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第28話 ドミトリー氏の降伏と赤竜ファラリスの弟子入り

 ファラリスの胸の隷呪紋がボロボロと剥げ落ちていく。

 あら。

 魔獣使いテイマーとの接続が相撲で解けてしまったのね。

 危ないかしら?


 あらあらあらあら。

 どんどんファラリスの体積が縮んでいき、ボヘンという音がすると煙が上がった。


「ずっりーよっ!! 格闘技じゃなくて魔法じゃあないかーっ!!」


 ファラリスの居た所には、褐色の肌、白い髪の幼い少年が素っ裸で地団駄を踏んでいた。


「いえ、組み合えなかったから。サイズが違いすぎよ」

「人化したから、これで勝負だっ!! 小さくなったが力は大きいままだぞっ!」


 少年は私に掛かってこようとして、途中で止まった。


「なんだーっ、ぐぎぎぎっ」

「というか、ファラリス?」

「そうだっ! 動けねえっ!!」

「なんで人型に?」

「なんか、スモウに負けたら出来るようになったっ!! うぎいいいっ!!」

「そうなの、お話しできて嬉しいわ、ファラリス」

「勝負だあ、フローチェ!!」


 負けん気の強い褐色ショタドラゴン。

 ああ、ワイルドで素っ裸。

 尊い。

 はぁどすこいどすこい。


「相撲で一回負けたら、次の場所まで戦えないのよ」

「えー、マジかよお」


 ファラリスは座りこんでしまった。

 お、リジー王子が土俵に上がってきた。

 ファラリスに手を差し伸べる。


「君もフローチェにお相撲を習うと良いよ」

「な、なんだよ、お前~」

「僕はリジー、フローチェにお相撲を習ってるんだ、一緒に習わない?」

「俺はファラリスだ、そうすればあの女と戦えるのか」

「ええ、いつでも戦えるわ」


 フローチェ部屋に入れば練習試合という名目で勝負し放題だ。

 人の大きさになったファラリスがどれくらい強いか興味があるわね。


「わかった、俺も習う」

「フローチェ部屋にようこそ、新弟子のファラリス」

「お、おう、よろしく。リジーも、よろしく、俺はファラリス」

「うん、ファラリス、僕たちも兄弟弟子だから、お友達になろうね」

「お、おう、そんなに言うならな、リジー」


 ああ、美少年二人の交流はとても美しいわ。

 背景に華麗なバラが見えます。

 尊い。

 はぁどすこいどすこい。


 リジー王子にも年相応のお友達ができたわ。

 実年齢はしらないけど、精神年齢は同じぐらいね。


 上空からゆっくりとマワシが降ってきた。

 ファラリスの竜の時の表皮の色と同じ真っ赤だわ。


「ユスチン、クリフトン、ファラリスにマワシを締めてあげて」

「わかりましたぞ」

「へへ、新弟子がぞくぞくと入ってくるな、フローチェ親方」

「な、なんだお前ら、気安いぞ」

「ばーろーっ、俺らは兄弟子だぞっ」

「さ、これを締めてかっこ良くなろう、ファラリス」

「な、なんだよ、うん、色は良いな、俺の鱗の色と同じだ」


 真っ赤なマワシをピシッと締めたファラリスはとても格好がいいわね。


「ファラリス……」


 ドミトリー氏が砂かぶりから土俵の上に上がってきた。

 ファラリスの巨体が土を粉砕しているから、歩きにくそうね。


「おっ、とうちゃんっ、とうちゃんとの接続切れちまったよ、また付けてくんないか」

「おおおおっ、ファラリスが人型に、なんという事か、なんという事か」


 ドミトリー氏はファラリスをぎゅっと抱きしめた。


「夢ではないのか、おお、ファラリス」

「これまでは隷呪紋が邪魔して人化できなかったみてえだよ、とうちゃん」

「わしをとうちゃんと呼んでくれるのかっ」

「とうちゃんはとうちゃんだぜ、話が出来るようになってうれしいぜ」


 ドミトリー氏は泣いた。

 そして、リジー王子の足下に土下座した。


「王子の命を狙っておいて、まことに厚かましいのじゃが、わしの首を出すので、ファラリスだけは、ファラリスの命だけはお助けくだされ」

「とうちゃん、とうちゃんが死んだら、俺は困るよっ!」


 ドミトリー氏のファラリスへの命乞いに、リジー王子はきょとんとした。


「ファラリスとは、もうお友達だから命を取ったりしないよ」

「リジー王子……」

「だよなーっ! だよなーっ! リジーは良い奴だもんなっ!」

「ドミトリーさんも降伏してくれたら問題無いよ、僕のお友達のお父さんなんだし」

「王子っ! 王子っ! ああ、ああ、なんという事か、なんという器の大きさかっ」


 ドミトリー氏は地面に伏して、泣いた。


「謹んで、リジー王子に、この老体の身柄を預けます、ファラリスともども」

「おう、俺はもう、相撲を覚えるからフローチェ部屋に入門したぜ、とうちゃん」

「うんうん、色々教えてもらうんじゃぞ」

「だから隷呪紋をまた付けてくれよう、とうちゃんと念話ができなくてさびしいや」

「ばかもん、隷呪紋を付けて人化できなくなったらどうするのじゃ。それに念話なぞ使わんでも普通に会話ができるではないかっ」

「あっ、そっかーっ!」


 ファラリスとドミトリー氏は笑い合った。

 良い親子関係ね。

 素敵だわ。



 ヴァリアン砦の正門が開いて、一群の兵隊ときらびやかな服を着た人が現れた。


「あ、お父様だっ! お父様~!!」


 リジー王子が手を振った。


 偉そうな感じの軍人が王様の先導をしていた。

 連行という感じでは無いわね。


 偉そうな軍人はリジー王子の前に来てひざまづき、頭を下げた。


「ヴァリアン砦守備軍はリジー王子に降伏いたします」

「そうか、でもどうして?」

「ドラゴンを倒すような勇者がいる軍には到底かなう訳もありません。頼みの聖女ヤロミーラも女神さまに張り倒されました。リジー王子、何卒、砦の兵には寛大なご処置を」

「うん、いいよ、解ってくれたら問題無いよ、同じアリアカ国民でしょ」

「ああっ、あああああっ、リジー王子、あなたはなんと寛大なっ!」


 ヴァリアン砦守備軍司令官は泣いた。

 軍人は泣いてばっかりね。


「お父様っ!!」


 リジー王子が駆けだして、アルヴィ王に抱きついた。


「リジー、よく余を助け出してくれたな、礼を言うぞ」

「僕は何もしてません、全部、このフローチェが戦ってくれました」


 私はアルヴィ王に向けてカーテシーを決めた。


「おお、おお、西の塔から見ておったぞ、ドラゴンと格闘して倒すとは何というたくましい女武者か、それでいて華奢で美しい。フローチェ・ホッベマー侯爵令嬢よ、褒めてつかわす」

「お褒め頂き、光栄至極にございます」


 王様を奪還したわ、勢いにのって、次はアリアカ王城に攻め込みましょう。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 泣いた! 一瞬でゼ○ットと人間になれたピノ○オが抱き合うシーンが見えた! ショタドラゴンがジジイテイマーをとうちゃんとか、尊すぎる はぁどすこいどすこい
[良い点] 褐色……これは楽しみだ……サモア系だな!? [一言] 城に攻め入るとな……大量の力士がすり足で入って行く様が目に浮かぶようです。興奮が止まりません!
[一言] >ああ、美少年二人の交流はとても美しいわ。 >背景に華麗なバラが見えます。 >尊い。 そっちもイケるのかフローチェ( ˘ω˘ ) はぁどすこいどすこい( ˘ω˘ )
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