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絶望の果て  作者: 馨
82/103

82話 飛べ!フェニックス


MAGMAの中から現れたフェニックス。

体は炎に覆われており、こちらを睨みながら頭上を旋回している。



挿絵(By みてみん)



「アルル私がやるわ!」

道中で自信を付けたリリムが叫ぶ。ラビィは肩をすくめている。


「良いけど、ヤバめなら助けに入るからね。」


「分かったわ!見てて!」

ホウキに乗って飛び出した。


リリムを敵と判断した鳥が口から炎を吐いて攻撃して来た。ディメンションの盾でいなす。

それた炎が岩壁に当たりドロドロに溶ける。

熱量スゴッ・・・当たったらたちまち消し炭になっちゃうよ。ハラハラ。一応お互いの魔力量を測って、リリムが押し負けそうなら助けるけど。

炎の鳥なので普通に攻撃してもダメージは通らなそう。核を破壊するしかない。

リリムは炎を躱したり、いなしたりしながら核を探っているようだ。

攻撃が激し過ぎて特定に時間が掛かっているっぽい。


「何よ!コイツの核体の中を動きまくってるんだけど!」

うん、確かに尋常じゃないスピードで動いてるね。


「アタシだったら楽勝だけどね。ふふん(念話)」

煽ってみる。


「くっ、私だって!負けないんだから!」

フェニックスに突っ込んだ。

体はガードしてるみたいだけど、手を炎の中に突っ込んで・・・まさか核の掴み取り?

直に魔力を流して補足するつもりかな。無茶しやがって・・・。

フェニックスの体から炎の柱が上がり、リリムの体を包み込む。

ちょっとヤバいか?鳥とリリムの魔力量は拮抗している。均衡が崩れたら一瞬で燃え上がる。ガードするか?


「あ、あと少し、もうちょっとだから・・・(念話)」

フェニックスがマグマに突っ込む。

これ以上はいけない!

リリムを転移させようとした、その瞬間!

マグマから飛び出して来たのは・・・リリムだ!


「とったどー!!」

リリムの手には赤い結晶。遅れてフェニックスが飛び出して来た。

あっ、まだ生きてるんだ。


「ディメンション・ディスコネクト!」

スパン! パカッ

リリムが結晶を両断する。

2つになってマグマに落ちた。やったか!?

ん?


ドッパーン!

マグマから火の鳥が?鳥は2匹いた!?

いや、核が分裂して増えたパティーンだ、これ。

リリムは!?

あっ、鼻血出して落下してる。魔力切れか。抱き抱え保護する。何だろニヤニヤしてる。焼き鳥食べる夢でも見てるのかな?


「師匠、次は私が。」

ラビィもヤル気だ。


「うん、気をつけてね。」

すぐさま火の鳥Aに接敵。


「メテオ・バースト・ストリーム!」

ゼロ距離からの剣戟の嵐、点では無く面で制圧する作戦か。しかし、


「くっ!」

核が粉々になった事で鳥が数十匹に増えたけど?作戦失敗しちゃったね。


「師匠、すみません!降参です!」

おバカ!


「やれやれ、レイピア貸して。」

また、レクチャーしてあげるか。

ビュン ビュン

レイピアを握りフェニックス数十匹を睨む。


コアを叩いても駄目なのは、ディメンション使えば分かるけど、あっ使えないんだっけ?」


「はい・・・。」

シュン・・・

耳が垂れている。あっ、ごめん。


「コアの中で光ってるとこ刺せばいいんだよ。魔力で探ってみ。」


「し、しかし師匠あの速度を捉えるのは次元魔法でも使わなければ・・・。」

んなこたぁない。


「集中してコアの光を探ってごらん。」

コアを叩いても分裂したのは光を捕らえていなかったせいだ。


「は、ハイっ!・・・・・・くっ・・・あっ!見えました!」

ぐう。

お腹が鳴った。

ぐうううう。

・・・・・・。


「ち、違うから!い、今のは集中し過ぎて魔力の消費が激しいせいで!だって朝食べてきたし!だから違うの!うぅ・・・」

どしたん?


ほっといて集中。76匹か、増やし過ぎぃ。成程、コアが高速で動いている。さらにそのコアの中の光を捉えるのは今のラビィにはキツいかな。

探っている間も容赦ない攻撃は続く。今アタシはディメンション、魔力を切って基礎戦闘力だけで戦っている。ナメプ?

いや、これでも余裕過ぎ。easy easy


「う、うそ、師匠から魔力が全く感じられない!?魔力ゼロで、あの嵐の様な炎をかいくぐっているの!?」

数十匹の鳥が炎を吐き空間全体が灼熱地獄と化す。


「ラビィ、ディスペア流の片鱗を魅せるから、今から魔力全開で見てなね。(念話)」


「は、ハイ!師匠!」


「シューティングスター。」


パアアアアアアン

技名を言うと同時にフェニックスの残滓、光の粒子が暗い天井を明るく照らす。


「ラビィ見えた?」


「・・・・・・。」

ぽかーん

口を開けて固まっている。

まあ、そうだよね。あれが見えたら大したモノだわ。

さて、


「・・・。」

1羽残った鳥を見る。


「こんにちは、いや、こんばんはかな?アタシはアルル。冒険者よ。あなたのお名前、聞いてもいいかな。」


「・・・フェニックス。」

あはっ、やっぱり喋れるじゃん。


「続ける?」


「・・・止めておこう。我の負けだ。」


「ありがとう。動物虐待とかアタシの趣味じゃないから助かったよー。」


「動物・・・。」


「それじゃあ・・・あのね・・・配下になってくれないかな?もちろん今まで通り普通に暮らしてていいよ。呼んだら来てくれればいいから。」


「我を配下にだと?・・・断ったら?」


「別に、残念ってだけだけど。」


「・・・そうか。・・・先程の技、見事であった。その礼として承ろう。」

あら、ホントに。


「うれしい!ありがとう。早速呼び名考えなきゃだね。フェニックスなんて言いにくいし」


「いや、我を呼ぶ時はフェニックスと・・・」


「フェニックスだからフェニーかな。」


「ふ、フェニー!?・・・。」


「フェニーは人型になれるの?」


「フェニーで決まりか・・・。人型にはなれん。サイズ感の変化なら可能だが。」

どこかで聞いた様なワードだね。


ぽわん


次の階層へ導く石碑だ。


「じゃあ、何かあったら呼ぶから来れたら来てね。」

決して強制しないのがアタシStyleなのだ。


「ふ、直ぐにでも駆け付けよう。」

頼もしいじゃないか。どこかの種馬とは大違いだよ。


未だに放心状態のラビィと鼻血を出して寝ているリリムを連れて次の階層へ。



ーーー 8761階層 花の楽園 ーーー


一面に広がる花畑。天国かな?

「ラビィ?おーい。」

反応無し。そんなに衝撃的だった?

目の焦点合ってないけど大丈夫かな、この子。


「にゃーん。」

ん?カイネどした?座ってじっとこっちを見てる。

外に出たいのかな。ここなら・・・いや待て待て、この状態の2人をいつまでも置いておけない。


「ノエル、ラビィとリリムをアタシの部屋に転移させるから面倒見てあげて。いつかの山羊みたいに変な事しちゃダメだよ。(念話)」

あの子すぐ縛るんだから。


「・・・ん。(念話)」


「カイネも一緒に送ったげる。」


「にゃん。」

え、今笑った?気の所為だよね?


転移させる。


さて、まだ時間あるし攻略つづけようかな?

久しぶりの1人旅。ちょっと本気出して見ようか。新記録狙っちゃうか?魔王もいつまでも放置しておけないしさ。



ーーー sideカイネ ラビィ自室 ーーー


「おい兎、いつまで呆けておる。」

スパパパパン

平手打ち。

「はっ!私!鳥と・・・鳥は!?」


スパパパパン

「落ち着け。もうヤツが倒している。」


「そ、そうだ。師匠が一撃で・・・。凄い、やはり私には決して届かない遥か高み。」

ブツブツ言い出した。


「いい加減現実に戻って来い。あの程度なら私にも出来るぞ?」

アルの奴本気では無かったな。魔力を込めずにあの動きか。美しかった。ただただ感動した。ラビィがこうなるのも分かる。


「!?カイネ様にはあの技が見えたのですか?」


「ああ、75回、1つのミスもせずコアの中心を打ち抜いておったわ。」


「そ、そんな・・・私には何も見えなかったのに・・・う、嘘だッ!!」

コラ!大声をあげると!


ぽわん


シュン


私が猫になるのと同時にメイドが転移して来た。危ない!こいつ、ノックするという常識は無いのか?


「・・・大きな声・・・したから。」


「あっ、ごめんなさい。少し取り乱しちゃって・・・えへへ」

ラビィが涙目になってるぞ。そんなに悔しかったのか。昔から負けず嫌いだったからな・・・。


「・・・ん。」

メイドがハンカチを差し出す。悪い奴では無いのか。


「あ、ありがとうノエルさん。」


「・・・何か・・・あれば・・・呼んで。」

シュン

消えた。


「カイネ様ごめんなさい。私・・・ダメダメですね。はは・・・」

力無く笑う


ぽわん


ラビィを抱きしめる。

「アルも言うていたが否定的な言動は控えよ。安心するが良い。お前はもっと強くなれる。今の気持ちを忘れる事が無ければな。」


「・・・優しいカイネ様・・・気持ち悪い。」

ふん。このウサギには人参では無く、お仕置きが必要だな。

下腹部に魔力を流し込みたいところだがメイドに気付かれる。ここで引くとしよう。

アル、今日は中々楽しめたぞ。

ふふ。



ーーー sideリリム アルルの部屋 ーーー


目が覚める。見知らぬ天井。

最後の記憶が曖昧だ。私は勝ったのか。


「・・・ん!何これ動かない。」

魔力切れか?やはりディメンションて燃費が悪いんだなあ。


「いやいや、リリムが雑な使い方してるだけだから。」

アルル!いたんだ、気付かなかった。


「てか、私の心読んだわね!どんな魔法よ!教えなさいよ!」


「あはは、顔見てたら、そうじゃないかなって思っただけよ。」

頭を撫でられる。ふあぁ。イイ・・・それにこのベッド、アルルのいい匂いが。


「良く寝てたね。もう6時間くらい経ってるよ。」

そんなに!?


「え、アルルずっと傍に居てくれたの?」


「あー、いや1人で攻略してた。結構進んだよ。」

何だ。安堵と残念な気持ちが入り交じる。


あっ、そうだ。

「・・・あのね。前にアルル・・・人が変わったみたいな時があってね、こっちに来たらその辺の事話してくれるってアルル?に言われたんだけど。」

何だかよく分からない感じになっちゃった。分かるかな?


静寂。どこからか聞こえる鳥の声が良く響く。


「・・・そうね。アタシにもよく分からないんだけど、記憶が曖昧になってた時期があってね。リリムが会ったのはその時の・・・もう1人のアタシ?だと思う。」

!? 凄い納得出来た。腑に落ちたと言うか心にストンとハマった。


「やっぱり!そのもう1人のアルルが出てから前の不安定?で危うい、怖い感じが無くなったもの。」

本当に怖かったんだから。アルルの中には一体何人いるのよ・・・。


「あー・・・そんなに怖かった?」


「うん、すごく。でも良かった、もう大丈夫そう。」


「・・・心配かけてごめん。」

ペコリ


「もうホントどれだけ心配・・・あっ!ち、違うから!べ、別にあんたの事なんて全然気にしてないんだからね!」

か、勘違いしないでよね!


「そ、それより1人で攻略続けてたって言ってたけど、どれくらい進んだの?次の階層クリアしちゃったとか?」

いやアルルなら3層くらいは行ってるか。


「9000階層まで行って来たよ。もう少し行けたけどキリが良かったから。」

は?今何て?


「なかなか手応えのある奴もいたよ。配下にしたから今度見せたげる。」

何言ってるの?9000て・・・。私が1層攻略するのに数年掛かったのに、一日、いや数時間で200層以上攻略したって事?冗談でしょ?

頭が混乱して来た。


「へ、へー、迷宮とか迷わなかった?」

ディメンションでルートは分かるにしてもトラップや回り道で時間はかかるはず。


「ああ、壁とかぶち抜いて最短で行ったから。フロアボスたちめっちゃ驚いてたよ。」

でしょうね!

もう攻略じゃないじゃん!

てか、迷宮の壁って壊せるの?


「やっぱり、アルル怖い・・・。寝るわ!おやすみ!」

落ち着くために少し寝よう。


「ふふ。おやすみなさい。」

頭を撫でられ暖かい魔力が体に流れてくる。もやもやは直ぐに消え私はあっさりと眠りにつく事が出来た。



ーーー sideフェニックス ーーー


ジャリ

足音。

「誰だ。」


「誰だじゃねえよ。てめぇ、敗北()けたな?」

現れたのは少年、いや青年か。


「ああ、完膚無きまでにな。」

一遍の悔いなし。


「何、満足気な顔してんだコラ。」


「お主では勝てんぞ。」

我とやった時のままではな。


「はっ!てめぇが俺を測るんじゃねえよ。俺の限界は俺が決めンだよ。」


「珍しくイライラしているな。どうした?」


「ここに来ンの数年ぶりだぞ。珍しいもクソもあるか。それより俺が留守してる間に縄張り潰したバカがいンだわ。そいつを狩りに行く。手ぇ貸せや。」


「ふふふ。我に頭を下げてまで頼むとは、それ程の相手か。」


「誰も頭なんて下げて無ぇだろ、ボケてんのか?つーかよ、てめぇは俺のモノだろ。」


「最近、主を変えたのだよ。すまんな。」


「ああ!?まさか、あの例のガキか?」


「さあてな。」


「ちっ、それじゃあ前に貸した借りを返して貰う。それならいいよな?今回だけ付き合え。」


「ふ、そう来たか。・・・まあ、良いだろう。」


「決りだ。にしてもここは辛気臭えなあ。」

上を向く。まさか。


「おい、やめ」


ズアッ!

炎の龍が天へと昇る。

後には壁面が赤くドロドロの巨大な穴が・・・。

上には青空が見えている。


「はっ!見晴らしが良くなったじゃねえか!」


「まったく、お主は、相変わらずだのう。」


「行くぜ!フェニー!」

フェニーか・・・ふ。

アルル・・・だったか?同じ様に呼ばれた時には笑いそうになったわ。

背中に乗る青年。やれやれ。


ギュオオオン

穴を抜け上空へ舞い上がる。

と、丁度山脈の間から朝日が昇るところだった。


「Yeaaaaaaah!最高の景色だぜ!」

子供の様なはしゃぎっぷりに思わず笑みが溢れてしまう。


しかし支配エリアが潰されたと言っていたな。あの強力な配下を倒したと言うのか。

それに我を倒した冒険者アルル。


ディスペアが変わり始めている。いや、巨大な渦に飲み込まれた、のか。どちらにせよ、これまでの退屈な平穏?は捨てなければなるまい。

はしゃいでいる青年を背に乗せ思う。


お主の目には何が見える。

この光差す青空の様な天国か、それとも下に見える、あの沸滾る赤黒い地獄か。

お主には何が見える?


焔帝キースよ。


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