51話 すごく・・・大きいです・・・
─── side リリム ───
目が覚めると見知らぬ天井。
ここは、一体。
「あーっ、まほーのお姉ちゃん起きたよー。」
何だ?子供の声が?
獣人?どこだここは。
はっ!!手!手は!?
ガバッ
ある、付いてた。
「夢・・・じゃないよね。」
あいつが治してくれた・・・?
ガチャ
「おっ、起きたね。さっきはごめんね?ちょっとやり過ぎちゃって。アタシの悪い癖なんだ。テヘペロ」
はにかむ魔王。
「かわいい・・・。」
!いや違う違う!何言ってんだ私!手を切り落としたヤツだぞ!今はくっついてるけど・・・。
「ここは?」
「ああ、アタシたちの泊まってる宿屋だよ。」
「!こ、コニーはどこ!?まさか、殺したの!?」
この魔王は裏切ったコニーを始末しに来たんだ!コニーは!?
「ああ、厩舎に居るよ。他の馬がビビってたけどやっぱ羽と角生えた馬って珍しいのかなあ。あっコニーじゃなくてユニ子ね?」
「神獣を厩舎に入れたの!?あたまおかしいんじゃない!早くここへ連れて来なさい!」
「えー、ダメだよ。この宿屋ペット禁止だし。あっ、でも小さくなってもらえばイケるか。でもちょっと臭いんだよなあ。」
さっきから何言ってるのコイツ。連れ戻した割に扱いが酷すぎない!?
「んー、リリムもちょっと臭いかも。オフィーリアに体拭いてもらったけど。」
えっ臭い。クンクン。あっ。
「とりあえず温泉行こっか。」
温泉?この地にあったか?
「おんせん!ミコもいっていい?」「ニケもいくっ!おんせん!」
「もちろん!じゃあ、よいしょ。」
えっええー!?何で持ち上げ、てか抱き抱えられてる!?
「オフィーリア!おるかー!」
顔近い!ドキドキドキドキ
イヤイヤないから!
オフィーリアと名乗る女性。何者だ?魔王の側近なのだろうか?
私より明るめの銀髪。腰まで伸びた髪は先の方がクルクルと巻かれている。
キレイな人だなあ。お姫様みたい。
イヤイヤ、コイツは魔王の仲間だぞ!
「手を繋いでー。」
ヒュン!
景色が切り替わる。転移したようだ。
しかし、ここは?
「脱衣所だよ。服脱いでね。着替えはここ置いとくよー。ニケいこー。」
獣人の男の子をつれ隣の部屋へと行く魔王。
「私たちもぉ、行きましょうかぁ。」
脱衣所で服を脱ぐ。
オフィーリアさん、透き通るような白い肌。綺麗。それにすごく、大っきい。
脱衣所を出て浴室へ。
「わっ、何これ。」
大っきい!王都でもここまで広いの見たことないよ!
「ふふ、驚くよねぇ、ここダンジョンの入口なんですってぇ。」
ダンジョンの入口?
「ディスペアの入口って事ですか!?」
イヤイヤ嘘でしょ。ダンジョンの入口が温泉とか頭おかしいだろ!」
「そうみたいよぉ、アルル様が言うから間違い無いかなぁ。ここがアルル様の原点だと仰っていたわあ。」
嘘、だ。そんな。
「私たちがどこにいたか知っているの!?8295階層だよ!?階層外への転移なんて聞いた事がない!」
ありえないわ!
「私に言われてもぉ、アルル様だしぃ。」
なんだその理屈は。説得力は、あるが。
ドボーン
「きもちー!」
ミコと名乗る獣人の女の子が湯船に浸かっている。かわいい。
体を軽く洗い流し湯船に浸かる。
「はあ~~。気持ちいい~。」
こんな至福いつ以来だろう。王都の大浴場だってここに比べればただのお湯だ。
癒される。その一言に尽きる。
「ふふ、気持ちいいよねぇ。ここがあったからアルル様は冒険を続ける事が出来たんだってぇ。」
ん?
「彼女は冒険者なの?」
ここから始めたとか。冗談はやめて。
1層制覇するのに何年かかったと思う。私でさえ3年だぞ。こっちに転生して2層。それを彼女は8295階層まで降りてきた。
温泉でリフレッシュ出来たからで済むレベルじゃないぞ!
「冒険者を名乗っているけどぉ、もう魔王様より強いんじゃないかなぁ。」
・・・。
「オフィーリア、さんだっけ?あなたは魔王を知っているの?」
「会ったことはあるよぉ。八柱会議とかで。」
八柱会議?
「私ぃ、一応八柱なんだぞぉ。」
胸を逸らしてドヤ顔してる。胸おっきい・・・。
て、違う!今なんて!
「八柱なら魔王を守る側よね。なぜ冒険者と、あの者と一緒にいるの!おかしいじゃない!」
「んー、一応戦ったよぉ、でも負けちゃったぁ。」
はぁ、意味がわからない。負けたのになぜ生きている?
「不思議な方なんだぁアルル様はぁ、命のやり取りした後にぃ楽しかったからまたやろうだってぇ。ふふ。」
真性のサディストじゃないのか?私にだってあんな事を。
「オフィーリア・・・さんは、また挑戦するの?」
「もう無理かなぁ、好きになっちゃったしぃ。でもアルル様に害をなす者が現れたらぁ・・・。」
目が怪しく光る。ゴクリ。
「なんてねぇ。リリムちゃんはどこから来たのぉ?アルル様から転生者だって聞いたよぉ。」
!何で知ってる!誰にも言ってないのに!
「そ、外の世界よ。16年前にこっち来て・・・」
生前・・・転生前の私はか弱い魔力も腕力もない獣人の少女だった。小さな集落の小さい畑で家族を養えるだけの野菜を作り慎ましく暮らしていたのを覚えてる。
決して楽な暮らしでは無かったが優しい父母、甘えん坊な弟に囲まれ幸せだったと思う。
それをあの魔物が奪った。
牛の怪物。ミノタウロスだ。
ダンジョンから冒険者に追い立てられ、この集落に逃げて来たのだ。
村人の半数は殺された。私の家族も。
なぜ、あの時生き残ってしまったのだろう。
その後魔物を追ってきた冒険者に保護され町の孤児院へ。
町での獣人の地位は最低だった。いじめ、暴行の毎日。最後は奴隷として売られた屋敷の主人に乱暴され殺された。
その後8296層、夕霧の森、ランバー集落の魔女の元に転生した。
書物を読み、ここがディスペアと言うダンジョン内だと言う事と魔王の存在を知る。
その日から魔王討伐が人生の目標となった。
復讐なのか、やり場の無い悲しみを忘れる為なのか、今となっては動機は忘れてしまったが。ただただ魔王を殺す。それだけ。
階層の魔物たちと同程度だった私の強さは空間魔法を覚えてから劇的に変わる。
硬い防御も紙を裂くように簡単に破れるのだ。フロアボスも倒す事が出来た。
次の階層では同じ転生者と出会う。メイヘムだ。彼も私と似たような境遇だった。魔物に恨みがある者たちが集められているのだろうか。
8298階層でフロアボスの情報を集めている時にこの街で武術大会が行われている事を知る。八柱候補も出場すると聞き、魔王の情報が得られるかも、とこの街までやってきた。
しかし、ヨハンは八柱の器には程遠く、大会自体のレベルも低かった。ただ1人を除いて。
「彼女・・・アルルの目的は?あの強さならあなたの言ったように魔王を倒せるかもしれない。それって私と同じ目的って事になる!?それなら!」
「目的かぁ、そう言えば聞いた事ないなぁ。このダンジョンをクリアするとは言っていたけどぉ。」
ダンジョンクリア=魔王討伐!
彼女の力があれば楽勝だ!
ザバァ。
いても立ってもいられなかった。湯船を出て彼女の元へ向かう。直接聞かなくては!
遠くからオフィーリアが何か言っているが今はそれどころじゃない。
ガラガラ。
「アルル!」
勢いよく引き戸を開けると。
子供と湯船で遊ぶアルルの姿が。
ザバァ。
「お姉ちゃんも遊びに来たの?」
駆け寄ってくる子供。
滑って転ぶ。
「危ない!」
近寄って抱き抱える。
ザバァ。
「ほら、ニケだから言ったでしょ。走ったらダメだって。」
「アルル!あなたに聞きたいことが・・・。えっ?」
こっちを向いて立ち上がったアルル。
何か、ブラブラして・・・あっ、大っきぃ・・・
私はまた気絶した。




