短編 「ムクドリの夜」
僕たちは弱い生き物だった。
葉っぱ一枚くらいしかない体で空を飛んで、いつも何かから逃げていた。
自分より大きな生き物、風や雨からも身をかわさなければ生きていけなかった。
昼間の時間のほとんどを餌を探すことに使い、あとの時間は敵から逃げた。
いつもたくさんの仲間と一緒にいたけど、別に仲良くするためじゃない。
たくさんいれば何かに襲われて死ぬとき、自分以外の奴になる確率が高かったからだ。
親もその親もそうしてきたし、僕もこの生き方以外知らない。
夜は木の枝にしがみつき、なにも見えない暗闇のなかで震えながら朝を待った。
たまに誰かの悲鳴が聞こえた、何かに襲われたんだろう。
自分じゃなくてよかった
僕らはこんなにも弱い生き物なのに、そのなかでも優劣があった。
強い奴は木の枝の根元にとまれて、弱い奴は枝の先っぽで寝た。
朝起きていなくなってるのは決まって先っぽにいた奴だ。
何に襲われているのかは誰も知らなかった。
知ったところでどうしようもないし、みんな襲われるのが自分じゃなければどうでもよかった。
襲われない方法を考えようと言ってた奴もいたけど、朝には居なくなってた。
ある晩隣で寝ていた奴が襲われた。
僕は少し内側で寝られるようになったのでラッキーだと思った。
次の晩、僕が襲われた。
そいつは力が強く逆らえなかった。
助けを呼ぼうと思ったけど、意味がないと思ってやめた。
明日もまた、あそこで誰かが寝るんだろうな。