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出戻り聖女の忘れられない恋  作者: 真弓りの


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水が流れた……!!!

街のみなさんは私の体調を案じてくださいますが、実は奇跡を行使する方が通常、私自身への負担は少ないものです。


神聖魔法は私自身の身のうちに宿る魔力を使うもの、そして奇跡は今でこそ視覚化されていますが、この聖杖の宝玉に貯まっているあらゆる方からいただいた感謝の心……いわゆる「徳」を使う物です。


体内の魔力を使うよりは随分体の負担は軽く済むのですが、それでもこれほど大きな奇跡を行使するのは久しぶりです。どれほどこの蒼が消費されてしまうのか、私の体が奇跡の行使に耐えられるのか……それは、やってみないことには正直分かりません。


それでも、やらないという選択肢などあろう筈がありません。私はゆっくりと姫の前に歩み出て、街の皆さんに語りかけます。



「これより、女神エリュンヒルダ様のお力を行使します。皆さんも心静かに、一心に祈りを捧げてください」



私がそう口にしたとたん、街の皆さんは膝をつき頭を垂れて一心に祈りを捧げ始めました。


その真摯な祈りは、私の心を奮い立たせます。


街を救いたい思いは、私よりもずっとずっと、街の皆さんのほうが強いのです。そのお力を借りることができれば、より強く奇跡の力を発揮することができるでしょう。


私も彼らの祈りに合わせ、長い長い呪文を唱えます。


祈りが最高潮に達したとき、聖杖の蒼い宝玉が強い光を放ちました。


稲妻のように辺り一面がまばゆく光った瞬間、空で神鳥アールサスが声高くさえずります。その異変に街の皆さんも一斉に目を上げたその時。


川をせき止めていた莫大な量の土砂が空に浮き上がりました。



「うわぁ!」


「土砂が!」


「浮いてるー!!!」



街の方々が一斉にざわつく中、私はさらに祈ります。山からもたらされた土砂でしょうが、山に戻してはいつかまた崩れるかも知れないという恐怖が拭えないでしょう。


あれだけの質量を消し去るのは移動するよりも奇跡の力をより多く使うことになりますが、こればかりは仕方が無いでしょう。


私の額にも大粒の汗がにじみ、聖杖を握る手が震えます。



「消えた……!」


「すごい」


「水が流れた……!!!」



街の方たちのついに土砂を消し去ることに成功したときには、さすがに私の精神力もかなり削られていました。


土砂が消えた途端に、今度はごうごうとうなりを上げて水が下流へと流れて行きます。せき止められ、街に流れ込んでいた水もようやく行き先を得て、吐き出されていくのが確認できました。



「水位が下がっていく」


「あんなに何日も引かなかった水が」

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『出戻り聖女の忘れられない恋』
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