71話 Dispair Revengers
「次はテメェとこの女か。」
バチーン!
「ンーッ!」
また、叩かれている。やれやれだ。
バフォメットが女の上から降りる。
口に咥えさせられたボールを外す。
「ぷはあ・・・ふぅーふぅー。」
バフォメットを睨み付けている。
「ああん、んだよ、その目は?お前の相手はあの女だ・・・ぞ!」
スパアアアン!
「くっひいいいいいい!」
女性を叩いて嗜虐心を満たしているようだが、見るに耐えんな。
しかし八柱でも痛覚耐性の無い者もいるのだな。
ヒール。
女性に掛けてやる。痛みは無くなっただろう。
そしてポーチから外套を出し投げ渡す。
「これは、何のマネよ?」
念話だ。
「見るに耐えなかったものでね。早く羽織りなさい。それにしてももう普通に話せるだろう?」
「別に意味は無いわ。・・・それより戦うんでしょ?言っておくけど負けてもあなたの奴隷になんてならないわよ。」
外套を羽織った彼女が念話で答える。
「ふむ。では、そうだな。私が勝ったら、さっき言ってた天界の話について聞かせてくれないか?」
「・・・いいわよ。・・・あなた本当に人が変わったようね。」
「ふふ、否定はせんよ。」
「おしゃべりは終わったかよ?コソコソ念話何て使いやがって。さっさと始めろや。」
「いくわよ!」
「待て待て、始める前は名乗るのが常識だろう。私は、アル・ディライト。人間の冒険者だ。」
「・・・調子が狂うわね。私はローズマリーよ。」
「良い名だな。では試合おうか。」
「・・・・・・・・・。」
ローズマリーが一瞬動揺するもホールの天井に巨大な魔法陣を形成。
「ナイト・ウォーカー!」
魔法の鎧と剣を見に付けた闇の群勢が現れた。数は20。顔の肉は朽ち果て白骨化している。一体一体の魔力も凄まじい。
彼女は召喚術師か?
闇の兵士たちが襲ってくる。連携が取れて居て非常に良い動きだ。
頭を蹴り飛ばしてみる。頭部を失っても的確に攻撃してくる。なるほど。
「こいつらは無敵よ!切り裂かれるが良いわ。」
無敵ならお前はなぜ、山羊の椅子になってたんだ?
ディメンションで骸骨共の核を割り出しDDで破壊する。20体の兵士は光の泡となって消えた。
「やるねえ。俺は全て消し飛ばしたがそう言うやり方も有ったか。」
バフォメットが何か言っている。
「次。」
召喚術師ならもっと強力なモンスターを使役している筈だ。
「くっ!コイツは魔力消費が多いから使いたく無いんだが、来い!エンシェントドラゴン!」
結界内の高さギリギリのドラゴンが出現したが、動けるのかこれ。
「こんな狭い所に呼び出しおって、我も暇では・・・」
ザンッ!
光の泡となって消えた。
核を潰せば簡単に消える。
「ああああ!!くそう!くそう!なんで!本当は私の力はこんなものじゃないのに!」
涙目だ。念話で愚痴っているぞ。
「エリア魔法、いや大規模儀式魔術だったかな。お前の得意分野は。」
彼女の魔力量なら数万の闇の群勢を生み出せるだろう。
「なぜ、知ってるの?・・・そうよ!こんな狭い所じゃ力の一欠片も発揮出来ないわ!」
「やれやれだ。一流の魔術師はステージなんて選ばずとも実力を出せるものだ。まだまだ修行が足りんな。」
「そ、そんなの・・・言われなくても分かっているわ。」
悔しそうな顔をしている。
「このくらいの空間でも効果を発揮する術は幾らでもあるぞ。後で教えてやろう。魔術書は腐る程あるからな。」
「ほ、本当に!?」
「ああ、お前、いやローズが学びたければ助力は惜しまんよ。もっと強くなって私を楽しませてくれ。ふふ。」
「・・・あなたは、本当にあの方の言ってた通りの人ね。めちゃくちゃだけど・・・面白い!エターナル・ナイトメア!」
精神汚染系は効かんぞ。
ん?これは・・・。
ズオオオオオオオオ!
暗闇が降りてくる。結界内が闇に包まれる・・・様に見えてるだろうが、内部は普通に明るい。
「隠蔽が目的か。」
念話で話す。
「勿論デバフの効果もあるわ。あなたには全く効いてないみたいだけど。」
「これを渡しておきたくて。」
ん?次元の穴に手を入れて何かを取り出したぞ。
指輪だ。
「嵌めて魔力を通してみて」
魔力を通すと光の筋が現れた。
「その光は魔王様の居場所を指し示しているわ。」
「私に魔王を救出しろと?」
「最初あなたと話した時はこんな事頼む事になるなんて想像も出来なかったわ。でも今は違う、確信したわ!あなたにしか頼めない。お願いします。魔王様をお救い下さい!」
跪き頭を下げて懇願している。
まあ、別に良いが、あの魔王にこんなにも人望があったとは驚きだ。
魔王の救出か。面白そうだ。
「顔を上げなさい。私はね、魔王を倒してこの世界から元の世界に戻る旅をしていたのだよ。しかし、ふふ、人生とは本当に儘ならないものだ。良いだろう。承った。」
「あ、ありがとう!ありがとう!」
手を握りしめ涙を流して感謝の言葉を言っている。彼女に取って魔王とはそれ程大切な人だったのだろう。
「彼女が拐われたのは私の責任です。あんな男に心を許さなければ・・・!魔王様の事、宜しくお願いいたします!」
そう言うと、ナイフを取り出し胸へ突き刺そうとする。
トンッ。
首の後ろに手刀を入れ気絶させる。
「阿呆、魔王を助けてもお前が死んでたら意味ないだろうに。責任なんて感じる必要ないんだよ。」
「ノエル、今から私の部屋に女性を送る。精神的に少々不安定な所があるようだ。見ていてもらいたいのだが頼めるかね?」
「・・・アルル様?・・・ん・・・尻尾・・・触らせてくれるなら・・・」
交換条件か。
「ああ、構わないぞ。では頼む。」
ローズマリーを部屋へ転移させると同時に床を叩く。
ドオオオオオンッ!
魔法と障壁は消し飛び城に深刻なダメージを与える。
「あん?女はどこ行った?」
バフォメットが聞いてくる。
「消し炭になったよ。」
「嘘臭えなあ、けどどうでも良いわ。俺とお前の戦いが全てだしな。」
ニヤッと不気味に笑う。
「場所を変えようか。丁度いい舞台を知っている。」
あそこは見晴らしもいいしラストバトルのステージに丁度良いだろう。
「ああ、構わないぜ。」
二人で転移しようかとも考えたが、いい機会だ。ここにいる全員連れて行こう。
4120層へ転移。
ビュウウウウウ
風が強く吹いている。
ここは地上5600メートルのテーブルマウンテンの中心だ。テーブルマウンテンとは地盤のやわらかい部分が風雨で削り取られ、固い地盤だけが台形状に残った山の事だ。
地面とギャラリーのいる場所にシールドを張る。
ここでローズマリーとヤりあってみたかったな、さぞ盛り上がった事だろう。
「準備はいいか?」
奴が私に聞いてくる。
「まずは名乗らせてもらう。私はアル・ディライト、冒険者だ。」
「ああ、そうかい?でこれから死ぬ奴に名乗って何の意味が?」
「お前が死んだ時私の魂に名が刻まれる。」
「そりゃ光栄だね。」
沈黙。名乗らないか。名を知っていても本人から聞かなきゃ意味がないのだが。
「死んでも名乗らせてやる。」
「ハッハーッ!やってみな!」
奴から空間の広がりを感じる。一応避けておくか。
距離を詰めてきた。やはりあの空間に入れたいらしい。 試しにD Dで攻撃してみる。
何の変化も無いな。
ズパンッ!
右腕の肘から先を切断された。何だ?ディメンションには何の変化も感じられ無かったが・・・。
ズパンッ!
今度は胴が切られる。
ふむ、フェリドの技に似たようなものがあったな。だがディメンションで知覚出来ていた。今回は全く分からん。
ディメンション・モード・ステルス
そして、奴の後方へ転移。
完全に見失った筈だ。 D Dで奴を攻撃する。
ズパンッ!ズパンッ!
片腕と側頭部が切られた。
なるほど、あの空間か。あのエリアの物に攻撃を加えると、その攻撃がそのまま帰って来るのか。攻撃を受けた方はピンピンしている。空間魔法の亜種か?
「おい!姿を見せろよ!ビビってんじゃねえぞ!」
さて、どうしたものか。
魔法にしろ異能力にしろ、使えばMP的なものは減って行く筈だが。
取り敢えず攻撃しまくって様子を見るか。
D Dを連射する。
ズババババババババババッ!
体が切り刻まれまくる。なかなか愉快な体験だ。離れたパーツは生えたりくっ付いたり目まぐるしく変わって行く。
奴の魔力量は・・・変わらないな。
MPに影響はないのか。それとも燃費がいいだけなのか。
シンプルにぶん殴ってみるか?奴のエリアに侵入。正面から顔面を思いっきりぶん殴る!インパクトの瞬間魔力、闘気を爆発させる!
ドゴォォ!!!
「かはっ!」
自分の攻撃を自分の顔に叩き込む。信じられないくらい重くて鋭いな。ガード張って無ければ頭部が吹き飛んでるぞ!ナイスパンチだ!自画自賛。
ん、若干だが奴の魔力削ったか?
ふふ、それじゃ次はあれをやってみるか。
ゲートでエクス(カリバー)を取り寄せる。
「おおお!やはりヌシがワシの正当な所有者じゃったか!このしっくり来る感じたまらんのう!」
嬉しそうだな。
「話は後だ、これからちょっとした技を放つ。私の魔力に合わせて欲しいのだが出来るか?」
「そがいな事みやすいよ!任せんさい!」
ディメンション・マルチ・ウォール
山羊の周囲数十メートルを障壁で囲む。
転移。
「よう!望み通り姿を見せてやったぞ?」
「ハッハーッ!」
切り掛かってくる。躱す。
「どうした!攻撃して来いよ!俺の無敵の異能、【リベンジャーズ】見せてやるよ!」
へえ、あの能力、そんな名前だったのか。
「この狭い空間、リベンジャーズとか言ったか?ここで、あの技を放ったらどうなるんだろうなあ。」
「ああ!?テメェ何言ってやがる?」
剣を振るって来るが遅すぎる。ラビィの方が何倍も早かったぞ。
奴の攻撃など児戯に過ぎぬ。能力にかまけているからそうなる。
「ダメージは本人に返るみたいだがあの大規模な技をここで放ったら!ゾクゾクするなあ!」
「て、テメェそれどう言う意味だ!?」
「スーパーノヴァ」
ディスペア流極伝奥義スーパーノヴァ。
剣士の魔力を刀に乗せ解き放つ技。剣を振るう者の魔力量、剣技により雲泥の差がでる。
実際エクスを使用しての今回の技はヨルム戦を遥かに超える威力を叩き出している。障壁を壊さぬよう加減はしていて、この威力だ。
障壁内の閃光が太陽の光の様に周囲を照らす。実際に障壁内は地獄と言う表現も生優しいくらいの凄惨な状況となっている。
「ぎゃああああああああ!」
奴の悲鳴が聞こえる。
「どうだい?ここは中々の光景だろう。この景色を見たのは、お前とヨルムンガンド、そして私の3人だけだからな!誇っていいぞ!ハッハッハーッ!」
「ワシを忘れんさんな・・・はぶてるでぇ。」
そうか、コイツもいたな。
「悪い悪い、エクス、お前を入れて4人だ!ハッハッハーッ!」
最高にハイッてやつだな。
「さっき、ちいとした技言いよったけど、どこがじゃ!地獄じゃろがい!!」
そうか?綺麗だと思うが。
「あああああ、痛てえええよお!か、体中にい、痛みがあああああああ!!ぎゃああああああ!」
コイツも痛覚耐性無いのか?ローズマリーと言い最近の奴はなっとらんな。
なぜこの山羊が生きてるかと言うと当然私が
ディメンションで防御(やんわりと外の熱が軽く通る程度に調整)しているからだ。奴の能力にも限界はあったらしい。数秒くらいは耐えたからな。スーパーノヴァを数秒耐えるとかとんでもないぞ。そこだけは賞賛に値する。
ぶっちゃけ、細胞レベルで魔装張れる私には奴の能力など無意味だったのだが、ついつい乗って楽しんでしまうのが私の悪い癖だな。ふふ。
「た、頼む!殺してくれ!もう限界なんだ!頼む!頼む!」
命乞いか?いや死を願っているのだから希死念慮か。
「連れない事を言うんじゃ無い。まだ始まったばかりだぞ?この状態があと3日程続くからな!なあにあっと言う前さ。」
1日も経てば痛覚耐性は獲得出来るだろうよ。
「み、3日だと!無理だ!痛い死ぬほどいたいんだあ!頼む殺してくれ・・・お願いだ!何でも言うこときくからあ!たすけるかころすかおねがいします!おねがいします!」
ん?今何でも言う事聞くって言ったよな?
「ああ、そう言えば、まだお前の名前を聞いていなかったな。」
名乗りは大事だぞ。
「私はアル・ディ・・・」「バフォメット!!バフォメットだあああああ!なのったぞ!たすけてくれええええ!」
おいおい必死じゃないか。
「ふむ、確かこの戦いに勝ったら敗者は下僕になるとか言っていたような?」
「なるますううう!あなたさまのちゅーじつなげぼくにいいい!あつい!いたい!いたい!」
「でも、裏切るんだよな?」
「う、うらぎりましぇん!ぜったいないい・・・だからおたすけええ・・・・・・」
おや、すでに精神が燃え尽きてるぞ。
イキってた割にとんだザコだったな。
魔力の供給を止めスーパーノヴァをディメンションで雲散させる。
燃え尽きようとしてる山羊、バフォメットにはヒールを掛ける。
体は回復したが精神の回復には多少の時間がかかるだろう。
「ノエル、度々すまんな、また客人を送る。さっきの女性同様監視を頼む。暴れたら念話で私を呼びなさい。」
「・・・今日は・・・別人・・・みたい・・・」
確かにな。
「人使い・・・荒いし・・・後で・・・お仕置き。」
ノエルとの関係はどうなっているんだ?
「じゃあ悪いが頼む。」
バフォメットを転移させる。
残ったのはバフォメット配下の者数名と虎と狼か。
「まだ戦いたい奴がいれば相手になるぞ?」
誰も答えない。あっ、逃げ出した。
残っているのは兎と虎と狼だけだ。
「お前、ラビィと言ったか?逃げないのかね?」
駆けて来たぞ。どうした?
「ねえ!最後のあの技は何!?どんな魔法使ったの!あんなスゴイ魔法見た事無いわ!あなたは何者なの!?バフォメット様の異能をどうやって破ったの!?」
興奮し目をキラキラさせて、聞いてくる。
やれやれ、また弟子がふえそうだ。




