【SS】アカリパパ視点: いつもこうなの?
それはほのかさんも同じだったようで、だんだんと眉毛が怒った形になってくる。
アカリがまだ小さい頃、危ないことをした時は鬼の形相で怒っていたが、ちょうどあんな時みたいな怖いオーラが身体からにじみ出てくるのを感じて、僕まで緊張してきた。
僕の奥さんは基本的に呑気で、大抵のことは笑って済ませるタイプだけれど、大ケガしそう、させそうな案件は人が変わったかのように許さないのだ。
人として正しいと思う。
「ナフュールさんはとても凄い事をしているのね。きっと、他の誰も同じ事はできないと思うわ」
ほのかさんが口火を切った。
「でしょう!?」
アカリが嬉しそうに笑い返す。
いつもみたいに褒めるところは褒めるのも、ほのかさんらしい。僕も全面的にほのかさんに同意見だ。きっと同じ境遇だったとしても、僕ならナフュールさんのようにはできないだろう。
「そうだな。僕もナフュールさんは本当に立派な人だと思うよ。きっとナフュールさんに救われた人は、心身共に随分と癒されただろうね。誰もが心から感謝しているんじゃないかな」
「勿体無いお言葉です。辛い思いをなさった方の心と体の傷が、少しでも慰められていればいいのですが」
「いつもこうなの?」
「うん。100パー素の状態だねぇ。ナフュールさんが信仰してる女神様はエリュンヒルダ様っていうんだけど、エリュンヒルダ様もナフュールさんほど信仰心が篤い人は初めてだって言ってたよ」
「本当に聖職者って感じなのねぇ」
「うん。そういうところも大好きなの」
しれっと大好き発言を繰り出すアカリ。僕は心の中で泣いた。僕の小さかったアカリが、いつの間にかこんな事を言うようになっていただなんて。
そして、地味に女神様の言葉を世間話風に話題に出すのもビビる。
「じゃあナフュールさんは傷を治せるし、疲労回復も浄化もできるし、神様の奇跡ってのも使えるのね?」
「そうそう」
「なのに、自分は時々倒れちゃうの?」
「うーん、それは魔力を使いすぎて貧血みたいになっちゃうヤツだから、回復魔法とかじゃ無理なんだって」
「それは、命の危険はないの?」
ほのかさんに詰められて、アカリは困ったみたいにナフュールさんを見上げる。ナフュールさんは、ちょっとだけ苦笑しながらこう答えた。
「基本的には大丈夫です。アカリが貧血に似ている、と言ったようによほど使いすぎない限りは眠ったり食事をとる事で回復するのです。生命を維持できないほど魔力が枯渇してしまわない限りは、ちゃんと回復しますので」




