007話 少女は宮殿に行く
レオン様は本当に大丈夫なのでしょうか?
先に王様に伝えてほしいと言われていたので伝えなくてはならないのですが。
メイド服を着た少女はこのような悩みを抱えていた。
最も一般的な心配事ではあるが。
リムにとって重大でもある心配事。
何か良からぬ事が起きないとは限りません。
あの者の容姿から恐らく、異世界人なのではないでしょうか?
かと言って私も、あの者と同じ黒い目、髪ですが、私みたいな容姿もこの世界では珍しいんですけど。
先程から妙に気になる事がありますが、この王国の兵士が多いのはなぜでしょうか?
誰かを追っているのでしょうか?
そんな事思っている間に、王様の宮殿に来てしまった。
さて、レオン様が言った通りに伝えなくてはいけないのですが。
「すみません。王様にご用があり、参上した者ですが」
「ん、レオン様の所の者かね?」
この王国兵士は私のことを知っているらしい。
「はい。リムと申します」
「謁見の間で王は待っておる。では、通るが良い」
宮殿の前で守っていた兵士に許可を貰い入る事ができた。
「あの、どうして王国兵士の方が多くいるのでしょうか?」
「ん?それはよく分からないが、どうやら良からぬ事が起きたらしい。最近少しばかり治安も悪い、だから多いのだろう。まあ、粗相をせぬよう」
「そうですか。では、失礼します」
少しおかしい感じがしたのは気のせいですか?
あの目は睨んでいる。
それも私に対して。
すぐ様、兵士に軽くお辞儀して、宮殿の中に入る。
やはり、何か良からぬ事が起きたのでしょう。
レオン様は大丈夫ですよね?
宮殿の中はさすがと言える程の広さであった。
王様はこれだけの財力を持っている事に等しいのでしょう。
すぐ近くの所に謁見の間への扉があった。
ここで客を招き入れたりするらしい。
「ハイラー陛下、はじめまして。私はレオン様の従者であるリムと申します」
最初の挨拶は肝心な所でしょう。これで、大丈夫だと思いますけど。
入口のところから王のところまで王国兵士がズラッと並んでいた。
鎧を身にまとい、剣を携えている。
戦い前なのでしょうか?
そんな話全く知らなかった。
戦いが起こるなんて。
「そうか」
渋い声で答える方こそこの王国の王様でしょう。
年老いた老人の姿をしていて、私と対面する位置で椅子に腰掛けている。
しわクシャになっている王の前で膝をついて一礼する。
礼儀を表している。
「して、リム殿。レオンの姿が見えんのじゃが?」
「すみません。その事について説明させていただきますと、レオン様は少々、遅れて来るとのことですので、大変申し訳ないことですが、待っていただきませんでしょうか?」
リムはそう言うと、王はどこか引きつった顔を見せる。
そして少し隣にいる従者に向けて何かを呟いていた。
それから王は正面を向いて私にこう告げるのだった。
「そうか。あの噂は本当じゃったか」
噂とは一体?
それで、王国の兵士が多かったという事でしょうか?
王は隣にいる従者と何か話をしている。
話し声は聞こえない位声は小さい。
それから周りにいる兵士も何か話しているみたいだ。
「あの、噂とは一体、何でしょうか?」
噂についてはあまり知らないのであった。
ちょっと世間知らずと思われそうですが、仕方ありません。
この王国に来たのが一月前であったので。
でも、良からぬ噂がこちらに届いていないというのは少しおかしいです。
誰かが仕組んだ罠?
「動くな!」
先程までピクリとも動かなかった王国兵士達が王の一言で動き始めた。
次の瞬間、なぜか私の周りを王国兵士が囲んでいた。
王国兵士は皆、私に剣を向けている。
「さあ洗いざらいすべて話してもらおう。リム殿。儂はすべて知っておるぞ。お前たちの悪行を…」
「これは一体どういう事ですか?」
全く見覚えのない事である。
なぜ民を守るはずの兵士が、罪のない民に剣を向けているのでしょうか?
王様は何をする気なのでしょうか。
レオン様が一体何を?
「口答えするではない。正直に話すがよい。そうすれば罪は軽くなるし、未然に済む。そちらとしてはそれが良い策じゃが?」
王様はなぜ怒っているのでしょうか?
それに周りの王国兵士達は少し嘲笑うようにこちらを見ているのはどういう事でしょうか。
これは人を陥れようとしている。
陥れる嘲笑いに目。
誰も私やレオン様をかばおうとか思う方がいないのですか?
「正直に話すとはどのような事でしょうか?」
「答えないつもりか?」
「答えないとは一体何でしょうか?私は理解できません」
全く聞き覚えのない事にどう答えれば良いのか分からず、慎重に言葉を選んだ。
その結果、質問攻めになってしまった。
「とぼけるな!お前達がこの王国でクーデターを起こそうとしているだろう!」
クーデターを起こそうとしている?
一体どうお答えすれば。
私達がいつそのような事をしようとしているのですか?
どうすれば良いでしょうか?
レオン様ならこの場合どうするのでしょうか。
してない罪を認めるか?
いやそうはしない。
「すみませんが、私達には全くその気はございません」
「何を寝言言うかと聞けばこれか?じゃあお前は何を持ってしないと証明できる?言ってみよ!」
「私達は陛下には固く忠誠を誓っております。ですから、私達がクーデターを起こすなど決してないことです…」
「お前はそれで証明できると申すか?」
私の事をどうも聞き入れてくれる気がしない。
私達は本当にクーデターを起こすなど決して考えない。
なのに、王は私の話を信じてくれない…
じゃあどうすれば良いのでしょうか。
レオン様をここへお連れできれば証明できるのでしょうか?
少し荒手になってしまいますが、ここは逃げる方がいいのでしょうか?
ここで捕まっても私の事を信じてもらえる人がいないから。
「王国兵士の皆さん、すみません。少しばかり眠ってもらいます。」
【スキル】催眠
「何だこれ?」
「眠い…」
王国兵士は次々と眠っていく。
周りの王国兵士を眠らせ、直ぐに宮殿を出た。
「待て、リム。おい追え!…おい、お前ら命令だ」
王は兵士に命令するが、誰一人起きる気配がない。
先程のスキルが上手く行使したという訳か。
「全く、逃げられると思うなよ。悪魔共が」
王は物凄い形相で私を最後まで睨んでいた。
恨んでいるとしか思えない目だった。
あの方法は使いたく無かったのですが、仕方ありません。
王様、申し訳ありません…
それより、レオン様に知らせなければ。
レオン様が危ない。
この流れだとレオン様のところにも王国兵士が集まっているはずです。
リムはレオンを探しに行ったのだった。




