【SS】アカリパパ視点: 会わせたい人がいるの
アルファポリスさんで『恋愛小説大賞』に応募中なので、記念にSSを更新中です。
お時間ある方はぜひ読んでみてくださいね!
「お父さん、お母さん、あのね、会わせたい人がいるの」
電話でアカリからその言葉を聞かされた時、ついに来たかと思った。
いやでもちょっと早くないか? アカリはついこないだ24になったばっかだぞ? 昨今は晩婚傾向にあるし、アカリからそんな話聞いた事もなかったし、正直もうちょっと猶予があると思っていた。
ブフッと隣から吹き出す音が聞こえる。
「いやあねぇ、健吾さんたら。そんな苦虫を噛み潰したような顔しなくても」
「し、してない。ちょっと驚いただけだ」
僕の最愛の奥さん、ほのかさんが笑いを堪え切れないといった様子で見上げてくるから、思わず強がってしまった。口の端が盛大に歪んだ自覚はある。
「アカリの彼氏の前でそんな顔しちゃダメよ? アカリに嫌われたくないでしょ?」
「そんな酷い!?」
「もう! お父さんったら神官長……じゃない、ナフュールさん前で絶対嫌な顔しないでね。アカリのご両親なのですから、きっととても優しくて楽しい方々なのでしょう……なんて言って信じ切ってるから!」
「えっ、待ってアカリ、なんか色々気になる言葉あり過ぎたけど、連れてくる人、外人さんなの!? お父さん英語出来ないよ!?」
「言葉はバリバリに通じるから大丈夫」
「て事は外人さんなのね。アカリったらやるなぁ」
ほのかさん、そんな呑気な。
恨めし気にほのかさんを見てみたけど、ほのかさんは嬉々としてアカリと話している。スピーカーで話してたもんだから、いつの間にやらほのかさんとアカリが和気藹々と話しだし、僕はすっかり空気だ。
「えへへー、目が潰れそうな美形だよ! 今色々と説明しても多分あたしが頭おかしくなったと思われそうだから、今週の土曜日の十時くらいに、お店の方に来てくれる? 事情があって、お店の方が都合がいいんだ」
「お店ってアカリの店か」
「うんそう! ナフュールさんはこちらから足を運んでご挨拶に伺いたいって言うんだけどさ、絶対に店に来る羽目になるから、面倒な説明は一回で済ませたいかなって」
「まぁ、しっかりした方なのねぇ。おいくつ?」
「あっ、年齢聞いた事ないなぁ。存在自体が尊すぎて、そういうのどうでも良かった」
「あらあら、ベタ惚れじゃないの」
「何回生まれ変わってもこれ以上好きになれる人いない気がする」
お、お父さんより?
言ってしまいそうになるのを、口を手でぐっと押さえてなんとか思いとどまった。
もし「当たり前だよー!」とか「比較にならない」とか言われたら心臓が死ぬ。




