29話 白馬に憧れて
幻獣ユニコーン
ここ6217層のフロアボスは今酷く怯えていた。
「ヒヒーン!(何だ何が近づいている!?逃げ出したい。フロアボスを縛る結界さえ無ければ!)」
天空に浮かぶ神殿。6階の最奥。ここがユニコーンのボスフロアだ。
そこに近付いてくる気配が2つ。1つはまるで魔力を感じない雑魚だがもう1つがヤバイ。8柱と呼ばれる魔神と同じ、いやそれ以上の魔力を秘めている!
ま、まさか魔王様か!?いやしかし私の様な虫ケラに会いにくるなどありえない。
凄まじい速度で現れた正体不明のunknownは神殿内の配下を瞬殺しながら登ってくる。
「ヒヒーン!(トラップはどうなってる発動していないのか!?何だこの速さは!う、嘘だろ!もうそこまで!くっ!ヤるしかない!)」
私は臨戦体制で扉を睨み付ける。
ドカッ!ズドオオオン!
重厚で巨大な扉があり得ない速度で飛ばされ私のすぐ側の壁に当たり爆散する。
「アス、扉はもっと静かに開けようね?」
「ハッ!失礼いたしました!」
頭の中が死で埋め尽くされる。何だあれは。人間の格好をした化け物がそこにはいた。
私とは魔力の質が違い過ぎる。こんなのどうやっても無理だ。結界があろうが無かろうが逃げきれない。相対した時点で死は確定している。
「あっ!あれってユニコーンちゃんかな?ほらアスが驚かすから震えちゃってる。」
「も、申し訳ありません。」
何だあれは角に尻尾の生えた少女は悪魔か?しかし魔力を感じない。それより隣の男の方だ。一か八か!
「ヒヒーン!(私の様な下等生物が発言する事をお許しください!)」
「ヒヒーン。(構わない、言ってみろ。)」
「何今の?アスはユニコーンと話せるの?すごーい!」
「ヒヒーン!?(あなた様は8柱の魔人様なのでしょうか!?)」
「ヒヒーン。(そうだ。)」
!?本物だ。敵で無いなら助かる可能性もあるぞ。しかしどのエリアを滑る魔神様なのだろうか。
「ひっ!ヒヒーン?(こ、ここへはいかなる御用でいらっしゃったのですか?)」
「ヒヒーン。(足だ。足を探しに来た。どうしてもお前がいいと言うのでな。)」
何だ?何を言ってる!?足?意味が分からないぞ。落ち着け。落ち着くんだ。
「アス、何て?」
「何をしに来たのかと尋ねられました。」
!!何だ、この違和感。何を話しているかは分からないが男が女にかしづいている?ような感じを受ける。それにこの悪魔の少女を見ているだけで震えが止まらない。魔力を一切感じないのにだ。恐ろしい。この少女が心底恐ろしい。
少女と目が合う!!ジョロロロ。
ああああああ。あまりの恐怖に腰を抜かし失禁してしまった。天空の覇者である私が・・・。
「あれ?ユニコーンちゃん、お漏らししてない?」
「ヒヒーン?(どうかしたか?)」
「ヒヒーン。(申し訳ありません。あまりの、そ、その恐怖で失禁してしまいました。そのお方は一体。)」
「ヒヒーン!w(ははっ!メスガキめ、これだけ巧妙に偽装してもバレバレだぞ!ハハハ!こいつはなあ、こんなナリをしているが破壊神だ。気をつけろ。お前が少しでも・・・ブベラァ!!)」
ズガアアン!!
何が起きた!?爆発?話していた魔神さまはどこへ?あっ!神殿の壁が吹き飛ばされて・・・!!!
「今アタシの悪口言ってたような気がしたけど、気のせいかな?わぁかわいい顔。ナデナデしたげる。」
ファァァァッ!!いつの間にこんな近くに!?
頭を撫でられる。あっ、でもこれ、気持ちいいしいい匂いがする。
「びっくりしたね。もう大丈夫だよ。ナデナデ、ナデナデ。」
喉を撫でられる
「あっ、そこ気持ちぃ。ファッ!今声が!」
「あははっ!触ったからパスが繋がったみたいだね。アタシはアルル。よろしくね。ナデナデ」
「わっ、私はユニコーンと申します。こ、こちらこそよろしくお願い致します!」
「ユニコーンちゃん礼儀正しいんだ。てかユニコーンちゃんて言いにくいからユニ子って呼ぶね!」
「ユニ子、う、承りました。あ、あの先程の魔神様は?」
「ああ、アスの事?呼んでみよっか?3、2、いーち、ぜ」
突如目の前の空間にボロボロの魔神様が現れた。
「たっ!ただ今戻りました!!はぁはぁ。」
「うん、お帰り!これがアス、アタシの下僕ね!」
「魔神様が下僕。まさか貴方様は魔王様なのですか?」
おそらく魔王様であるのは間違いなさそうだが確認してみる。
「違うよ?ただの人間。だよねアス?」
「ハッ!魔力の無いただのメスガ・・・ブベラッ!」
また魔神様が消えた。私の目で追えない速さでまた吹き飛ばされたのだろう。恐ろしい。
「言い方。それ嫌いだから2度と言わないで。」
どうやらアルル様の逆鱗に触れてしまったようだ。
「さてと、じゃあ乗らせて貰うよ?」
えっ乗る?私にか?いや、いけるか、この少女なら問題ない・・・はず。
「んしょ。あれっ?」
ズルッ ドテッ
落ちてしまう。
ファァァァァァァァァァァァァ!!
「も、申し訳ありません。ワタシのスキルが発動してしまったようです!」
スキル【乙女の夢】・・・清らかな処女しか乗ることは許されない。
「ほう、清らかな少女か。俺は汚れていると、ビッチだと言いたいワケだな?ふふふ」
雰囲気が変わった?モノ凄く嫌な予感がする。
「滅相もございません!アルル様は清流のように清らかな心をお持ちでございます!」
「じゃあなんで乗れないのかな?」
「そっそれは?・・・分かりかねます。」
実際何故か分からない。処女なら乗れる筈だ。なぜだ。処女なのに処女じゃない?
「あっ!」
「なにか気がついたみたいだけど言わなくていいよ。」
ヒィィィィィィィィィ!
「さっきのは足滑っただけだし。乗れるってとこ証明したげる。」
飛び上がって背中に跨る少女。
「え?なっ何を!?」
バチチチチチチチチッ!
スキルが発動し騎乗した者を弾こうとする。
!!!何だ背中に激痛・・・が
「痛ってええええ!!ぎゃああああ!」
「ほらねー。簡単に乗れたよー!」
もの凄い力で背中をガッチリ掴まれている!
スキルをもってしても弾けないとかどんだけの力だ!
「ぎゃあああ!痛い!痛い!痛い!早く降りろゴルァァァ!!」
ボキン
「あっごめん折れちゃった。」
泡を吹きながら崩れ落ちる私。
「今治すねー起きたらまた乗馬の練習の続きしよう!ちゃんと乗れるまで頑張ろうね!」
拷問の始まりだ。私は気絶した。




