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長夢。  作者: 緑ノ小石
27/29

1年目 秋1

 ピエロのギャロップ。

 地獄のギャロップ。

 郵便馬車。

 トランペット吹きの休日。

 剣の舞。

 ロシアの踊り。

 ・・・まぁ定番はこれぐらいかな。

「それにしても晴れたなぁ、見事に天気予報が外れやがったぜ」

「そう言えば時々雨ってなってましたね」

 空は雲一つ無い快晴、ピーカンって奴だな。見上げると宙に並んだ万国旗。

「あっロクさん、5年生はお昼からオクラホマがあるよ。いくの?」

 手元の冊子を見て俺に確認してくる。

「うーん、どうしようかなぁ。あんまり気が乗らないかも。太一君にお願いしたいなぁ」

「だめよ。せっかくなんだからロクちゃんが行かないと」

「いやぁ、恥ずかしいと言うかなんと言うか・・・」

 いい歳してダンスってのもねぇ。

「小夜ちゃんが可哀想よ」

 いえ、早苗さん。そんな事言われてもですねぇ、

「俺よりも太一君の方が・・・」

「ロクちゃん!」

「はい。わかりました」

 わかりましたからそんな目で威圧しないでください。

「おい、綱引きあるか?」

「ちょっと待って、えーっと。あっ、あるよ。午前の最後だね」

「よしっ、今から腕が鳴るぜ」

「ねぇ、そろそろじゃない?」

「あっホントだ。親父カメラ、カメラ」

「おっおう・・・」


 "選手入場!"


 9月末。天気は快晴、絶好の運動会日和です。本日は小学校より松山家とともにお送り致します。さて入場門からは子供たちが続々と石灰で引かれたトラックの真ん中へ整列して行きます。まずは低学年の子供達から入場しておりますが解説の太一さん、今年の運動会の見所はなんでしょう。

「ロクさんいきなり口調が変わってどうしたの?まぁいいけど。そうだねぇ、やっぱりここの小学校ならではの事かな?」

 何か特色でもございますか?

「僕も一昨年までいたからね。赤組と白組が本気になって勝ちを競うのが毎年恒例になってるよ。ロクさんも知ってるでしょ?」

 えぇ、私も赤組と白組の決着を見届けてかれこれ8年目となります。噂によると勝利したクラスの先生に寸志が出るとか出ないとか。どうでしょう、今年はどちらの手に優勝旗が渡ると思われますか?

「難しいねぇ。勝利得点の高いのはクラス対抗リレーと最後の騎馬戦だけど、対抗リレー次第かな?」

 今年は松山 加奈さんは6年生ですよね?今年もリレーにエントリーされていますか?

「うん。念願のアンカーをやるって家で騒いでたよ」

 やはりですか。今年もクラス対抗リレーは各学年のそれぞれの組で1名が選出され1・2走者はトラック半周、3・4走者は1周、5走者は2周でアンカーだけはトラック3周との事でよろしいですか?

「そのはずだよ」

 そう言えば一昨年のアンカーを務められたのは太一さんでしたね。いかがでしたか?

「プレッシャーがすごかったよ。毎年最後で巻き返される光景を何度も見てきたから心臓が飛び出るかと思ったよ。結構なリードがあったから良かったけど、同着でバトンが回ってきたら負けてたね」

 リードと言えば、昨年の松山 加奈さんの活躍でしょう。

「あれは驚いたね。昔から足は速いと思ってたけど、ほとんど半周差を5走者で埋めちゃったんだから」

 あれはすごかったですね。今年はアンカーとの事ですから大注目です。リレーは白組勝利予想でよろしいですか?

「去年の事があるからなんとも言えないけど、多分難しいんじゃないかな?」

 と言いますと?

「ほら、だって去年のアンカーは・・・」

 そうでした、去年は5年生で大抜擢された須藤君がアンカーでしたね。ほぼ並んだ状況から松山さんの健闘空しく白組のアンカーは赤組のアンカーに圧倒的な差を付けられて負けてしまいました。となるとやはり今年も須藤君がアンカーでしょうか。

「そうだと思うよ。今年もアンカー次第かもしれないね」

 そうですね。今年も対抗リレーが大注目です。さて、グラウンドでは校長先生の挨拶が終わり、昨年の優勝組の赤組による優勝旗の返還が執り行われ、選手宣誓をしております。秋口とは言え炎天下の中、皆の凛々しい表情に今年も大いに盛り上がることを期待させられます。正々堂々戦い良い汗を流す姿を我々に見せてくれるでしょう。この後準備運動を行い、早速演目へと移っていきます。まず始めは4年生による徒競走です。それでは一旦司会進行をテントへ移します。それでは皆様、また後ほどお目にかかりましょう。

「おい、ロク。さっきから何をやってんだ?」

寝勒「校長先生って話が長いよね」

小夜「・・・うん」

寝勒「大変だよね」

小夜「・・・何が?」

寝勒「きっと日本人の為なんだよ」

小夜「・・・」

寝勒「共通話題にしないといけないんだよ」


小夜「・・・その為なの?」

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