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絶望の果て  作者: 馨
53/103

53話 北の地 イーゼナ山脈へ


「ここがあの変態のハウスね。」

王都の南側の森の中にひっそりと佇む豪邸。

なかなか良い所に住んでるじゃないか。

大会の翌日、アタシがなぜここにいるかと言うと家主のフロアボスをブッコロしに来たのである。


とりま、コーデを紹介するよ! 


装備 小悪魔の角、ゴシックドレス、黒スト、ブーツ、悪魔の尻尾  


TPOに合わせて正装だよ!



アタシの優勝で大会は終わり、僅かな賞金1千万ギルとアイテム【魔剣ベガルタ】を報酬として貰う。ちなみに魔剣は、ひのきの棒に当てたら簡単に砕けてしまった。ひのきの棒最強伝説。

その後賞金を使い祝勝会をサーシャちゃんのお店で行う。ヨハン君の誘いを断れなかったのだ。

しかし酒に酔ってハメをハズす輩が続出。

アタシに絡んで来る奴らは、もれなくオフィーリアに氷漬けにされて、かわいそかわいそなのでした。

カチカチになったベルを助けてやると話があるから明日家に来てくれと言われ今に至る。


早朝寝ているみんなを起こさないように宿屋を出て敷地の側にテレポ。森の木陰で朝食を取る。差し込む朝日と鳥の鳴き声。のどかだねえ。

敷地内に入ると強力な結界。何重にも張られているけど意味あるの?ベル普通に学院通ってるじゃん。

結界を抜け洋館の呼び鈴を鳴らすと扉が開き魔物たちが片膝ついて出迎えてくれた。


「ようこそお越しくださいましたアルル様。私はベルゼビュートの執事ホルンと申します。主人からくれぐれも粗相のない様に、と承っております。」

立派な角を持つ羊見たいな顔した魔人が挨拶してくれた。粗相のない様にって主人の方はやりたい放題やってるぞ。

しかし、ほぅ、これはたまらんな。白髪のモフモフ紳士じゃん!やだ、すっごいモコモコしてる・・・。そのモコモコした髪触って良い?ねえ、触っても良いよね!


「ど、どうかなさいましたか?」

!?ふぅ、落ち着けアタシ。モフモフした物を見るとついワシャワシャしたくなる。アタシの唯一の弱点だな。

ホルンさんを緊張させてしまった。


「ごめん、何でもないよ。ベルのとこ案内してもらえるかな?」


「はい、勿論でございます。ですがその前に朝食はいかがでしょうか?」

随分気が効くな。この羊持って帰ろうかな?


「ん、食べて来たから大丈夫。」


「承知いたしました。ではこちらへ。」 

客室?に案内されソファに座る。


「お飲み物をお持ちします。コーヒーと紅茶どちらがよろしいでしょうか?」

ここ魔物の巣窟だよね?今からコロし合いするのにこんな接待受けていいの?


「じゃあ、コーヒーいただこうかな。」

答えるアタシもどうかしてるわ。 


「かしこまりました。少々お待ちください。」

礼をして出て行く。


部屋に入る柔らかな光。鳥のさえずり。

ここ最高じゃん!ベルをヤったら拠点にしよう。


ガチャ!

「アールルちゃーん!昨晩ぶりやなあ!会いたかったでえ!」

ベルが扉を開けて抱きついて来た。まだ酔ってるのかコイツは?

裏拳を顔面に一発入れる。


「ブハッ、な、何やの朝っぱらから、ただの

挨拶やん。」


「だからこっちも挨拶で返したんだけど?」


「キッツイ挨拶やなあ。まあええわ。今日呼んだんは他でもない。例の北での異変についてや。」

北での異変?


「よくわかんないけど、今からベルとコロし合いするんだよね?」


「はあ?何言うてんの?宿屋で言った事もう忘れたんか!」

はて? 


「北の山脈を根城にする竜、退治してくれるって約束したやん?覚えとらんのか!?」

んっ?あー、そんな事言ってたっけ?


「んー、めんどいからいいかな。先進みたいし。早くバトろ?」


「ちょっ!?待て待て待て!あの竜共がこの街襲ってみい!アルルちゃんの知り合いみんな死ぬで!ええんか?」

えー、それはやだなあ。


「竜退治したら先進めるよう手配するから頼むわ。ワイとアルルちゃんの仲やろ?」

隣に座って手を太ももに這わせて来た。

神速の突きで眼球を正確に潰す。

アタシの突きは針に糸を通す程の精密さをほこる。


「ギャア!目があ!目があ!・・・あるわ。」

メイヘムさん並みの回復力だな。


knock knock

「コーヒーをお持ちしました。」 

ホルンさんがコーヒーを二つ持ってきた。

アタシと対面に座っている(いつの間に移動しやがった?)ベルの前に置く。お茶菓子も添えてある。出来た魔人だね。


「では、ごゆっくり。ニコッ」 

はあー、イケおじスマイルの破壊力。

おいおいおい、マジで配下に欲しいんだが?


「やらんで?」

心を読まれた。


コーヒーを飲み一息入れる。


「分かったよ。行ってくればいいんでしょ。ちゃんと報酬貰うからね。宝物庫漁っていいんだよね?」

かわいいドレスとかあるかな?


「そこは覚えてるんか。ちゃっかりしとんな。」


「でも、お前って変わってるよ。階層ボスって基本引きこもってんじゃないの?街潰されてたって関係無くない?」

前から気になっていた事を聞いてみる。


「まあ、そう言う奴の方が多いわな。でもここだってエエとこやけどずっといるのは退屈やで。学院通ったり街出て遊ぶ方が楽しいわ。」

人間みたいな考え方。


「裏社会や王宮を裏から操ったりしてか?」

フロアボスだから違和感は無いが。


「せやせや、最高の暇つぶしや。王宮とか政争や派閥争いでドロドロやで。それに比べたら犯罪シンジケートなんて可愛いもんでな、力さえあれば何でも有りってな具合で、こないだなんてマーキスの奴、捕らえた半グレの獣人をブッコロし〜」

楽しそうに話すベルは普通の人間みたいだ。

まつ毛長っが、指長っが、はー、やっぱコイツイケメンだわぁ。あっ、笑った顔かわいい。少年みたい。キュン。

へっ?待て!落ち着け!アタシ!これじゃエロサキュバスみたいじゃん!ベルの言う事否定出来ないよ!


「どした?ワイに見惚れてたんか?ニヤニヤ。」

悔しい!でも、


「馬鹿かテメェ、くだらねえハナシはもう仕舞いか?俺は帰るぜ。大将首持って来るから楽しみにしてるんだな。」

そう言って席を立つ。

やん、照れ隠ししちゃった。


「ふ、せやな、その時また礼をするわ。アルルちゃん・・・気をつけてな。」

部屋を出る。


「お話は終わりましたか?」

ホルンさんが話しかけて来た。


「ええ、コーヒーありがとう。」


「いえいえ、此方こそ。最近のベルゼビュート様は本当に楽しそうにしておりまして、全てアルル様のお陰でございます。」

へ?何かしたっけ?


「ふふ、またいつでもいらしてくださいね。」


「うん、ありがと。また来るね。」

さあて、それじゃあ竜退治行ってみますか。



アタシ一人で行ってもいいけど、どうしよう。うーん。

ニケとミコにはまだこのステージは早すぎる。オフィーリアに念話して2人を見ておく様に頼む。


「アス、ユニ子来て。」


「ハッ!」

返事をした直後にテレポで姿を表すアス。

今は人型だ。


「あっあるアルル様、た、ただいま。ちっ、またかよ!クッソ!」

ん?


遅れて汗だくのユニ子がテレポしてきた。


「えっ、またしてたの?」


「ち、違うのです!あの雌とは別の雌がまた誘惑・・・はっ!?」

アタシの殺気に気付き震えるユニ子。


「モテモテだね!アス汚いから洗い流して。」


「ハッ!ウォーターフォール!」

ドバアアアアアアアアアア!

大量の水で押しつぶされるユニ子。

綺麗になったかな。

アスにタオルを渡し体を拭かせる。

その間にアタシは、と


「へぇ、これがベルを閉じ込めてる結界かあ。なるほど、この密度、ベルに突破は難しいかな。」

対フロアボスの結界だ。恐らくダンジョンが作られた時に一緒に出来たのだろう。

手を触れる。バチッ!

ふ、俺を拒むか。

魔力密度を上げる。


ゴゴゴゴゴゴゴゴッ

大気が振動する。


「アスモデウス様・・・こ、これは!?」


「黙って見とけ。こんなもん俺らが使える主の力の、ほんの一端だ。」

ゴクリと唾を飲むユニ子。


もう一度結界に触れる。

チチチチチチチッッッ!

バチーーーーーンッ!

結界が消える。


「それじゃ行こっか。」

アスに持ち上げてもらいユニ子に跨る。ん?今嫌そうな顔した?チラっと睨みつける。あっ笑ってる。なんだ、気のせいか。


ユニ子の高速飛行で直ぐに目的地が見えてきた。竜がワラワラ飛んでいる。軽く殺気を飛ばすも全く変わりなし。逆にユニ子が震える有様だ。

この竜共のレベルはこの階層の魔物の平均を遥かに逸脱している。フロアボスのベルでも勝てるかどうか。

いいね。久しぶりに闘争が楽しめそうだ。

正直大会は楽しいけど物足りなかったんだ。


「ふふ、少しは楽しませてくれよ。」

こちらに気付き接近してくる数十匹の竜たち。

ユニ子がわめいているが気にしない。

ひのきの棒と対等の強度を誇る武器【エクスカリバー】を取り出し【魔装】を纏わせる。


この世に斬れぬもの無し。


「ディメンション・メテオストライク。」


空に輝く無数の光。一瞬の閃光の後に竜は1匹も残っていない。


「あわわわわわわわわわ。」

ユニ子が歯をガチガチ鳴らして震えている。

頭を撫でて落ち着かせる。

始まったばかりだぞ?


「ハッハー!盛り上がって来たなあオイ!楽しもうじゃないか!久しぶりの蹂躙劇を!」

遠くでアスの呟きが聞こえる。



「魔王様でも言わねえよ、そんなセリフ・・・。」



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