女ァ!てめえだな俺のシマ荒らしたのはよう!」
「シマ?ああ、あれか。更地になって随分スッキリしたただろう?」
「上等だ。」
ビキビキ
side ラビィ
危なかった、カイネ様がいなかったら私たち全員死んでいた。いや、そもそもあのキースと言う男は彼女以外はどうでも良かったんだ・・・やっぱり悪いのはカイネ様じゃん!
それにしたって、
二人の剣が交差する度に凄まじい光りと衝撃波が。やはりカイネ様って凄い。
私の目では光を追う事さえ出来ない。一撃を放つ度に数キロ単位で位置が移動する。
八柱とはこれ程なのか。彼女と付き合いは長いがこんな戦い見たこと無かった。全然本気じゃ無かったんだ。くそ!私じゃ足元にも及ばない!
side ガイウス
戦いが始まり何分経った?体感は数十分くらいに感じる。空気の振動は収まる気配がない。ドオンと言う鳴り止まない爆発音が上空の至るところで発生している。これじゃ、神話の戦いだ。姫様は殺さない程度に相手してとか言ってたが、冗談だろ。姫様と一緒にダンジョン攻略をして強くなった気でいた。いや実際、レベルはかなり上がったが、この戦いには入り込む余地すらない。
ティガー、生き残ったら教えてやるよ。この光景をこの焦燥感を。
side キース
はっ!ここまでとはなあ!オッティ、ベイル、雑魚呼ばわりして悪かったなあ。こりゃ強えわ!何しろ炎が全く効かねえ。魔装の密度がヤバ過ぎるんだ。虎の炎が消えたのも女が魔装張ったからだろう。
グッ、それにこの重さだ。一撃一撃の重さがハンパねえ。気ぃ張ってねえと一瞬で意識持ってかれる。フェニーじゃなきゃハナシにならなかったな。
こいつヨル兄やメフィスト卿より強えんじゃねえか?おっと、クソ!余計な事考えてる暇はねえな!
フェニーに魔力を限界まで送る。密度だ。あの女の剣に纏う異常な魔力。あの剣を叩き折らねえと勝機はねえ!駄目だ、足りねえ!はあ、こんなとこで命賭ける事になるとはなあ。ノリで殺し合いなんてするもんじゃないな。まったく、イやになるぜ!生命力を剣へと注ぐ。
ハッハーッ!
俺の全てを喰らいやがれ!
「クリムゾン・ヘルフレア!」
ヒノカグツチから炎が噴き出る。今この瞬間、間違いなく密度はこっちが上だ!
剣が交わる。炎の向こう側、女が笑う。
!!?
クソっ!あの女ハナから本気じゃなかった!密度がどうこうじゃねえ。次元が違う。
体に衝撃が走る。
光に包まれる視界。
・・・悪りぃ、メフィスト卿しくった。
オフィーリア、死ぬ前に会っておくんだったな。
ヨル兄・・・アルとこの女、どっちが強えんだろうな。
ああ、女の名前聞いておくんだったな・・・。
ゴオオオオオオオオオオ




