60話 そして、次の冒険がはじまるのです!
灯りの無い暗い牢獄。
魔力を一切通さない、この部屋に入れられ、もうどれだけの年月が経ったのだろうか。
たまに部屋の扉に付いている小窓から差し入れられる残飯のような物を犬のように食べ、生きながらえて来た。
手には分厚い金属の手錠、首輪からは鎖が奥の柱へと続いている。
体も服もここへ入ってから一度も洗っていない。
清潔感とは無縁のこの部屋に閉じ込められ死んだような毎日を送っている。
最初こそ散々いたぶられたが、もう興味も無くなったようだ。
飯を持って来る間隔が長くなって来ている。
意識の混濁、体が上手く動かない。
・・・あの生意気なガキはあれからどうしとるんじゃろうか・・・。ふふ、久しぶりの思考があのガキの事とはのう。
名前は・・・何と言うたかのう。
確か・・・
・・・ア・・・ル・・・アル・・・
「アルル様ぁ!起きてください!」
ん、オフィーリアか。
何か、夢を見てたような・・・。
「今日は次の階層行くんですよねぇ?」
ああ、そうか。そうね、ムニャムニャ
「また、眠るんですかぁ・・・Hなイタズラしちゃおうかなぁ?」
耳元でそんな事を言われる。
ガバッ
「!! もうHなイタズラしちゃ、らめえええ!」
らめえええええええ!
「あっ、起きたぁ。」
「・・・おはよ。」
ふにゃああああああ、眠い。
眠い目を擦りながら洗面所へ行き顔を洗う。
髪をとかして貰うか・・・
「ア・・・」
っぶねえええ!癖で呼んじゃうとこだった。
もうアスは居ないんだ・・・。
自分でやろ。
今日のコーデを紹介するね!
装備 小悪魔の角、ワンピ、ガーターストッキング、ブーツ、悪魔の尻尾
悪魔の尻尾の先ハートの部分は○○○と連動してるから触られると気持ちいいよ!
部屋にある私物をポーチに入れる。
宿屋の一室だがずっと寝起きしてとこから離れるのは何とも言えないものがあるなあ。
ありゃ、アタシいつからこんな叙情的になったのかしら。
オフィーリアとフェリドには先にベル邸へ行ってもらってる。
後はアイツをどうするかだけど・・・。
パンッパンッパンッパンッパンッ
・・・神獣じゃなくて性獣の間違いでは?そっとしておいてあげよう。
ベル邸へテレポ。
「おはようございます。」
玄関の前に立ってるホルンさん。
「おはよ。もしかしてずっとここで待っててくれてた?」
一緒に来れば良かったなあ。
「いえいえ、たまたま外へ出ただけですよ。どうぞ中へお入りください。」
優しいなあ。この人好きだ。
「アルルちゃん!おはようさん!お!?何や!朝っぱらからエロエロやんけ!ワイを誘惑してどないするつもりや!」
元気だなコイツ。
「おはよ。石碑は?」
「ちょっ、もう行くんかい!早い早い。朝食用意してあるから一緒に食べようや。」
気を使わせてすまないね。
カチャカチャ、モグモグ
ぼー。
「アルル様ぁどうかされましたかぁ。朝から何か様子がぁ・・・。」
そうなんよ。
「んー、別にー大丈夫。」
なんだろう、昨日はやる気も元気もあったんだけど急に落ちたなあ。気力が無い?燃え尽きた?虚無感?
いつか誰かが言ってた事を思い出す。
何度も絶望を味わう事で魂が擦り切れ、最後は消滅するとかなんとか。この感じが続くとそうなるのか?
よくわからないや。
「アルルちゃん、ワイと別れるのが寂しいんやろ?いつでも帰って来てくれてええんやで。寝室で待ってるわ。」
太ももを触ってくる。
最後くらいサービスしてあげるか。
「ベル、色々世話になったね、ありがと。」
太ももを触っている手に自分の手を乗せる。
「お礼に、次来た時は気持ちいい事いーっぱいしてあげるからね。だから浮気しちゃやだよ?」
ベルの手のひらを指でくすぐりながら耳元でささやく。
「はえ!?ホンマに!?期待してええんやな!こら、今から道具準備せなアカンで!ハァハァたまらんなあ!」
道具って何だよ。
オフィーリアがジト目で見てる。
「アルル様、話を聞いて頂いても宜しいでしょうか?」
フェリドどした?
「うん、いいよ。」
「私この階層に残ろうと思うのです。」
えっ?マジで?
「理由聞いていいかな?」
何で?
「はい。ダンジョンで死んだ仲間が復活するのを見届けたいのです。」
ああ、アタシが屠った者たちか。シュン
「それまではこの街の復興に尽力したいと思います。」
偉いなあ。
「そか。残念だけど仕方ない。いいよ。街の人たちの力になってあげて。」
ありゃ、自分でも意外な程あっさりOKしちゃった。
「オフィーリアもミコとニケが寂しがってるだろうから、城に戻って一緒にいてあげて欲しい。」
あー尻尾モフモフしたい。モフモフ。
「また4人でと言うわけには・・・。」
悲しそうな顔。すまない。
「昨日も言ったけど、これから先は安全が保証出来ないから・・・ごめん。」
フェリドを超える存在が現れたら守り切る自信もない。アタシは復活出来るけど、皆はどうなんだ?いや、仲間が死ぬとこなんて見たくない。絶対に。
「分かりましたぁ。でも何かあればすぐ呼んでくださいねぇ。あとたまには遊びに来てくれなきゃヤですよ!」
「うん、そうだね。まあ、行けたら行くわ。」
「それ絶対来ないやつですぅ!」
そうなの?
「ふふ、遊びに行くよ、約束する。」
久しぶりの1人旅。はぁ。
しかりこの気分の滅入り様はアスだけのせいじゃ無いな。
朝の夢か、思い出せないが酷く気分が落ちた。
食事が終わり、みんなに見送られ庭にある石碑に触れようとした時。
「アルルー!待ってー!私たちも行くわ!」
ん?親方あ!空からホウキに乗った女の子が!!
何だリリムか。
メイヘムさんも一緒だ。
「おはよ。」
挨拶してみる。
「あ、うん。おはよう。」
「おはよう。」
メイヘムさんも挨拶してくれた。意外だ、と思うのは失礼か。
「下(の階層)行くの?」
「そうよ。一旦家に帰るつもり。」
へえ、実家があるのか。
「じゃあそこまで一緒に行こうか?」
「そ、そうね!あんたも道分からなくて不安でしょうから案内してあげるわ!感謝しなさい!」
相変わらず偉そう。
「うん、ありがとう。」
「・・・素直ね。調子が狂うわ。」
いや、いつも素直で良い子なんだけど?
「不躾ですまないが、 出来れば道すがら稽古をつけて貰いたいんだが。」
断る理由がないよ。
「いいよ。アタシが教えられる事があれば協力するよ。」
次元干渉とか。
「そうか!よろしく頼む!・・・アルル殿の事・・・そ、その・・・し、師匠と呼んでもいいか?」
いいわけないだろ。モジモジしながら聞くんじゃない。そんなキャラじゃないだろ。
「ダメよ。」
アタシの弟子はロキきゅんだけよ。
「そうか。」シュン
しょげてる。
「もう、さっさと行くわよ!」
リリムが、石碑に触れると光が溢れ近くにいる3人を包みこむ。
「アルル様ぁ。お気を付けてぇ!」
「今晩!待っとるでえ!」
「アルル様、ご武運をお祈りします。」
「みんな、またね!」
こうして新たなパーティを組んだアタシは次の階層へと旅立ったのである!




