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絶望の果て  作者: 馨
70/103

70話 交差するふたり


アタシかなあ。

ペットには少々厳しいか。


「トップは俺が行く。いいよな?」

虎が鼻息荒く言ってくる。


「うん!任せた。ティガーなら全勝間違いなしだよ!」

言うと思ったよ。コイツには何を言っても無駄だ。

さて、もう1匹は・・・

隅っこでチョコンとお座りしている。


「ガイウスお前はどうする?ヤリたいなら中堅任せるけど。」


「・・・姫様の判断に従います。私には到底勝ち目は無さそうなので。」

状況を正しく理解しているけど何か腹立つ。なので、


「分かった。中堅は任せる。」

コイツの負け犬根性叩き直す良い機会かも。


「ふあっ!?はいいい!?い、今何と?」


「だから、中堅は任せるって・・・」


「むーり!無理無理無理無理!勝てる訳無いだろ!何でそんな事言うの!?馬鹿なの?なあ馬鹿なんだよなあ!!」

食い気味で否定したぞ。それに恐怖で、らしくない言動してる。いやただの本音か。


「え?アタシに従うんでしょ?ガイウスなら勝てるよ。もっと自分に自信を持って!」


「そう言うとこがムカつくんだよ。あんたなら相手の力くらい分かるだろ?私が勝てるわけがない。なんで・・・。」

伏せの姿勢でいじけちゃったよ。しょうがないやつめ。

そばに行き、優しく語りかける。


「ガイウス。お前の弱点はその弱い心だよ。始める前から既に負けを認めてしまってるじゃん?アタシは知ってるよ。毎日ひたむきに剣を振るうあなたの姿を。真価を見せる時だよ!心を燃やせ!そこの虎の様に、とまでは言わないけどね。ふふ。」


「ひ、姫様・・・私に勝てるかどうか分かりませんが・・・姫様の教えを思い出し、今出来る全力をぶつけて来ようと思います。」


「良く言った!ガイウスなら勝てるよ!」

頭から背中に掛けて撫でてやる。魔力に乱れがあるな。調整してやろう。ガイウスの体が淡い光に包まれる。


「ひ、姫様・・・なんて暖かい・・・。」


「あっ、そうだ。これ使いなよ。切れ味は・・・多分良いよ。」

ポーチから剣を取り出す。


「ぷはああああ!おうコラ!メスガキ!よくもあんな空間に閉じ込めてくれたのう。われ!ぶちまわすど!」


「だってうるさいんだもん。」


「じゃかましい!ヌシが神樹切ろうとするからじゃ!」


「反省してます。ごめんなさい。」ペコリ


「おうおう・・・や、やけに素直じゃのう。最初からそう言う態度ならワシもよ、ワーワー言うたりしとらんのじゃ。」


「そうなんだ。ねえ、あなたは何て言う魔剣なの?」


「魔剣じゃと?そんなもんと一緒にしちゃあ、いけんよ。ワシは神剣エクスカリバー言う神の鍛えし剣じゃからのう。」

アタシの持ってる聖剣エクスカリバーとは違うのかな?


「神剣だってさ。業物っぽいから、大事に使ってね。」

ガイウスに向かって投げる。

パクッと口に加えたあと人型へ。

ああ、そうだ。ポーチから装備一式を取り出し渡してあげる。狼から人型に戻ったガイウスは素っ裸なのだ!


「おい待てゴルァ!何でこんなむさ苦しい男に渡したんじゃ!ワシを扱えるのはヌシだけじゃぞ!」

そうなの?


「チカラを貸してよ。あなたならアイツら倒せるでしょ?」


「あいつら?・・・フン、異界の連中たちか。切るのはみやすいのう、ワシの使い手次第じゃが・・・」

ガイウスなら大丈夫だろ。

軽く仕込んであるしな。


「準備出来たかあ?」

山羊の言葉に両者が向かい合う。

対戦は城のホールで行われる。だだっ広い空間だがアタシたちが戦うには狭すぎる。

奴が結界を張ったようだが、アタシも張っておこう。


初戦はティガー対ラビィか。

ラビィの装備を確認する。

防具は白い胸当てと左の肩当てくらい。

尖った剣(たしかレイピア?とか言う異界の武器)を持っている。刺突メイン、スピード特化型の戦闘スタイルだろう。

このホールの狭さは不利だろうな。


対して虎の装備は金の刺繍が施された腰布1枚。


「そんな装備で大丈夫?」


「大丈夫だ、問題ない。」

不安しかないんだが?


「それじゃあ、いつでも始めていいぞー。」


開始の声と同時に魔力を爆発させる虎。対照的にラビちゃんの方は気配が無くなる。


ドゴオオオオン!

ラビちゃんの居た所に虎の拳が炸裂する。が避けられている。


ドドドドドドドドドドドド

ホールに鳴り響く音。これは、そうか。結界を足場にして縦横無尽に跳ねまくっているのか。一瞬たりとも姿が見えない程の速度。

狭い空間を上手く利用したな。


ザシュ!ザシュ!ザシュ!ザシュ! ザシュ

「ぐうぅ!?」

虎に攻撃がヒットしまくる。体表を魔装でガードしているはずだが、抜けてくるか。

あの虎回復力弱いんだよなあ。血がいつまで経っても止まらない。


「ハッハー、やられっぱなしだなあ。一方的過ぎてつまらんなあ!ハハハッ!」

ご機嫌じゃないか。


しかし、確かにこのままだと不味いな。

虎の攻撃は空振るばかりで全く当たらない。

姿を炙り出す手はいくつかあるが虎が気付くかどうか。


「ぬあああああ!ちくちょう!ちょこまかちょこまかとよ、正々堂々姿をみせやがれえええ!」

馬鹿かな?


ザシュ!ザシュ!ザシュ!ザシュ!

「ぐああ!」

床に血溜まりが出来ている。あっこれ死ぬわ。


「おおおおおお!」

闘気が爆発的に上がる。まだ諦めて無かったか。いいぞ。

体や床の血が蒸発し宙に舞う。


「!!? 奴の軌跡が見える!」


「そこだあああ!」

ゴオオオッ!!

虎の剛腕が正確に向かって来るラビィをとらえる。いや外したか。


ラビィが動きを止めた。左肩の防具が砕けている。


「やるじゃない。お礼にいいもの見せてあげる。」

へえ・・・。笑みがこぼれる。


ズウウウウン!

地響きがして虎から凄まじいプレッシャーが発せられる。目が赤く光り筋肉が膨れあがる。この一撃に賭けるか。


ゴオオオオオオオオオオオオ!

ブアアアアアアアアア!

ラビィと虎の姿が消え爆発音と衝撃波が走る。結界を超え暴風がホールに吹き荒れる。

虎が倒れ、ラビィがそばに立って虎を見下ろしている。右腕から血が流れているが傷は浅いようだ。虎は気絶している。

魅せてくれるじゃないか。


「姫様!あの最後の技は!?」


「ああ、あの兎ディスペア流を使うぞ。」

くはっ!嬉しいなあ。これ程の使い手がいるとはなあ。


「その虎もう戦えねえだろ。殺せ。」

ラビィがレイピアを構え・・・突き刺す瞬間。


ズゥアッ!

殺気を飛ばす。


「くっ!」

こっちを睨みつける兎。


「戦闘不能でウチの虎の負けよ。次の試合早くやろうよ。」


「ハッハー、本当良いなお前!ますます欲しくなったぜ!」

チッ。


虎にヒールを掛ける、次いでに兎にも。

「私も治してくれるなんて余裕ね。」


「別に、ダメージがあったから負けたなんて言い訳されるの嫌じゃん?ふふ。」


「勝てると思ってるんだ・・・いいわ、早くヤりましょう。」


虎を蹴飛ばし端に寄せる。


「そんじゃ、次はラビィ対おっさんな。始めていいぞ。」


「姫様10本刀、序列4位ガイウス。推して参る。」

10本刀?何それ、てか今7人しかいないけど?恥ずいから止めて。


「私も名乗るの?・・・ラビィよ。来なさい。捻ってあげる。」


ガイウスが腰を落とし剣を構える。

ラビィもレイピアを構え・・・。


「「シューティングスター!」」


出し惜しみ無し、初撃からディスペア流必殺の連撃が交差する。

そうなのだ仕込んでいたのだガイウスにディスペア流を!

やつの剣に対する姿勢に好感が持てたと言うのもあるけど、マトモな剣士がガイウスしかいないんだもん。


ズガガガガガガガガッ!

逸れた斬撃が全てを切り裂く勢いで結界に当たる。

今の実力差だとガイウスが押し負けるはず。ラビィはディスペアをかなり高段まで上げてる感じだったし何より突進系の連撃技シューティングスターとレイピアの相性は抜群だ。

普通に考えれば、だが。


「ぐっ・・・な、なぜ私の・・・方がダメージを!?」

ラビィの腕や足に傷。血がモフモフ灰色の毛に付いて赤黒く染まっている。


「凄い!体がイメージ通りに動くぞ!姫に撫でられた時から気持ちも落ち着いたし、何よりこの剣だ。なんと言う攻撃力・・・。」


「ほうじゃろ、ほうじゃろ、ワシの使い心地は最高よ。ヌシの技もなかなかえーがの。」

あの剣凄いな。それ自体の性能も高いが持ち手のステータスを軒並み上昇させている。喋るのがウザイがそこさえ我慢すれば現状最強の武器だな。


「どうじゃ!ワシの事見直したじゃろ!振りとうて振りとうてたまらないって顔しとるのう!ハーハッハッハ!(念話)」

クソが!イライラして来たわ。


「うん、すっごい切れ味にゾクゾクしちゃった!でも相手もまだヤル気みたい。本番はこれからだよ!ガイウスの事守ってね。お願い!」

下手に出てみる。


「ワシに任せておきゃええ。あんな小娘に遅れを取ると思うちょるんか?ほいじゃけ、この小娘に勝ったらのう・・・ワシをお主の・・・!」


ガキイイイインッッ!

戦闘が再開されたようだ。

ディスペア流の打ち合いを外から眺めるなんて感慨深いものがあるな。

名前とは違い美しい剣術だ。見蕩れてしまう。

ラビィの方はほぼ完成しているな。練度が段違いで隙や無駄が一切ない。しかしそれをいなしているガイウスの戦闘センスも素晴らしい。あの剣が導いているようにも見える。


キキキキキキキキンッ!

火花が散る。それにしてもガイウスの奴め、ラビィの異常なスピードについて行くだけでも大したものだ。野生の勘、とでも言うべきか本能で察知しているな。


「「メテオ・バースト・ストリーム!」」


ズウウウウン!

大気が震える!ガイウスめ、その技を会得しているたとはな。現状、序列一位はお前だよ。


「うおおおおおおおおお!」

「オオオオオオオ!」

ゼロ距離からの斬撃の応酬。

ラビィのレイピアは耐えられず折れてしまう。

喉元に突きつけられた剣。


「くっ殺せ!」

敗北を悟り死を要求するとは、まだまだ青いね。


剣を収めるガイウス。

「私が勝てたのはこの剣の力だ。この剣が無ければ負けていた。ラビィ殿のディスペア流はそれ程素晴らしかった。また手合わせ願いたい。」

手を差し出す。

成長したじゃないか。やはり死地を潜らねば人は成長せんな。


パシン

ガイウスの手を叩く。

「馴れ合いは嫌いだ。二度は負けん。」

顔が高揚しているな。ふふ。

ヒールをガイウスとラビィに掛ける。

睨まれてしまった。余計なお世話だったかな?


片膝を突き山羊の悪魔に向け頭を垂れるラビィ。

「申し訳ありません。バフォメット様・・・。」

ほう、あの山羊、バフォメットと言うのか。


「・・・まあ、いいよ。戻ってきな。」

彼奴の口角が釣り上がる。

ゲスが。


バシン!

彼奴から放たれた精神魔法を障壁で弾く。即死魔法か何かだろう。


「チッ!テメェ邪魔してんじゃねえよ。」


「死力を尽くして戦った部下に対して、その仕打ちは如何なものかと思うぞ?」


「オイオイ、テメェだってさっき仲間を蹴り飛ばしてたじゃねえか。笑わすな。」


「ああ、あれは彼女がやったんだ、最近不安定でね。稀に交差してしまうのだよ・・・まあお前には関係無い話しか。」


「はあ?何言ってやがる。意味わかんねえ。・・・分からねえが、テメェここに来た時とは気配が違うな?」

鋭いね。


「ガイウス、良くやったな。流石は私の弟子だ。後は私に任せておきなさい。」


「姫様・・・有り難きお言葉。」

肩が震えている。

精神が大分すり減っているな。大技を連発したのとあの神剣とやらに持って行かれたようだな。


「ティガーと一緒に休んでいなさい。」


「ハッ!・・・姫様、ですよね?どこか雰囲気が・・・」




「ふふ、私はアル・ディライト。ただの冒険者さ。」

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