幕間:アリアカ城中央ダイニングルーム
ヤロミーラは豪華な晩餐を取りながらエアハルトの報告を聞いています。
豪華な調度に囲まれた大きなダイニングルームには、ヤロミーラとジョナス王子、そしてエアハルトが腰をかけ、山海のご馳走を食べているのです。
「なんですって!! 一万もの軍団が帰ってこないですって!!」
「そうだね、編成した軍団一万人とマウリリオ将軍が帰ってこないね。どうしたんだろうね」
ヤロミーラは奇声を上げてゴブレットを壁に投げつけました。
「どうしてなのっ!! あなたが一万人の軍ならフローチェを倒せるって言ったじゃないっ!! 何があったのっ!! マウリリオはどうなったの?」
「多分、負けたんじゃないですかね、自爆魔法が起動したみたいだし」
「じばく、まほう? なによそれっ!! マウリリオは死んだのっ?」
そこへ伝令兵が駆け込んできました。
「ふむ、なんだと、ふーむ」
「ど、どうしたのっ!? 何があったのエアハルトッ!!」
「朗報、いや、悲報でしょうかね。マウリリオ将軍は生存しております。ですが、合同派遣軍一万人と共に、リジー王子に寝返りました」
「ど、どうして……、ど、どうしてよ……」
「アリアカ国を支える右将軍のマウリリオ将軍が……、リジーに……。そ、そんな馬鹿な」
ヤロミーラとジェナス王子は真っ青になりました。
「い、今すぐに、ヴァリアン砦に連絡を、アルヴィ王に毒をっ! 王さえ死ねばジョナスが戴冠式を行えるわっ!! 今すぐっ、毒を盛ってっ!!」
「お、お父様を、こ、殺すのか、そ、そんな事……」
「あなたが今すぐ戴冠出来なければ、私たちは破滅するのよっ!! 使える手は何でも使うべきよっ!!」
エアハルトはヤロミーラの醜態を見て小さく嗤います。
「まあ、おまちなさい、可愛い僕のヤロミーラ。ここで王を害せば大貴族が蜂起し、外国も干渉してきて、国が滅びますよ」
ヤロミーラはスープの皿をテーブルに叩きつけました。
「あなたがっ! エアハルトッ!! 他ならぬあなたが言ったのよっ!! 私を王妃にしてくれるって!! だから信じて従ってきたのにっ!! どういうことなのっ!!」
「まあまあ、どんな計画でも見込み違いはあるものですよ」
ヤロミーラは地団駄を踏みます。
「見込み違いじゃすまないのよっ!! 私たちの首が掛かっているのよっ!! 負けたらどうするのっ!!」
エアハルトはうなずきました。
「可愛いヤロミーラ。ヴァリアン砦にはあなたが行ってくれますか、あそこは聖騎士が多い、聖戦が使えるでしょう」
「そ、そうね、聖戦なら、あのにっくき悪鬼令嬢を殺す事ができるわね。わ、解ったわ、私がヴァリアン砦に行きます」
「だ、大丈夫かい? 相手は謎のスモウトリだが……」
「大丈夫よ、相撲なんて怖くないわっ!! あんなのデブのやるお遊びなんだからっ!!」
「そ、そうなのかい? ヤロミーラが言うならそれでいいけど……」
ヤロミーラはほくそ笑みます。
「聖戦が掛かれば、聖騎士の戦闘力は二倍、もれなく【士気向上】【思考狭窄】【疲労軽減】と【苦痛無効】が付くわ。聖騎士団の何割かは死ぬでしょうけど、これは正しい教団の勤だわ、これなら憎い憎いフローチェを倒せる」
エアハルトは微笑みながら、ブランデーグラスに入った最高級のブランデーをくるくると回します。
「ふふふ、マウリリオと兵団一万人まで倒したか、すごいねえスモウは。だがヴァリアン砦には奴がいる、奴にはスモウでは絶対に勝てない。格闘技では決して勝てない相手なんだよ。ふふふ。アルヴィ王を目の前にして滅びたまえ、愚かなフローチェ嬢」
エアハルトは笑って血のように赤いブランデーを口に含みます。
豪華な晩餐会は信じられないようなご馳走がぞくぞくと運ばれてきます。
ですが、参加者の一人として、美味しそうな顔をしていないのでした。




