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絶望の果て  作者: 馨
83/103

83話 オタクに恋は難しい


ディック・ロスの朝は早い。


「ふーふーっ。」

何で拙者だけこんな宿屋に止まらねばねらんのだ。姫様(アル)にもらった異界の女の子が描かれた壁紙を見ながら1人ゴチる。

ちょと○○○揉んでしまっただけじゃないか(67話参照)。姫様が魅力的過ぎるのがイケナイんだ。それなのに出禁は酷いだろ。あれから仲間にも白い目で見られて(前からだが)大変だったのだ。

おっと、もうこんな時間か。着替えて図書館へと向かわなければ。



挿絵(By みてみん)



この街に最近出来た馬鹿デカイ図書館。噂では1億点を超える書物が収められているらしい。中には神話級と言われる物もあるとか無いとか。

それらはほぼ全て姫様の寄付だと聞いた。本当に何者なんだ。


図書館に着くとまだ開いていない門の前に百人を超える行列。娯楽の少ない街だ。貸出し禁止だと当然こうなる。その脇を通り門兵にカードを見せゲートを開けて入館する。このカードは姫様配下の者に配られた身分証明書だ。姫様の魔力が込められておりカードをかざすとゲートのロックが外れ中に入る事が出来る。若干の優越感浸れる瞬間。


中へ入り通路を進むと巨大な円形のホールに辿り着く。

ホールの壁面は本棚でグルっと囲まれており天井ギリギリまで書物で埋まっている。

吹き抜けのホールには机と椅子が置いてありここで皆読書をする。

一般市民は、だ。


拙者の求める書物はここには無い。奥の扉を開けVIP専用の部屋へと向かう。

カードで扉を開けるとホールを超える広さの空間が現れる。地下でも無いのにどこにこれだけの空間が収まっているのか。姫様曰く「次元の狭間に空間を固定したんだよ。」だそうだ。全く意味がわからない。


入ってすぐ上のブースにいるのは八柱の1人ローズマリー。この図書館の管理人兼ガードマンをしている。

なんでもドワーフを脅しこの施設を最優先で作らせたとか。図書館には数百名の兵隊がいるが全て彼女が召喚した者たちだ。一体一体が一騎当千の戦力を誇る。警備の他にも彼女の元に軽食などを運んだりしている。召喚者は引き込もって魔導書を読み漁っているだけだと言うのに健気なものだ。

あっ、ローズマリーと目が合う。会釈をしてスマイル。フヒヒ。

一瞬凄まじい眼光で睨まれたが直ぐに読書に戻った。怖や怖や。


目的の書棚に付く。えーと前回は12巻まで読んだんだよなあ。ここは異世界の書物、主に絵で構成された物がメインに並べられている。mangaと言うらしい。今読んでいるのは学院を舞台にした恋愛物だ。身分の低い主人公が巻き起こす涙あり笑いありの群像劇に胸がキュンキュンしてしまうのだ。絵だけでもストーリーは何となく分かるのだが、細かな所が気になり異界語の辞書を引きながら読み解いていく。


なるほど、この毎朝、部屋に起こしに来る女の子は嫁ではなく幼なじみと言うのか。

今のセリフ絶対聞いてたぞ!

おま、そっち行ったら、ほらあ!すれ違ったあ!

まーた勘違いしてる!その子が好きなのはお前だよ!頼む!気付いて!


はーっはーっ。

イライラするが続きが気になって仕方ない。


ガタン

ビクッ

向かいの席に女の子が座る。

フワリと良い香り。

「おはようございます。今日も早いですね。(念話)」

図書館での会話は基本念話で行う。


「お、おはよう、ございます。フヒッ。」

彼女は竜人のルナさんだ。週に5日この図書館に来ている。異世界の書物mangaに造詣が深く意気投合。現在に至る。


しかし・・・今日もまた一段と、

エッッッッッッッ!

凝視してたら目があった。マズイですよ!



挿絵(By みてみん)



「ん?ああ、この服はアル様から頂いたんですよー。かわいいですよねー!」

いい子だ。すき。


「ふーん、ふふん♪」

上機嫌で本を選んでいる。


「前回の続き続き!」

彼女の取った本は、ジョージとアキラ。

一人の冴えない女の子を二人の美形男子が奪い合うストーリーなのだが話が進むうちに男同士に友情が芽生え、いつしか・・・。

と言う男性同士の恋愛関係を描いたBLと言うものだ。

彼女はこの手の作品を好んで読む。


「・・・。ケツもみ魔・・・。あっつあつ、ぷりっぷり・・・。イキ逃げ・・・。抜き合いっこ・・・。」

時折彼女の口から発せられる謎の言葉。

拙者も彼女の読んだmangaがどんなものかと読んだこともあるのだが、あまりにも・・・いや、やめておこう。趣味嗜好は人それぞれなのだから。


「はーっ!凄かったー。まさかみんなのいる教室であんな事を・・・。」

普通に声が出ているぞ。ローズさんは魔術書に夢中で気づいていないようだ。


「ルナ殿!声が出てますぞ。ローズさん、マナーにうるさいから、お気を付けて。(念話)」


「あっ。」

「すみません。興奮してつい・・・。(念話)」

興奮してたんだ。悶々。


はっ!?これは好機ですぞ!

「る、ルナ殿、拙者でよろしければ、その書物に関して語り合いませぬか?(念話)」

白状しよう。拙者この少女に好意を寄せているのだ。同じ趣味を持つ者であり、少女mangaに出てくる様な可憐な彼女を好きにならないはずが無いのである。


「本当ですか!?私の話に興味持ってくれる人ディクさんだけですよー。(念話)」

いや、本当はその本に興味はない。だが、彼女と話せるのなら・・・。


図書館を出て柔らかな木漏れ日が差すcafeへ。コーヒーを飲み、良い雰囲気、なのだが・・・。

「はぁ、アル様とアスモデウス様尊い・・・。ディクさんはアル様はどっちだと思います?アスアル固定がデフォだとは思うんですけど、アルアス誘い受けも有りじゃないかなと。」

何て?mangaの話じゃないの?アル様・・・姫様の事か。


「あ、有りですな。それも良いのではないかと。」

流れで返答。


「ですよねー!あー、でもアル様は基本、小悪魔受けかなあ。」

どういう事?


「アル様の配下ってビュジュアルヤバめ系多いですよねー。色んなカップリング出来て楽し・・・あっ、」

ん?拙者を見て挙動不審に。


「いや、別にディクさんは、いやディクさんだって、筋肉凄いし、何て言うか、ノンケおじさん流され眼鏡上司受けって感じですよ?」

どんな感じなのそれ?


「あっ!まだどっちか聞いてないのに私ったらごめんなさい。」

謝っちゃったよ。


えっ?拙者同性が好きだと思われてる?


「ルナ殿、拙者は・・・」


「あっ!ディクさんの推しカプ教えてくださいよー。」

遮られる。しかし、推しカプとは?分からないが、さっきの流れだとアル様と配下の名前をあげればいいのか?


「アル・・・ティガー?」

獣人はダメ?


「・・・!!」

何だ、手で口元を押さえてハッとした表情。


「悔しい!そこに気が付かないなんて。うぅ、ディクさん流石だわ!」

何が?


「でも、そうなるとガイウスさんがあぶれて可哀想ですよね・・・。」

ガイウスは狼。なるほど獣同士か。


「・・・バフォメット。」

何となく獣人、いや悪魔か、知ってる名前を挙げる。


「待って待って!バフォメット!?ヤバいヤバい!」

何がヤバいの?


「ガイバフォとか・・・マジかあ!弱肉強食CPって!どんだけよ!もう勘弁してー!」

・・・勘弁して欲しいのはこっちだ。

話題を変えなければ!


「る、ルナ殿は、お付き合いしている男性などはおられないのですかな?」

誰かと付き合っているなどと言う話は聞いた事は無いが。


「いませんよー。だって今凄く忙しくてそんな時間無いですよ。」

今日6時間BL読み耽ってたよね?しかし、これはチャンス!

拙者は恋愛mangaの主人公とは違う。ストレートに行くぞ。


「それなら、拙者と、お、お付き合いしていただけませぬか?」

彼女の目を真っ直ぐに見つめて告白する。


「へ?私ち○こ付いてませんけど?」

・・・・・・。


「な、何か勘違いをしているようですが、拙者が好きのは女性で・・・」


「は?マジで?ノンケかよ・・・期待させやがって」

期待?てか口汚いぞ。


「私、修行しなきゃなんでもう行きますね。では。」

えっ?振られたの?ちょっ!

くっ!能力発動!


【FULLMETAL・JACKET!(意識改変)】

彼女の想い人を拙者へ改変!


「待って!」


「え、アル様!?いや、ごめんディックさん。私なんで。」

混乱している。しかし、やはり姫様だったか。


「大丈夫?座って、落ち着いた方がいい。」

カフェラテを注文する。


「あ、ありがとう・・・ございます。」

沈黙。

ん?こっちをチラチラ見ている。顔が真っ赤だ。ルナ殿くっっっそ可愛いですぞ!本来姫様に向けられる好意が拙者に向いている。

これがFULLMETAL・JACKETの力だ。


「ディック様は・・・いえやっぱりいいです。」

モジモジして何だろう。まさか、告白か!?


「大丈夫、言ってみてください。」


「・・・ディック様は!はぁはぁ、アスモデウス様と、つ、突き合っておられるのですか!?はぁはぁ」

付き合う?おいおい


「いえ、拙者は誰とも付き合っていませんぞ。」


「・・・そうですか。」

なぜ、落ち込む!?そこは喜ぶ所じゃないの?その後も好きな男性のタイプは?などと、そっちよりの会話が続き・・・。


「日が沈んで来ましたね。また明日。」

図書館で会う約束をして別れる。

えっ?想像と違うぞ。なんて言うかドライ?

全然キュンキュンしないよ!?

能力は確実に作用しているはずなのだが。まあ、まだ始まったばかりだ。明日に期待しよう。


・・・どうしてこうなった?

今拙者たちはだだっ広い平地(テーブルマウンテンと言ったか?)に立っている。図書館で待ち合わせしたあと転移でここへ連れて来られた。

目の前にはデカい竜・・・ルナさんが変身した姿だ。どういう状況?


「じゃあ、今日もよろしくお願いします!」

距離を取って口を開けた。凄まじい魔力の集束を感じる。ってバカ!ヤバい!

足に魔力を流し全力で回避!


ズアッ!

魔力砲だ。遥か彼方山脈に当たり、空が赤く染まる。とんでもない威力だ。というかよく見ると周りの風景がヤバ過ぎる。この大地の周辺一帯が焦土と化している。どれだけ激しい修練を続けて来たんだ。


「よそ見厳禁。」

しまっ・・・

パァン!

竜の前足で叩かれる。ぐはっ!ガードしたが数百メートル吹き飛ばされたぞ!

腕が折れた・・・。

何だ何だヤバい!これが姫様との日常だと言うのか!?こ、殺される!


「FULLMETAL・JACKET解じ、ブベラッ!」

ごふっ!天高く打ち上げられ大量の血を吐く。肋骨が折れ臓器に刺さったか。死んだなこりゃ。能力のツケか・・・。次の人生はもっと真面目に生き・・・て・・・。



ディク・・・ディクさ・・・ん!

何だ、誰かが名前を呼んでいる。体が暖かい。


「ディックさん!目を覚まして!」

ルナさんの声。


「ディック起きなさい。あんたの体もう既に治っているわ。」

目を開けると泣きじゃくるルナさんが。


「あんたが血を吹いて倒れてるって念話が来たのよ。」

姫様・・・。そうかさっきの魔力は。


「気が付いたら目の前にディックさんが倒れて死にそうになってて!うわあああん!」

ギャン泣きだ。

・・・拙者が意識を失って術が解けたのか。


姫様が耳元で囁く。

「お前能力を使ったな?次アタシの知り合いに使ったら殺す。分かった?」

頭が飛ぶくらいの勢いで首を縦にブンブン振る。

微笑む姫様。色々な感情が入り交じり心臓が早鐘を打つ。


「ルナ、精神防壁は常に張っておかないとダメだよ?」

「ふぇ?どういう事でしゅか?」

ヤバい。今度こそルナさんに殺される。


「・・・、何でもないけど今度防壁の張り方教えたげる。・・・あと、ディック。」

ビクッ


「彼女にもう一度術を掛けてちょうだい。今度は・・・。」

拙者にだけ分かる様に小声で囁く。

いや、さっきもう能力使うなって言ったよな?・・・いや止めておこう。コロされる。

しかし、良く考えるものだ。

この改変ならルナさんは飛躍的に強くなるだろう。


ルナがアスモデウスを屈服させればご褒美にアレを生やしてあげる。三角関係だね。受けは・・・誰かな?

って何だよこのオーダーは。それでヤル気漲らせるルナ殿もどうかと思うが・・・


腐ってやがる。(BLは)まだ早すぎたんだ。

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