2日目 2
お店を出て、3人は課長の家へと向かう。運転手をかってでたのだが早苗さんが自分で運転するとの事で却下された。その間に自分の部屋を全て片付けておけと指示を受ける。一時の小夜ちゃんとの別れ、俺の事を忘れないでねーっとハンカチを噛み締めてる気持ちで見送る。さぁて、家に帰る前に買い物をして来ようっと。
マンションに着くと、家には戻らずにそのまま駐車場へ。本当は食材を買って来ないといけないけど、小夜ちゃんと一緒じゃないから意味が無い。だから輸入食品&雑貨の店。ここでティーポットと紅茶の葉を買う。とは言え、紅茶には疎いから店員さんにお勧めを聞く。
「最近はフレーバー系がお勧めですよ」
フレーバー系?
「アップルとかストロベリーなんかの香りがついてるものです最近は色々あるんですよ」
へぇ、そんなんあるんですか。
「お好みがわからないのでしたら柑橘系なんかお勧めです」
えぇ、確かにお好みはわかりません。柑橘系が好きかどうかもわかりません。
「なんか、普通のってあります?」
「えぇ、香りや飲み方で変わりますけど、一番メジャーなのがダージリンですかね。アッサムもお勧めですよ。後はアイスティーにするならディンブラとかなんていかがですか?」
???やばい、何言ってるのかわかなくなってきた。
「えーっと、どうやって飲むのが好みかまだわかんないんですよ」
「そうですねぇ、ならニルギリが向いてるかもしれません。蒸らす時間などを変えればミルクティーもいけますよ」
「なら、それをいただけますか?」
「はい、等級はよろしいですか?」
「はい…。よくわかりませんが」
「FTGFOPです」
「は、はい…」
「分量はいかがされます?」
「50gでもいいですか?」
「はい、大丈夫ですよ」
ってな具合で紅茶葉を購入。次に来るときは勉強してから来よう…。後フレッシュも忘れずに購入。
よし、まずはこれで良しっと。そしたら次は鍵屋さんへ。スペアキーを作ってもらおうとしたけど、
「これは電子キーですね。うちで複製は出来ませんよ」
えっ?出来ないの?…まぁいいや。家にスペアが一本あった筈。管理会社へ連絡して一本作って貰わなきゃ。
後はちょこちょこっと寄って、帰宅。もうそろそろ小夜ちゃん達が帰ってくるかな、っとすると携帯が鳴る。メールの着信だね。相手は早苗さんか。噂をすればなんとやら。ついでに時間を見ると3時前か。
『もうすぐ帰るよ!配送をお願いしたから一緒にお家に着くと思う。』
はーい。んじゃ返信っと。
『わかりました。玄関を開けておきます。』
これでよしっと。んじゃまぁ自分の部屋を片付けようかな。って言っても配置なんかは太一君とやってしまったので、パソコンを繋げて本を並べるだけなんだけどね。ただ、パソコンのつなげ方が・・・。これって同じ色のケーブルを差せばいいんだっけ?よしっ!・・・・・・・・・・・・青色はどっちに差せばいいの?なんか2つあるんだけどさぁ・・・・・・。しかも差し口がいっぱい余ってるんだけどいいの?これ。まぁ動けばいんだよ、動けば。動かなかったらまた来てやってもらおうっと。
さぁて、本を棚に並べて・・・。この辺は積んでおけばいいや。よしっ!これで完了っと。するとタイミングよく、
「ただいまー」
と3人が帰ってきた。そして玄関先でごたごた何かしてる。あぁ、配送の人も一緒に着いたか。んじゃ、ちょっと様子を見てこようかな。
「おかえりなさい。どうでした?」
「ええ、無事に買い終わったわ。さぁ運んでもらいましょ。小夜ちゃん、どこに置くか教えてね」
奥に居た小夜ちゃんが頷いて、先に家に入ってくる。その後ろには太一君が両手に荷物を抱えて順番待ち。
「太一君、それ頂戴。一旦リビングに運ぶから」
「あっロクさんありがとう。結構重いですから気をつけて」
荷物を受け取ると、確かに。何が入ってるんだろう…。いや見ちゃ駄目だ。
玄関を見てると配送のお兄さん達がまずは小さめカーペットを運び入れベッドと机を運び込む。布団一式とカーテン、あとは箪笥とケースの間ぐらいの衣装棚や小さなテーブルなんかも運んでくれた。…やっぱり早苗さんに頼んで正解だな。俺が思いつかない物が大物だけでもたくさんある。
大物は全て運び入れたようで、早苗さんが伝票にサインして爽やかな笑顔で配送のお兄さん達が帰っていった。忘れずに早苗さんから領収書を貰う。実は昨日の夜に全部プレゼントするとか課長と早苗さんが言ってたけど、さすがにそこまで甘える事は出来ないので丁重にお断りをした。若干、課長は残念がっていたのだが。さてと、あとはさっきリビングに置いた手持ちの荷物と、小夜ちゃんが持ってきた荷物を整理するだけか。
「お茶を入れますが、何にします?」
「そうねぇ、久々にロクちゃんのコーヒーが飲みたいわね」
「僕も同じでお願いします」
コーヒー2つ注文が入りました。小夜ちゃんは?と促すと
「ごめんなさい。わたし、紅茶がいいです」
「了解、そんな申し訳なさそうにしなくていいよ。小夜ちゃんって朝は紅茶だけど、紅茶が好きなの?」
よしっ、ついさっき買ってきたティーポットの出番だ。台所でお湯を2つ沸かしながら聞いてみる。
「うん。コーヒーは飲めないから…」
なるほど、それじゃこれから勉強してとびっきりの紅茶を入れてあげないと。
本当ならコーヒーはサイフォンにしたいけど、アルコールを切らしたとこだったので今日はドリップにしよう。まずはコーヒーポットにお湯を入れて、同時にティーポットもお湯を入れて先に暖める。その間にお湯を2つ沸かす、普通の雪平鍋とドリップポット。
ドリップペーパーを用意してコーヒー豆を用意。雪平鍋が先に沸いたのでそれぞれカップに注ぐ。そしてティーポットとコーヒーポットのお湯を捨て、さっき買った紅茶葉を2杯分。ドリップポットが沸騰したのでお湯を注ぐ。少し落ち着いたとこでまずはコーヒーを蒸らす、1分程まってドリップする。3杯分だとドリップし易くて助かる。ゆっくり注いでいるとティーポットの茶葉が沈むのが見える。これがジャンプってやつか。あぁそう言えば、
「小夜ちゃん、紅茶ってフレッシュ入れる?」
ダイニングのテーブルに座って不思議そうに俺を観察してた小夜ちゃんが頷く。
了解、じゃあちょっと長めに蒸らす。ってさっき店員さんが言ってたから、時間を少し伸ばす。と、コーヒーもドリップし終わったので先にコーヒーをそれぞれのカップへ。んで、小夜ちゃんの紅茶はティーポットの茶葉を抜いて、カップのお湯を捨てて裏返しに。
「はい、できましたよ」
小夜ちゃんがカップとティーポットをリビングのテーブルへと運ぶ。俺はフレッシュ3つを冷蔵庫から出して、砂糖を手にリビングへ。
「ロクちゃんのコーヒーは久々ねぇ。さすがいい香りがする」
「何言ってるんですか、仕込んだのは早苗さんですよ。今でも足元にも及ばないんですから。ねぇ太一君」
そう言いながら小夜ちゃんの紅茶を注いであげる。
「いえ、ロクさんも今じゃほとんど変わらないですよ。母さんがよく言ってるんですが、喫茶店をやりたいけど、手伝ってもらえるとしたらロクさんしか居ないって。やっぱりおいしいですね」
「でもまぁ、お世辞でもやっぱり嬉しいね」
横で小夜ちゃんがカップの香りを楽しんでる。よかった、ちゃんとした紅茶葉を買ってきて。
「そう言えば、小学校へは何時に行くの?」
そう早苗さんに聞かれ、思い出す。
「お昼のあとに連絡したら5時に来て欲しいそうです。なので4時35分頃に家を出ればいいかと」
3人が時計を見る。今が3時40分。小夜ちゃんはカップから目を離さない。まだ口をつけてないので猫舌なのかな。
「なら、一服して小夜ちゃんの片づけを手伝ったら丁度いい時間ね」
ですね。ではもう少しゆっくりし・・・あっ!しまった!!
「早苗さん、忘れてた!小夜ちゃんの教科書とか上履きとか!!」
「えっ?そう言えばそうね。今からでも間に合うかしら?」
うっかりし過ぎた。俺には転校の経験なんて無いから買い揃えないといけないなんて感覚が全くなかったんだ。
「小学校指定の服屋とかってどこにあるんです?多分そこで教科書以外は揃うんじゃないですか?」
「そうねぇ。確か小学校の傍にあったわよ。今から行くの?」
小学校の傍。なら今から行ってその後直接学校に行こう。
「はい!小夜ちゃん、行くよ!」
と、まだゆっくり紅茶を飲んでくつろいでいる小夜ちゃん。ちょっと、早く行こうよ。
「ある・・・・・・」
小夜ちゃんが何か呟いてる気がする。・・・えっ?なんだって?
「もうある。持ってきた」
「えっ?持ってきたって、前の家から?」
紅茶をすすって頷く。
「前の学校のじゃなくて?」
頷く。
「・・・そっか、よかったぁ。てっきり何もないかと思ってたよ。焦って損したぁ。そう言えば転校手続きの用紙も持ってきてたもんね。でも次の学校のなんて用意がいいと言うか何と言うか」
「そうよね。転校先の準備なんて転校してから用意するものだと思ってたけど」
小夜ちゃんはカップを両手に持って不思議そうにこっちを眺めてる。いや、不思議なのはこっちだから。
「持っていく物は全部用意してあったから。それを持って行くだけでいいからって」
なるほど、ほとんどの準備はしてあった訳か。でも、結果的に俺の家にいるから良いけど、もし・・・。いや、これは考えるだけでも駄目だな。まぁ不思議を不思議のまま受け入れられる人間でよかった。
「さて、ぬか焦りをしたところで片付けに戻りましょうか」
小夜ちゃんも立ち上がり、よし、早苗さんの号令により早速始めよう。ってその前に。
「ねぇ、太一君。ぬか焦りって何?」
「多分ぬか喜びの焦ったバージョンだと思うよ」
「あぁ・・・」
「母さんオリジナルになるのかな?」
「いや、オリジナルとかそう言う話の次元じゃないでしょ」
太一君と2人で声を殺して笑っていると、先行した早苗さんに、
「ちょっとそこの2人!仲が良いのはいいけど、さっさと始めるわよ!!」
ほら、太一君が怒られた。
寝勒「FTGFOPってなんですか?」
店員「フィナー・ティピー・ゴールデン・フラワリー・オレンジ・ペコーです」
寝勒「はい?」
店員「フィナー・ティピー・ゴールデン・フラワリー・オレンジ・ペコーです」
寝勒「えっと・・・」
店員「フィナー・ティピー・ゴールデン・フラワリー・オレンジ・ペコーです」
寝勒「・・・・・・」
寝勒「。・゜・(ノД`)・゜・。 」