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絶望の果て  作者: 馨
76/103

76話 カイネ     


ドンッ! 

「にゃ!」

「おっと、姉さんごめんよ。」

男の手には黒いショルダーバッグが。ひったくりだ。相当な早技。


男は足早に路地裏へと入って行く。

「へへっ、チョロいぜ、さて何が入っているかな?ん?何だこれ?何も入ってない!?いやそれよりこの中・・・空間?」


「ごめんね。そのバッグアタシにしか使えないんだ。」

壁の上から男を見下ろし答える。


「まさか!?これインフィニティ•バッグか!?」 

え、何て?


「知らないけど、返してくれないかな?」


「・・・これは伝説級のマジックアイテムだぞ。売ればとんでもない大金が入ってくる。やったぞ!もうクソみたいな仕事をしなくてもいいんだ!」

ありゃ、聞いてない。


「あのー、もしもーし?」


「ああん?てめぇ、まだいたのか?悪いがこのバッグは俺がもらう。痛い目に会いたくなかったら消えな。」

男から魔力の渦。


「バカだなあ、アタシにしか使えないって言ってるでしょ。」

バッグを転移。


「あっ!?てめえ何しやがった!返せ!」

アタシのだから!

男が飛び上がり向かって来た。目の前に迫る拳。魔力を乗せた渾身の一撃。

何こいつ、ヤる気じゃん。女の子グーで殴ろうとするなんて酷くない?


華麗に躱す。

何度も殴り掛かって来るが当たらない。

「くそっ!避けてんじゃねえぞ!」

さっきから何言ってるの?


「おい、俺だ!上等の獲物を見つけた!囲むから早く来い!(念話)」

仲間を呼んだようだ。


羽の生えた魔族が次々と飛んできて、あっという間に5人に囲まれた。

「もう逃げられねえぞ。大人しくそれ渡して消えな。」

「いやこの女も攫っちまおうぜ。奴隷商に高く売れるぞ。」

「ああ、俺らで味見してからな。ヒヒヒ。」

「こいつ、サキュバスだろ?エッッッッ!」

「早くアジトに連れてこうぜ!」

清々しい程のクズ共だな。


「どいて。」

殺気を浴びせる。


「おい!何言って・・・。」

バタッ。

男たちが泡を吹いて倒れていく。

「な、何者だお前、その気配!ヒィィィィィ」

腰が抜けて動けないようだ。失禁している。


「アタシ?この街の領主だけど?」



ローズマリーが統べるフロア【シャンテル】

3740階層の飛地にあり、他のフロアに比べると面積は狭いが広大な森林を擁し街もある。

名ばかりの領主となったアタシは自分の治める領土の視察(散歩)に来ていた。

バフォメットの侵攻で建物は倒壊、半壊多数、瓦礫は散乱している。

そう言えばバフォメットだが祭りの後にアタシに忠誠を誓ってきた。スーパーノヴァが効いたのかな?憔悴し、ブリーフ一枚で跪く姿に嗜虐心が煽られたけど、何とか耐えた。

山羊には復興大臣を任せよう。


さて、街の光景だが住む家を失い路上で寝ている者が多数。殴り合いの喧嘩をしている者たちも、ちらほら。少し人気のない場所に入れば強盗や人攫いに合う。

あはwアタシにぴったりの街じゃん!・・・はぁ。

もともと治安は悪かったらしい。ローズの話だと野盗のアジトに人々が集まり村を形成し今の形になったようだ。そりゃね・・・襲われますよ。

元いた世界も似たようなものだった気がする。弱肉強食。強ければ生き弱ければ死ぬ。

それが普通だと思うが、自分が領主となると話は別だ。

領民が先の見えない暗闇の中を当ても無く歩いてるとか嫌じゃない?

さっきアタシに絡んで来た連中だって金さえあればあんな事していない筈だよ。環境は人を変える。

この街には仕事が無さすぎる。復興ついでにドワーフに建築を教えてもらうか?あいつらもこっちに来るみたいだし丁度いいかも。

それに試してみたい事もある。

名ばかりの領主だけど暗躍させてもらうね。

アタシは早速モンドに念話し計画を話すのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーー




「よく耐えたが、これで仕舞いじゃ。」


ザスッ!


膨大な魔力を込めた会心の一撃が決まる。


「がふっ・・・。」

巨体の大男が血を吐き倒れる。胸の中心には長刀が突き立てられている。

光が男の体を包み泡となって消えた・・・。

愛刀を抜き血を払う。



挿絵(By みてみん)



「二人目も呆気なかったのう。八柱などと大仰な名を冠しているがこんなものか。」

着物を汚す事無く勝ってしまった。


「カイネ様。間諜スパイからの報告がありました。バフォメットが敗れたようです。」

配下の女パメラが話しかけてくる。


「ん?奴は八柱の一角を仕留めたと言っていなかったか?」


「ハッ!その後例のイレギュラーにやられたようです。バフォメットは服従を条件に生かされています。」


「ははは。服従とな、やはり口だけの小物であったか。」


「いやはや、全くですよ、。あんな能力にかまけたザコがカイネ様と同列に並ぶとはあたしもムカついてたんですよー。最高にスカッとしましたよねー!あははは!ざまあ!って感じですよー。」


「パメラ。お前、以前バフォメットにケンカ売って敗れたよな?腕を折られた程度で命乞いした奴にバフォメットを笑う権利は無いと思うがのう。」


「そ、それは・・・も、申し訳ありません!」

顔を青くして謝罪するパメラ。まだまだ子供だ。


「ヌシに足りぬのは相手への敬意よ。上を目指すなら敵であっても一定の敬意を示せ。」


「は、ハッ!以後気を付けます!」


「バフォメットとそいつの戦闘を詳しく聞きたい。間諜を呼び戻せ。念話は奴に悟られる危険があるからの。」


「そ、それが、私もそう言ったのですが・・・もどらない、と。」  


「なぜ?」


「そ、それが、た、高みを見た、新たな師匠について行く。死にたくなければ構うな、対立するな、と言っておりました。」


「あの兎め。」

素質があるとみて鍛えてやった恩を・・・いや、今は何も言うまい。

なにせ龍王、モロク、バフォメットを破り配下に加えた男だ。まさか、あの無愛想な弟子まで籠絡するとは、実に興味深い。


八柱を潰して行くつもりだったが、どうする?イレギュラーに会いに行くか?・・・フフ、止めておこう。

私は楽しみは後にとって置くタイプなのだ。だが話だけらでも聞いておくか。


「一端本陣に戻った後次の標的の住むエリアへと向かう!お前たちは先に行っていろ。私は少し寄るところがある。」


「カイネ様!私も同行いたします!」

パメラがそんな事を言いう。


「私用だ。」


「し、しかし!きゃっ!?」

パメラの胸を乱暴に握りしめる。


「くどいぞ。」

揉みしだく。


「!?か、カイネ様、だ、ダメです!はぁはぁ、部下が見ている前でこんな、あっ、あっ、いや」

真っ赤になって喘いでいる。


「みんなが見ているぞ、恥ずかしいのう。イッてしまうのか?ほら、遠慮は要らんイケ。」

パメラの耳に顔を寄せて囁く。


「し、しゅごいいい!か、カイネ様の魔力があ、そこに流れ込んで、はぁはぁ、あっあっあっイク、イク!イクうううう!」


痙攣して倒れてしまった。

調子に乗った罰だ。


それじゃあ私自ら弟子(いや元弟子か)の元へ行って見よう。どんな話が聞けるか楽しみだ。フフフ。


八柱の根城の迷宮は上にあった山脈ごと消し飛び空には満天の星空が見えている。私の笑い声は強く吹く風にかき消された。

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