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絶望の果て  作者: 馨
100/103

100話 絶望の世界


─── side カイネ ───


「!!? なんじゃアレは!!永久の劫火を刀に纏わせたのか?不可能だ!!」

有り得ん!!


「あれって、ディスペア流ってやつぅ?カイネが使ってる剣術よねえ?」

シトリーが聞いてくる。


「・・・ああ、ディスペア流だ。しかもあの女が開祖らしい。」

あれだけの魔力を完璧に制御している。開祖と言うのは本当だろう。


「へー、じゃあカイネもやり方教えてもらえば?あはは!」

夢魔風情が!舐めおって!!


「くっ!あの程度私にも出来るわ!」

刀を抜き魔力を解放・・・出来ない!?実体ではないせいか!?くそう!


「どうしたの?やっぱ出来ないじゃん!ウケるーw」

ケラケラ笑っている。


ぐぬぬ。


ぽわん


猫になりシトリーの顔を引っかく。

にゃにゃにゃにゃにゃ!


「ちょ、何!?止めて!」

シトリーの膝に飛び乗り丸くなる。


「ほんと何なのー。」

背中を撫でられる。

ふん、今はこれくらいで勘弁してやろう。


スクリーンに映る二人が剣を構え流星を放つ。

場内が光に包まれる。

ははっ!こうなるか。


「何よこれ!?爆炎が体を!・・・抜けていく?」

実態の無い体や調度品などの物には影響は無い。無いが世界は業火に包まれる。

永久の業火を使うとこうなる。生きてこの光景を見る事が出来るヌシらは幸運じゃぞ。


「・・・綺麗ね。」

シトリーが呟く。

眩い閃光が辺りに煌めく。アルとシスの流星がぶつかり合っているのだろう。


「ひぇー、ウチらこんなバケモンに喧嘩売ってたんか。こらあかんわ。」

フルフルが両手を上げるが、その目は爛々と輝いている。食えん奴だ。


「神が警戒するのも当然だな。奴らもこの戦いを齧り付いて見ているだろうよ。今頃大騒ぎだな。ハッハッハ!」


「ベリアルが素で笑ってるとこ初めて見たかも。」

シトリーが私のノドをワシャワシャしながら呟く。ベリアルめ、アルと戦って何か吹っ切れたのかもしれんな。


「モロク!もう一杯エールを・・・いやハイボールを頼む!」

「あー、ワイはカルーアミルクな。」

・・・・・・。


「かしこまっ!」

この状況で酒の準備をするモロクも大した胆力じゃの。


フレアの中に咲き誇る光の花か。

ここは地獄か楽園か。フフ。



─── side ヨルムンガンド ───


炎に包まれた室内。

ああ、この技はあの時の・・・

アルと初めて会って戦った時勝負を決めた、あの技だ。

シス様が作ったのか。そりゃあ俺が負けるわけだ。


「キース、俺はこの技を食らった事があるんだぜ?」


「マジかよ!?よく生きんてんな。」


「はっ!死にかけたトコをよお、アルに助けてもらったのよ。マジヤバかったわ。」


「んだよ、そのまま死んどけよw」

ん?


「アルって弱者に優しいよな。」

弱者?


「情をかけられて惚れるとかダセェw兄貴チョレーwww」

よし!コロす!


「ヨルム、馬鹿に付き合うな。黙ってこの戦いを見届けろ。」

メフィストに釘を刺される。


「チッ、わーってるよ。」

ソファに座る。

改めて見るとスゲェな。炎(フレアか?)の中で二人の剣閃が星々の様に瞬いている。動きがまるで見えねえ。実体だったらここにいる奴ら全員死んでるんじゃねえのか?


「シス様もアル様もしゅごスギいいいい。はぁはぁ、このお二人に使える事が出来るなんて至上の喜びだわ!」

ローズが騒いでいる。


「発情期かな?ヨダレ垂らしてだらしない。気持ちは分かりますよ・・・こんなものを見せられてはね。」


「あなただって澄ました顔してるけど・・・あらあら、下は大変な事になってるようね。」


「!? ちょっと何言ってるか分からないわ。」

本当に何を言ってるんだ?


「・・・チッ、分かったわ。証明するから見せなさい!オラァ見せやがれ!」

ローズがオフィーリアのスカートに掴みかかっている。


「止めろ馬鹿!」

二人がじゃれ合う。こんなに仲良かったか?


ドンッ

テーブルにグラスを置くメフィスト。

「昔聞いた事がある。シス様は生まれた頃魔法を使う事が出来なかったそうだ。」

急に語り出したぞ。どうした?テーブルにはウィスキーの空瓶。酔っているのか・・・。


「魔法が使えないなら剣を使えばいいじゃない。そこから剣の修行・・・いや殺戮か、一方的な蹂躙劇が始まったのだ。これによりディスペアの生命4分の3以上が死滅したと言われている。」

マジ?


「伝承で伝わるあの大災害がシス様の仕業だと?使徒の侵略じゃなかったのか。」


「逆だ。使徒はシス様を収める為に飛来したのだ。」


「はあ?使徒がディスペアを救ったってえのか!?冗談だろ。」


「真実だ。使徒の真意は不明だが・・・ここが無くなると都合が悪いらしい。」


「なら尚更今になって戦争仕掛けて来る理由が分からねえな。」

アルが絡んでいるのは間違いねえだろうな。アルが現れてからこの世界はうねり始めた。絶望の破壊神、悪の救世主、色々と言われているようだがこの戦いを見る限りアルとシス様は同種の存在。


ただの戦闘狂だ。



─── side システィーナ ───


ドドドドドドドドドドドドドドドドドド


膠着状態が続く。

ここまで拮抗するとは相性がいいのか?妾のワザに逃げずにトコトン付き合う懐の深さ。こ奴の事、少し舐めていたかもしれんの。


「ハッハー!どうした!打ち込みが甘いぞ!もっと気合いを入れんか!」

アルが楽しそうに笑い、技を繰り出す。

妾が開祖なんじゃけど!?


「黙れ!小僧ッ!!」

しかし、業火の剣を初見で出したり、この技の鋭さ・・・恐るべき戦闘センスじゃな。相当な死線を潜っとるわ。妾の様な生まれながらの強者にはその辺の経験が足らないんじゃよなあ。


別に必要無いがのう。


「龍爆」


ドゴオオオオン!!

「うおっ!?」

アルが吹き飛び後方数百キロ四方の山脈が消し飛び地形が変わる。


相手が誰であろうとやる事は変わらない。

チカラでねじ伏せる。ニヤリ。


アルの元へ転移。

「凄いな。私の魔装を貫くとは。今のは魔法か?」

アルの腕から血が流れている。が光に包まれ治癒される。ちっ、あのレベルの攻撃を受けてノーダメとは。


「魔法では無いよ。龍の咆哮じゃ。妾は龍神と魔神のハーフじゃからの。」


「はっ!素で強いのか!ならばなぜ剣など使う?」


「遊びじゃよ。暇つぶしじゃ。」

ディスペアの魔物と遊んでいるうちにスキル化していたのには笑ったがの。


「それなら元の姿になればもっと強いのかな?」


「当然じゃ。ふむ、体も温まって来たし、余興はこの辺でいいじゃろ。」


「ああ、真の姿見せて貰おうか。」


「悪いが手加減は出来んぞ。死ぬ覚悟は出来とるよな?」


「ふっ、死と隣合わせの人生よ。」


「上等。」ニヤッ

姿を変えるのはいつ振りだ?最後は、そうか使徒との・・・


【 龍神化 】



─── side フェリド ───


龍へと変化していく魔王。

「フェリド様!あの姿は!」

ルナが叫ぶ。


「龍神だな。」

姿は私に近いが纏う空気は別物だ。絶望のオーラを拡散している。全ての魔物が見ているこの状況・・・いくら精神体だけだとしてもマズいのでは・・・


「何よ・・・あれ・・・。」

ルナが膝をつき倒れる。バタバタと倒れる者たち。意思の弱い者はあの姿を見ただけで気絶してしまう。実体なら死んでいただろう。この部屋で意識があるのは私だけか。


ガタン

「あ、アル・・・ル。」

魔法使いのリリムがカウンタテーブルに寄り掛かり耐えている。

抱き抱えソファに座らせる。


「大丈夫だ。無理をすると精神を損耗するぞ。眠っていなさい。」

落ち着かせる。


「アルル・・・負けない・・・よね。」

私の目を真っ直ぐに見つめ袖を強く掴まれる。


「ああ、アル様なら必ず勝つさ。」

ふっ、と笑い気絶する。強い娘だ。


暗闇と絶望が世界を覆う。


アル様・・・。



─── side フルフル ───


「あの龍。えげつないのう。」

龍から噴きだしているモノは闇そのもの。深淵とは良く言ったもんや。


ぽわん


カイネが人型に戻る。

「なんじゃあの蛇は。人に戻ってしまったわ。」

猫は蛇に弱いのか。


バタバタッ

モロクとオラフが瘴気に当てられ倒れる。


「ちょっとー何寝てんのよー。エール持って来なさいよー。」

オラフの頭を足で蹴飛ば・・・そうとするも透けて通り過ぎてしまう。攻撃判定されてるやんけ。


「チッ、んー、あっ!フルフルー、エールお代わりー!」

なんでやねん!


「私はポン酒じゃ。ぬる燗でな。」

面倒くさっ!シバくぞメス猫!


カチャカチャ

なんでワイが酒の用意せなアカンねん。


「これがシスの・・・ディスペアの王の姿か。」

ベリアルの見つめる先にはモニターに映る黒龍。


「化け物やね。ウチらに捕まったんも何かの意図があったんやろなあ。」

シュワシュワ

エールサーバーがキメの細かいクリーミーな泡を生み出す。


「お前はどこまで知ってるんだ?」

ベリアルが訝しげな目でチラリとこっちを見る。


「何も知らんがな。ワイの仕事はアルルちゃんの監視やからな。盗み撮りした制服姿のエロい画像とかあるけど見たい?」


「・・・結構だ。お前に聞いた俺が悪かったよ。俺もエールのお代わりを頼む。」

だからワイ店員ちゃうからな!?


「プルプル、ポン酒はまだか?」

フルフルや!


「今お湯沸かしとるから待っとけや!」


酒の準備をしつつ窓から見える光景に得も言えぬ焦燥を覚える。

地獄の蓋が開いていく。テレサちゃんアンタの予想が当たってしもたなあ・・・。


「おい!炙りイカは無いのか?」


「あるわけないやろ!ボケェ!」



─── side オフィーリア ───


「あれがシス様の真のお姿なの!?美しい。」

マリーが感嘆の声を上げる。美しい、か。確かに見るものを引き込む美しさ。いやそれよりも


「怖っ!んだよ魔王様って蛇だったのかよ!」

そう、恐ろしいのだ。災禍を振り撒く龍。姿形は異なるがアルル様に初めて会った時を思い出す。


「蛇では無く龍だ。キースはシス様の変身した姿を見た事なかったか。」


「無えよ。あんなもん暴れたらダンジョン無くならねえか?」

そう、あれはまさに破壊神そのもの。メフィストの口振りだと過去にも龍になった姿を見たのか。


「大陸をいくつも吹き飛ばしていたぞ。本人曰く『魔力が尽きるまで止まらない、なったら最後you can't stopじゃ!カッカッカッ!』だそうだ。」

楽しそうなシス様の姿が浮かぶ。恐ろしい。


「あの姿を諌められるのは先代魔王か上位天使くらいだけだが、それも昔の話だ。今のシス様を押さえるのは厳しいだろう。」

アルル様以外にはね!


「じゃあマジでアルしかいないじゃん倒せるの。」


「そうよ。アル様なら必ずシス様を鎮めてくださるわ。」

キースの意見にマリーも同調する。彼と関わった者ならそう言うだろう。


ズオッ

黒龍のプレッシャーが跳ね上がる。くっ、気を張っていないと意識が。


「おいおい、こりゃ流石にヤベェだろ。アルでもよう。」

目を見開いて外を見るヨルムの額から汗が流れる。


バタッ


後ろを見るとアスが倒れている。

・・・・・・。


「シス様ああああ!はぁはぁ、これしゅごいいいいいい!しゅごいのおおお!くっひいいいいいいいいいん!」

バタッ

・・・・・・。

もうやだあ。グラッ

危ない!一瞬でも気を抜くと意識が。


「はははははっ!ローズのやつイキながらイキやがった!はははははっ!腹いてえ!あっ・・・」

バタッ

・・・・・・。


「ふー、この場で倒れた者は八柱から除外だな。」

同意だわ。


スクリーンのアル様が剣を上段に構える。

ヤバッ!

アルル様も本気だ。あんな顔見たの初めて。ブルル、震えが・・・。

直接気を当てられているわけでも無いのにこの凄まじい圧力。鼓動が早くなる。


「アルル様の剣から放たれる光。魔力・・・じゃない。あの光は一体・・・」

暗闇を照らす光。


「使徒の神霊力に似ているが別の気配を感じるな。」

メフィストにも分からないのか。

アルル様・・・。


黒龍の前方に魔力が球状に収束する。あれはこの世の全てを飲み込む災禍だ。あれが放たれてもディスペアにいる私が死ぬ事はない。死ぬ事は無いのに体は震え心臓は早鐘を打つ。


「メフィストよう、本当にディスペアに影響は無えんだよなあ?この世界のみで終わるんだよなあ?」

ヨルムンガンドがメフィストを睨む。


「知るわけないだろう。もはや私の理解の範疇を超えている。だが、これだけのエネルギーだ。衝突したら時空に揺らぎが生じるだろうな。並行世界や異世界にどれだけの影響があるか・・・無論天界を含めて。」

ああ、気が遠くなる。後はもうアルル様に委ねるのみ。

アルル様!手を組み祈る・・・


何に祈ればいいのだろう?



─── side システィーナ ───



挿絵(By みてみん)



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


アルの奴め此方が動くのを待っているのか。では見せてやろう。妾の魔法を。


妾が魔法を使う為には面倒だが詠唱が必要となる。

魔法として放たれる砲撃は単純に魔力を解放する魔力砲とは別次元の威力を叩き出す。


『シラ・マイハ・ルイ・ナ厶ダ・ズィーヤ・イ・ライド・ハカ 深淵に使えし冥府の八王 我が命ずる 聖杯を死者の魂で満たせ 黒き魂を捧げ その力を示せ』


収束した魔力が渦を巻き赤く輝く。

アルを見る。

上段に構えた剣から光が放たれている。その表情は・・・面白い。

受けてみよ!



『那由多の咆哮!!(ディシリオン・ロア)』



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