79話 世界ネコ歩き ☆挿絵あり
部下と別れた私はラビィに会いに8296階層へやってきた。気配を消しているがこの格好は目立つな。集落付近で立ち止まる。
【ストレイ・キャット】
ぽわん
黒猫へと変身する。
これは魔法では無く能力だ。なぜかこの姿にだけ変身出来る。
この姿になると魔力は使えずただの猫となる。
人目につかない様に物陰に隠れる。
ん?いい匂い。魚の焼ける匂い。嗅覚が鋭くなったせいか匂いに敏感に反応してしまう。
ぐぅ。お腹が減った。
猫に変身すると魚への執着と言うか渇望が強くなる。
網の上で魚やエビが焼かれている。くっ!衝動が抑えられない。やるか?
店主が余所見をしてる隙に・・・。
シュバ!
ジャンプして焼き魚を咥える。熱っつ!!前足が網に当たった!
私は熱に対する耐性を有しているがこの姿だとそれらの耐性は全て消えてしまう。
「あっ猫!」
マズイ!見つかった!逃げなくては!
「んにゃん!」
秒で捕獲される。
「ママ!猫がうちの魚咥えてるよ!」
店主の娘に捕まった!逃げなくては。
「フー、フシュー、にゃあ!」
がっちり掴まれていて振り解けない。
「あら、あら、ホントだ。かわいい猫ちゃんだねえ。お腹が空いているんじゃないかい?」
「そうかも。」
娘が地面に落ちた魚の土を手で払い顔の近くに持ってくる。
ふざけるな!落ちた物を私に与えるとは無礼な!
ガツガツ ガツガツ!
むしゃぶりついてしまう。くそう!本能を抑えられない!だからこの姿になるのは嫌なんだ!
「やっぱりお腹すいてたんだねえ。凄い勢いでがっついてるよ。あはは。」
くそう!くそう!ガツガツ ガツガツ
魚を二匹食べると少し冷静になった。前足で顔を洗う。
早くラビィに会わなければ。
「お腹一杯になったかな。ほれほれ。」
娘が背中や首を触ってくる。
くっ!早くラビィの元へ!
「にゃ〜。んにゃん。ゴロゴロ。」
くそう!体が言う事を効かない!ゴロゴロ!
「サーシャ、いつまでも猫と遊んでるんじゃないよ。お客さん来てるんだからね。」
「ごめん!今行くー!猫ちゃんまたね!」
にゃ!?もう終わり?もっとして!って、ちがーう!ラビィだ。彼女の下へ行かなくては。
しかし人が多いな。祭か?
物陰を渡り歩き様子を伺う。魔力探知が使えない為目視、匂いで確認しなければならない。あのウサギはどこだ。
「あー!猫だ!」「にゃんこつかまえた!」
んにゃ!またか!子供に捕獲される。
やめろー!撫で回すな、あっ、もっと。
「二人ともぉ、早く行くよー!」
「今いくー!」「ねこちゃん、バイバイ!」
解放された。
背中が痒い。ゴロゴロ。地面に体を擦りつける。ふう。前足で顔を洗う。ふああ、あくびが出た。眠い。長椅子の下で丸くなる。うとうと。ぐぅ。
はっ!?いつの間に私は、いかん。あれ、何しに来たんだっけ?あっ、海老の焼けるいい匂いがする。あっちだ!
駆け出した途端何者かに首を掴まれた!
「にゃあ、にゃあ。」
「あれ、この猫・・・やっぱり。」
抱き抱えられ部屋に連れて行かれる。
「カイネ様、私です。どうしてこんな所へ。」
「んにゃん?にゃーにゃー。」
「あー、これ、完全に猫になってるわ。えと、覚醒させるには、ちょっと待っててね猫ちゃん。」
出て行った。ん?いい匂い。窓が空いて隙間がある。
外へ出て匂いの元へ。台の上からいい匂いが立ち上っている。台の下へ潜り込む。どうやって獲物を手に入れようか、と考えていると・・・何だ動く気配が。虫か?
黒い物体が左右に揺れている。目が離せない。飛びついて捕まえる。
「ひゃう!?」
声が聞こえた。何だこれ、ぷにぷにしてるぞ。押してみる。気持ちいい。
ぷにぷに ぷにぷに
逃がさない様に捕まえて・・・舐めてみる。
ペロペロペロペロペロペロペロ
「イックうううううううう!!」
動かなくなった。つまんない。
外へ出て歩いていると首を掴まれた。
「にゃー、にゃー。」
「もう、探しましたよ。何抜け出してるんですか。戻りますよ。」
抱きかかえられ連れていかれる。
「みかんの皮、これでいいのかな。」
何かを近づけてくる。匂いを嗅ごうとすると、
プシュ
「にゃ!?んにゃ!クシュン!」
ぽわん
変身が解ける。
「ここは・・・」
私は何を。
「良かったー、カイネ様、お久しぶりです。分かりますか?ラビィです。」
ラビィ?なぜここに・・・あっ!
そうだ、私はラビィに会いに来て、猫に・・・。
「ちょ!カイネ様!気配だだ漏れだから消して消して!」
はっ、そうか!?
気配を消すと同時にノックが。
「カイネ様!猫!猫!」
くっ、またか!
ぽわん
ガチャ
「・・・今・・・誰か・・・。」
メイド服を着た少女が立っている。
「に、にゃーん。」
前足で顔を洗う。チラッ。背中を床に擦り付ける。
猫アピールで誤魔化す。どうだ?
「ここ猫ダメでしたっけ?」
「・・・ん・・・別に・・・。」
パタン
誤魔化せたか?
「もう、冷や冷やさせないで下さいよ。」
抱きかかえられ頭から背中に掛けて撫でられる。きもちー。
「分かってますよ。バフォメットと師匠の戦いが知りたいんですよね。」
ベッドに座るラビィ、太ももに乗せられ、撫でられる。
「カイネ様、スーパーノヴァって技知ってますか?」
「にゃん?」
知らん。
「なんか、ディスペア流の奥義らしいですよ?」
!!?
にゃんだと!?
「にゃー!にゃー!にゃにゃん!」
おい!ラビィ!詳しく聞かせろ!
「ちょっ、落ち着いて。何言ってるか分からないですって。」
くっ、そうか、もどかしい。
変身を解けばいいのだが、さっきの女が気になる。今も監視されていると思っていた方がいいだろう。
それからラビィから聞かされた話は、とても信じられないものだった。私はディスペア流を極めたと思っていたが、まだ上がある・・・だと!?
直ぐにでも会ってみたいが、今はまだ時期尚早か。はやる気持ちを抑え、膝の上で丸くなる。
ーーーーーー 数日後 ーーーーーーーーーー
その機会は意外と早く訪れた。
今日は八柱のエリアで話し合いが行われると言う。主要な人物が集まるのは間違いない。ラビィの飼い猫として、しれっと参加しよう。
ラビィに抱えられ入室しようとするも、
「・・・ペット・・・ダメ・・・。」
くっ!また、この女か!
「カイネ様、話し合いが終わるまで大人しく部屋で待ってて下さいね。」
床に下ろされる。
「にゃーん・・・。」
扉が閉められた。戻るか。
ふと、通路を見ると窓からさす光が床へ伸びている。光の当たっている床へ座ると暖かい。
ゴロゴロ
背中を床に擦り付ける。座って顔を洗うと眠くなって来た。丸くなってうとうと。
ガチャ
ビクッ!音のした方を見る。サキュバスの少女と目が合う。
ラビィから聞いていた特徴とそっくり!彼女、いや彼がアル・ディライト・・・か!?
姿が消えたと思った瞬間には抱きかかえられていた。体中を撫で回される!
何!いきなり!ちょっと、離して!痛くはないが、がっちりホールドされている。
「にゃー!フシューフー!」
爪を立てて威嚇する。離せ!この!
もがいている、その時、アルから魔力が流れ込む。体が光に包まれ、
「にゃ!?・・・ふにゃあぁ・・・」
何だ、この・・・暖かい魔力は。凄い・・・安らぐ・・・
「あっ!」
ラビィだ。腕が緩んだ隙に床へ飛び降りる。
ラビィに隠れた後、窓から外へ逃げる。
一目散に庭を駆け抜ける。
何だ!?さっきの魔力は!あの全てを委ねたくなる圧倒的な安堵感。心地良かった。配下を増やしているのも納得だ。
私も・・・いや、違う!これは猫になって耐性が無くなっているせいだ。おそらく奴の能力は魅了だろう。そうだ、そうに違いない。
城を離れ、森へ入る。ここまで来れば大丈夫だろう。
ガサッ
!?
草木をかき分け2メートルはあろうかと言う巨大な蠍が現れた。尻尾を上げ私を狙っている。ヤバい!
尻尾を伸ばしてくる!
ぽわん
「くっ、だから猫になるのは嫌なんだ。」
切り刻まれ塵になった蠍が光り消えていく。
「アル・ディライトか・・・。」
八柱を倒したら次はお前だ。フフフ
また会おうぞ。
転移。




