妹らしいドイツハーフ美少女のシュガーさん。ある日両親に「実はお前たちの血は繋がってない」と言われた。だろうな!!両親は純日本人だからな!じゃあ誰の子?「お前の許婚」 「はぁ?」
ドイツハーフ美少女もいいよねって話
——可愛い妹がいたらどうする?
まぁどうもしないだろう。あっ、自己完結してしまった。
僕の名前は樋之口船希。どこにでもいるであろう、ごくごく普通の男子高校生。普通すぎて特に言うべきことはないのだが、趣味を挙げれば料理とゲームとラノベ。
あっ、こいつオタクだなと思ったやつ出てこい。今やオタクをバカにする時代は終わったんだよ。
と、まぁ話が脱線したところで誰得か分からない僕の家族構成について説明しよう。
樋之口家は父、母、兄、妹の四人で暮らしている。父は会社員、母はパートと普通の家庭。そして一つ年下の高校一年生の妹がいる。今時、妹がいるなんて珍しくないだう。
問題は彼女自身にある。
樋之口シュガー。
白髪ロングのハーフアップに青と琥珀色のオッドアイ。胸はまだまだ成長期中だが、整った綺麗な顔立ちと落ち着いた立ち振る舞いで一年生ながら『学校一の美少女』と呼ばれるドイツとのハーフ美少女だ。
容姿淡麗、成績優秀な才色兼備。
血が繋がってるとは思えないほどのスペックの違い――つか、ぜってえ繋がってないだろ。僕の両親は純日本人なのに、ドイツハーフの子供が生まれるわけないだろ!!
と、疑問を抱え数年が経ったある日。
「実はお前たちは血が繋がってない」
さぁこれから夕食だという時に告げられた。
せっかく僕が作ったハヤシライスが冷めちゃうから早く食べて欲しいんだけど。
「船希ちゃん落ち着いて」
いや落ち着いてるわ。
どちらかというと、早くハヤシライスを食べてくれないかなーとソワソワして落ち着いてないと思う。
今日のハヤシライスはすごく凝ったんだよ。赤ワインも入れた本格派。ほら見てよ。とろとろ卵もトッピングしてすごく美味しそう。だから早く食べて。
「お兄様、今まで騙して申し訳ありませんでした」
申し訳なさそうに眉を下げて謝るシュガー。
いやだからハヤシライスを食べて。
「僕は騙されたとは思ってないから! すんごいバレバレだったから! 大体シュガーがうちにいたの小学二年生の頃からだったじゃん。そりゃ気づくよ!」
「……混乱してるんだな。俺からも謝る。すまない」
「いや、だから……」
「お母さんも謝るわ。今まで騙していてごめんね」
「いや……」
「お兄様、大変申し訳ありません」
「……」
この人たちは僕に「そ、そんな!?」と驚いてもらわないとダメなの。あれか。ドッキリが微々な反応だったからせめて雰囲気で察して反応してほしいみたいな感じか。
「あー……ワァ、ボクビックリシター」
ハヤシライスは温めればいいか……。
僕の棒読みで三人が謝るのはストップした。つか、謝る気なかっただろう。
じゃあ次は僕の番だ。
「とりあえず親父と母さんのどっちかがドイツの人と浮気してたでオッケーだよね。早く白状しよう。あー大丈夫。どちらにしろ僕は引いたり嫌いになったりはしないから。世間的にはちょっとだけど、バレなきゃオッケーだしね。あとは——」
「船希!? ちょ、ちょっと待ってくれッ!」
「んぁ? あ、浮気してたの親父だったのか……。ちょっと待ってて。今反省文書かせるから」
「だからちょっと待てって!」
もしもの時に手作りしておいた反省用紙(8000文字)を取りに行こうとしたところ、親父の焦った声がしたのでやめた。
「コホンッ……父さんと母さんはどっちも浮気なんてしていない。大体、俺が母さん以外と浮気すると思うから? 俺はな、学園のマドンナだった母さんに——」
「あーはいはい。そういうのはいいから。早く説明して」
惚気話が始まりそうだったので阻止する。
「じゃあ分かった。単刀直入に言う。シュガーはなぁ……」
「おう」
「お前の許婚なんだ」
「はぁ?」
許婚? 許婚ってあれだよな。両親同士が将来お互いの子供を結婚させる約束みたいなやつだよな。
「シュガーの本当の名前はシュガー・ペルト。俺が昔ドイツでホームステイした先の息子の娘さんなんだよ」
ほ、ほーん……。
その後、色々あって今度はシュガーがうちにホームステイすることになったとか。
その色々が知りたいんだよ。
許婚という話になったもの詳しくは教えてくれなかった。
結局、今分かっていることはシュガーは血の繋がった妹ではなく、許婚。
とりあえず浮気じゃなくて良かったわ……。
◆
「妹が許婚とか言われたらどうする?」
翌日。僕は隣の家に住む幼馴染の上条高嶺の部屋でゲームをしていた。
「んー、そりゃびっくりするでしょ。何々、シュガーちゃん許婚だったの?」
「ああ。それどころかドイツには告白文化がなくて自然と恋人になっていくらしいよ」
「じゃあ船希はシュガーちゃんの彼氏になったのか」
「どうなんだろう。よく分からんない。僕の今の気持ちはあれと一緒だよ。高嶺が僕の許婚だと言われて、付き合えるのかって例えとおんなじ」
「別に付き合えるけど」
「例えをオッケーしちゃったら僕が相談してる意味がないんだけど」
そんなにアッサリ言っちゃうものなの。
「アンタも考えてみなさいよ。私が今から付き合うって言ったら付き合っちゃうでしょ?」
「いやいや、僕はそんな軽い男じゃ……」
僕が求める条件
なんか一緒にいると落ち着く ◯
一緒にいると楽しい ◯
一緒にゲームをしてくれる ◯
……。
「……付き合えるな」
「でしょ」
高嶺と付き合ったら間違いなく尻に敷かれるけど、それなりには楽しそう。
だけど……
「正直、高嶺のことは家族以上恋人未満ってところかな」
「まぁアタシもだけどね」
家が隣同士で幼い頃から毎日のように遊んで、もはや姉弟と言ってもいい。だから僕は高嶺を異性としては見れない。
現に今だって僕があぐらしてる上に高嶺が乗って、背中を預けている状態。よく僕らは『夫婦』とか『距離感おかしくない?』とか言われるけどお互い気にしたことはない。
「じゃあシュガーちゃんとも付き合えるんじゃない? 私よりは一緒にいた時間は短いけど、もう十数年も一緒にいるじゃない」
「シュガーねぇ……」
外見も内面も完璧なドイツハーフ美少女。
そして……
「私の時は速攻で言ったのに、シュガーちゃんのことになると迷うよね。それって……最初から妹として見てないから?」
「……」
高嶺には敵わないな。今だって僕がなんで遊びにきた理由なんて分かっているのだろう。
「失敗したら慰めてあげよっか?」
「いらんわ」
「そ。じゃあ成功したら私に感謝してよね」
「ああ。めっちゃ感謝して料理振る舞う」
「ふふ、じゃあ明日楽しみにしてるね」
◆
夕方。僕はシュガーと近所の公園に向かった。久しぶりに行きたいと口実で。
「変わりませんねこの公園も」
懐かしむように見渡すシュガー。
滑り台にブランコに鉄棒と遊具は少ないが敷地はサッカーができるくらいには広い。
「そしてお兄様はあの時と全く変わりませんよ」
「あの時?」
「ふふ。実はお兄様とは妹になる前に会ってるんですよ」
シュガーは僕が知らない前提で話しているが、その日のことは鮮明に覚えてる。
~十年前~
幼馴染の高嶺と近所の公園に集合という約束をしていて、今日は僕の方が先に来た。
何やら人だかりができていたので覗いてみると白髪の女の子が泣いていた。
「おいコイツ。目の色が違うぞ!」
「うわっ、妖怪じゃねーか!」
白髪の女の子の瞳は確かに青色と琥珀色で左右が違う色だった。
「その子凄く可愛いじゃん。お前らの目の方が腐ってんじゃねーの?」
思ったことがそのまま口に出た。
「あっ? なんだよお前っ」
「おいコイツって……」
「あー! お前、あのゴリラ女の子分じゃねーか」
当時、男勝りでガキ大将だった高嶺の子分として僕はそこそこ有名だった。下っ端扱いされて多少ムカつくところもあったが、こういう面倒ごとには高嶺の存在がでかかった。
高嶺の子分ってたけで相手がびびって逃げていくから。
その男の子たちの逃げるように去っていった。
「あの……っ」
「ん?」
「ありがとうござい……ました……」
「おお、いいってことよ。それより君の瞳、すっごい綺麗だね」
「へっ……変じゃないですか?」
「変? 僕は凄く綺麗だと思うけど……。なんなら僕と交換して欲しいくらいだよ。あっ、でも目玉の交換とかヤバそうだね。代わりにもっと見ていい」
「は、はい……! 良いですよ」
と、子供ながらに初対面の女の子の瞳を見つめて良いですか? なんて聞くとは肝が据わっているというか、恥知らずというか、なんというか……。まぁこの度胸も高嶺譲りなのかもな。
「この瞳を褒められたあの日から私はお兄様のことが好きでした。でもまぁ、お兄様は覚えてませんよね」
「覚えてるよその日のこと」
「えっ」
戸惑うシュガー。
だって……
『ありがとうございます』
僕が褒めるたびに笑う彼女。
その笑顔に一目惚れした日だから。
「なぁシュガー。ドイツには告白文化はないって言ってたよな」
「は、はい……」
「でもそんなのはドイツのルールだ。ここは日本。そんなものは通用しない」
「で、ですよね……。あはは……」
「あと、許婚とかも勝手すぎる」
「う、うぅ……。でもこうしないとお兄様が誰かに取られちゃうと思って……。許婚の件は私がお父様に頼み込みました。同棲も私の提案で……」
うちの親はその二つをあっさり認めた訳か。息子を簡単に売りすぎだろ。
まぁ、そんなことしなくても僕はとっくに――いや。同棲したおかげでシュガーの良いところをたくさん見つけることができた。
シュガーの可愛らしい理由に、ふ、と思わず口を綻ばせかけるが、これから笑っていられる状況でもないので顔を引き締める。
「たくっ、人の気も知らないで色々やりやがって……」
「あぅ……すいません。でも私は――」
彼女の唇に人差し指を当て言葉を遮る。
「ここからはこっちの順序でいかせてもらう」
「えっ」
僕はシュガーの前に跪く。
突然の行動に困惑が隠せない彼女だったが、次第に何をしようとしているか分かったようだ。
ドッドッドッと心臓が脈打つ。
いくら長年一緒にいた相手だとしても告白は緊張するわ……。
ポケットからハンカチを取り出し、その中に包まれていた指輪を彼女の前に差し出す。
「好きですシュガー・ペルトさん。僕と付き合ってください」
こんな洒落たことを公園でやるなんてちょっと恥ずかしい。子供のいない時間帯で良かった。いたら絶対冷やかされる。
「……っ」
シュガーは僕の指輪とハンカチを取った。そしてそっぽを向き、ハンカチで何がを拭いていた。
僕は何も言わず、ただ待つ。
そして……
「はい。喜んで」
彼女は微かに充血した瞳を見上げてとびっきり可愛い笑顔で言った。
返事を聞き、深く長い溜息を吐く。
「って言っても、それはオモチャだからサイズは小さい。小指だったから入ると思う」
と、僕はシュガーの小指に指輪をはめた。
そして彼女の手を持ったまま告げる。
「数年後。本物の指輪を薬指にはめる。だから今は小指の指輪で我慢してくれ」
少しの独占欲ってところだな。
ちなみに高嶺の部屋に遊びに行ったのは、少しでも緊張を紛らわすため。最終的にはバレていたが、深くツッコまないでくれたのは流石幼馴染の気遣いといったところだ。
「お兄様。私、今……最高に幸せです」
泣かせたいわけじゃないのに、シュガーの目からはポロポロと涙が溢れるばかり。そんな彼女を宥めるように頭を撫でる。
可愛い妹が許婚だったらどうする? 別にどうもしない。
ただ、可愛い妹が血の繋がった妹じゃなくて、許婚で、好きな女の子だったどうする?
もちろん付き合ってくれと告白するに決まってる。
「お兄様じゃないだろシュガー」
シュガーの前に手を差し出す。彼女は俺の手を握りると……
「大好きです船希くん」
満面の笑みで初めて僕の名前を呼んでくれた。
小指には銀色に輝く指輪。数年後には本物の指輪と綺麗な白髪よりも純白のドレスを身に纏っている。
結婚生活は甘い甘い角砂糖みたいな生活だろう。まだまだ先のことなのに妄想してしまう。
「ん……」
すると涙で濡れる青色と琥珀色の瞳が細められていく。僕はその見惚れる程に美しい顔を見つめて……
「好きだよ」
未来の奥さんに誓いのキスをした。
その後、シュガーが距離感が近い幼馴染の高嶺に嫉妬しまくるのはまた別のお話。
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