101話 二人の魔王 二つの世界
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「・・・主様よ、あの黒蛇の魔力・・・只事じゃあないよ。勝算はあるんかい?」
エクスから念話。
「どうだろうな。」
「ベリアルの奴に使うてたオールディーズのダークなんちゃら出すんじゃろ?」
オール・デイライトな。ダークエネルギーの事を言っているのか。
「いや、あれは使わない。と言うか私には使いこなせないんだ。今のシス相手じゃ勝てんな。」
ダークエネルギーには相性があるらしい。
「何言うとんじゃ!出し惜しみしちょる場合ちゃうど!」
そういうワケでは無いのだが色々ややこしいから今は説明している時間はないな。
「任せておけ。」
一言そう言う。
「・・・ああー!!よお分からんがここまで来たら主に全てを預ける!オールディーズぶちかましちゃれ!」
デイライトな。
エクスを上段に構えシスと相対する。闇の中心から此方を睨む黒龍。前方には赤く輝く魔力の渦。
「あのダンジョンより厄介だな。」
果たして勝てるだろうか。
負けたらどうなる?
死。そして、無か。
「ははっ何て事ないな。よし。」
幾度も繰り返した自問自答。
【 オール・デイライト 】
魔力の使えない暗闇のダンジョンで得たモノ。
光。
暗闇を照らす光の道標。
魔王になる為に光の技を修める。わけが分からないが事実なのだから仕方ない。
誰かが仕組んだのか?私の生来の資質がもたらした結果なのかは不明だがベースにあるのは癒しの力だ。術を発動すると同時にエクスが輝き出す。
シスの魔力が極限を超える。来る!
「那由多の咆哮!!」
ズオッ!!!
シスの波動が解き放たれる。
迫る魔力渦に上段からエクスを振り下ろす。
キィィィンッッッ!!!
絶望の闇に対するカウンター、希望の夜明け。
全てを飲み込まんと迫り来るシスの波動と正面からぶつかりあう。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「グガアアアアアアアアアアアアアア!!」
シスの咆哮。圧力が更に増す。
魔力の暴風。
これはディスペアの負のエネルギーだ。死んだ者の怨嗟や怒りが凝縮されている。一体どれ程の者が散って行ったのか。
魔王討伐に送られた勇者、冒険者、転生者、超越者たち。
侵略者に討たれた魔物たち。
無念、つらく苦しい報われない思いが流れ込んでくる。
いつだったか駄女神が言っていた言葉を思い出す。
魂の穢れは回復出来ない・・・だったか。
その結果訪れる深い絶望と悲しみ。
そうした思いがシスの魔力と混ざり合い変質したものがこれだ。
だがな
明けない夜なんてないのさ。
闇は必ず陽の光に照らされる。
そして今がその時!
振り下ろしたエクスに光が収束する。
それを一気に斬り上げる!
「 ライジング・サン! 」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
光と闇が激しく衝突する。この圧力!想像以上だな。
だが負けるわけにはいかないのでね。
グワアアアアアアアアアアア
体の奥から力が湧き上がって来る。
「上等!」
剣から放たれた光のエネルギーは絶望の咆哮を飲み込みシスを直撃する!
ボッッッ!!
!
刹那、シスの記憶や感情が流れ込んできた。
そうか・・・これはディスペアの呪い、か。
・・・・・・・・・。
私が解き放ってやろう。
君は自由だ。
パアアアアアアアアアアアアア
瞬間、闇は消え眩い光に包まれる。
精神空間。
真っ白な空間に立つ私の前に揺らぎが起こりシスが現れる。
「よもや妾が負ける日が来ようとはのう。」
少女の姿のシスが語りかけてくる。
意識体か。
「ははっ、割と最近モロクに負けただろ。」
「あんなもんノーカンじゃ!ワザとじゃからな?まぁ、ぶっちゃけ、あの時はこのまま死んでもいいと思ったがのう・・・死ねんかったわ。」
ケラケラ笑う。
「ディスペアの呪いは光と共に消えた。後は好きに生きるといい。」
「呪いってなんじゃ?」
「君をここへ縛っていた洗脳みたいなものだよ。」
「洗脳?ふむ、言われてみればなんかスッキリしたようなしてないような。んー、よく分からんの。」
「ハッハッハ!縛られずとも君は愛していたのだな。この世界を。」
「当たり前じゃろ?妾こそがディスペアの魔王じゃ!と言いたい所じゃが負けたんじゃったな。最早タダの魔物か・・・。」
ションボリしている。
「ステータスを見て見なさい。」
「はあ?ステータス?・・・なんじゃこれ!?魔王の称号があるんじゃけど!!?」
魔力の復活と同時に称号も戻ったようだ。
ちなみに私の称号が消えた訳では無いので現状この世界には2人の魔王がいる事になる。
「そう言う事だ。後は宜しく頼む。」
「よろしくって!?お主は魔王やらんのか?」
「私には帰る場所があるのでね。こっちにも遊びには来るが。」
一応領主のようだしな。
「そうか、外から来た冒険者じゃったな。元の世界へ帰るのか。」
「ああ。」
「お主との戦い楽しかったぞ。」
「ああ。」
「またやろう。」
「ああ。」
「ああ、ああ、って愛想の無い奴じゃのう・・・グスッ・・・うえっ!?なんで涙が。」
「私と別れるのがそんなに悲しいのか?」
「違うわ!・・・ただ、やっぱり・・・・・・負けるのは悔しいのう。」
涙目。
「今度稽古をつけてやろう。」
「ぐぬぬ・・・調子に乗りおって!次は勝つから見ておれ!」
「ふふふ、楽しみにしておくよ。」
再び眩しい光に包まれる。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
晴れ渡った青空の下、舞台に立ち気絶したシスをだき抱える。
歓声は無い。
皆、精神不可に耐えきれず現実世界に戻されたようだな。
数人を残して。
「私たちも帰ろう。」
景色が崩れ落ちていく。
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帰るのか?あの何も無い世界へ。
「故郷だからな。」
・・・・・・。
元の世界・・・か
BLACK OUT




