表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

42/44

第38話 魔人エアハルトとの攻防の中で相撲令嬢は神技に目覚める

 巨躯きょくのエアハルトと激突した。


 ガッシーン!!


 車と激突したかの衝撃!

 そして、私は競り負ける。

 ずりっ! と、ハイヒールの足下が滑り下がる。


 魔人化したエアハルトの突進力は凄い。

 ファラリスよりも力が強く。

 そして、かの竜よりも技術がある。


 相撲スピリッツの回転を上げエアハルトの突進を止める。

 最大限に回しても、じりじりと押される。

 彼の廻しを取る。

 彼も私の廻しをとる。

 がっぷり四つだ。


 強い。

 人とは異質の強さだ。

 筋力が計り知れず、体重も重い。

 圧倒的に私が不利だ。


 そう思うと片頬に笑いが浮かぶ。


 そうでなくては。

 そうでなくては。

 相撲は、こうでなくっちゃねっ!

 私は満面の笑みを浮かべてエアハルトの突進を必死で押しとどめる。


 ガリリとエアハルトの爪で廻しの近くの肉が削られて激痛が走る。

 かまわない。

 かまわない。

 爪が生えている、トゲが生えている、そんな存在でも相撲で倒す。

 問題は無い。


 だが、押される。

 もの凄い力だ。

 突進をねじり、体勢を崩す。

 足を掛けて、転がそうとする。


 重心が低い。

 理想的な腰の落とし方だ。

 反応速度も相当上がっている。


 魔族と人は、存在として、生き物の格のような物が違う。

 魔族は寿命が長く、単体の戦闘力が高い。

 その分、子供が生まれる確率が低く、人口が増えにくい。

 人類の強敵だ。


 だが、そんな事は、どうでもいいことだ。


 エアハルトの前に出る力は、暴走する列車のような凶暴な圧力だ。

 なんとしても止める。

 が。

 無情にハイヒールはずるずると滑り、押し込まれていく。


 ごつっ。


 無慈悲な感触がハイヒールのかかとに掛かる。

 徳俵だ。

 土俵際まで追い込まれた。


「アトガナイゾ、フローチェ」

「まだまだーっ!」

「のこった、のこった!!」


 魔人エアハルトは教科書通りの押し相撲だ。

 体格や体重からすると、それが一番効率が良いと導き出したようだ。

 私の背骨を折らんばかりに、ぐいぐいと押してくる。

 土俵際で、私は相撲スピリッツを高速回転させてそれを防ぐ。

 もの凄い力だ。

 もの凄いピンチ。

 体の筋肉がみしみしと悲鳴を上げている。

 息が上がり始める。

 少しでも相撲スピリッツの回転を落とせば押し切られてしまう。


 負けてしまうのか。

 このまま、人の限界にはあらがえないのか。

 いや、ちがう。

 私の信じる相撲はこんな物では無い。

 もっともっと凄い物だ。


 私の稽古が足りなかったのか。

 乙女ゲーム補正で、体重も筋肉もつかなかった。

 それらは大変な欠点だ。

 体も小さい。

 魔人エアハルトと組み合うと、幼女と巨漢の相撲のようであろう。


 だが。

 負けてはいない。

 まだ。

 負けてはいないんだ。


「フローチェ、がんばって~~!!」


 愛するリジー王子の応援の声が響いた。


「フローチェ親方! 負けたら承知しねえぞっ!!」

「親方っ! あなたならやれますっ!!」


 ユスチン氏とクリフトン卿の声が響き渡る。


「フローチェ親方!!」

「フローチェッ、がんばれ~っ!!」


 マウリリオ元将軍とファラリスの声援が聞こえる。


「「「「フローチェ! フローチェ!! フローチェ!!」」」」


 近衛力士隊の声援が、国技館にいる軍人、騎士、メイド、下働きの声援が響き渡る。



 そうだ!


 人であることの強みは、人と人の絆にある。

 友愛と尊敬と愛情が、人の繋がりの強さだ。


 リジー王子の小さな相撲スピリッツを感じる。

 ユスチン氏の、クリフトン卿の、マウリリオ元将軍の、ファラリスの、相撲スピリッツを感じる。

 近衛力士隊、軍人、騎士、メイド、下働きの微かな相撲スピリッツも感じる。


 その、皆の相撲スピリッツが一つに繋がった時。


 私の相撲魂が黄金色に輝き、高速回転を始めた。


「おおおおおおおおおおっ!!」

「グヌッ!!」

「見よ!! エアハルト、これが人間の相撲スピリッツだっ!!!」


 相撲スピリッツは黄金色に輝き超高速回転オーバードライブを始める。

 無限の力を私の腕に、腰に、足に送ってくれる。


「ああっ、フローチェがっ!」

「親方が光り輝いているっ!!」

「神技! スモウの神技だっ!!」


 押す、押す、押して押して押していく。

 エアハルトは必死になって押しとどめようとしているが、かなわない。

 彼を土俵の真ん中まで押し返す。


 力が溢れる。


「グヌヌッ! セイナル! 聖なる光かっ! 僕の魔族の部分が焼かれる!!」

「エアハルト、その姿の方が、あなたは漢前よ!」

「魔人化を解いたというのか、なんというスモウの奇跡かっ!!」

「これが相撲の力よっ!!」


 幼なじみのみっちゃんの声が脳裏にながれる。


『この技が出来たら天下無双よね~』


 がしりとエアハルトの廻しを引きつける。

 雷のような速度で、私の膝をエアハルトの内股に差し込む。

 付与魔法は発生させない。

 雷はその動作だ。


 膝にエアハルトを乗せるように引きつける。


「くそっ! なんだ、なんの技だっ!」


 全力で体をひねりエアハルトの体を雷のような速度で振る。


落雷サンダーやぐら投げ、改!!」


 落雷の勢いでエアハルトを土俵に叩きつけた。


 ドカーン!


 エアハルトは一度はねて転がり、土俵から落ちていった。


 国技館が一瞬静寂に包まれた。


「フローチェ~~!」


 アルヴィ王が軍配を東に上げた。


 わあっ! と、観客席が爆発し、無数の座布団が舞い上がった。


 座布団が夢のように舞い踊る中、私は勝ち名乗りを受けていた。


 アリアカ国番付の横綱に私は勝ったのだわ。

 

 海鳴りのような歓声のなかで、私は勝利の実感に浸っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] みっちゃん何者!?
[良い点] サンライトイエローオーバードライブをありがとうございました。
[一言] 魔族がお相撲さんに敵うわけないんだよなぁ(呆れ 魔族の悪魔モードは強いが相撲スピリッツの前にはかなわないぞ …つまり、悪魔で相撲スピリッツがガンガン回転すると思われるデーモン閣下は横綱級なの…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ