表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
出戻り聖女の忘れられない恋  作者: 真弓りの


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/103

充実した日々

随分と、蒼が貯まってきたように思えます。


ユーリーン姫に泣きながら喝を入れられてから二週間、私は王都を離れ、街や村をたどって辺境へと向かっていました。


魔を浄化する旅でも、すべての街や村を巡れたわけではありません。より魔の濃い地域、魔が噴出して周囲に影響を与えている発生源、そんな場所を集中して巡っていたのです。


魔の根源は取り除かれ祓われていますが、魔によって傷つけられた人、荒れた土地、魔獣の生き残りはまだまだ各地に残っています。


街によって抱える問題の大小はありますが、悩みを一つも抱えていない村などありません。


私は、そのひとつひとつに丁寧に対応し、解決しては次の街を目指すという生活をしていました。これほどやりがいのある仕事はありません。


神官長としては国の中枢に身を置き、信仰のシンボルとして神殿をまとめるべきなのでしょうが、私はやはり、こうして人々と顔を合わせて女神様のお力を直に示し、人々を笑顔にすることが性に合っているようです。


日々にやりがいを感じ、一日の終わりに増えた蒼を喜ぶ。


その忙しくも充実した日々は私の心を癒やしていきます。アカリ、あなたに会える日も近いかも知れませんね。


そんな日々の中、私は不穏な噂を耳にしました。



「神官長様、北のほうへ向かうおつもりですか?」


「ええ、アンズポトという街があると聞きました。そのあたりはまだ伺っておりませんので」


「行かないほうがいいと思うがねぇ」



街の情報通だという八百屋の女将が不安そうに顔をしかめます。



「何か問題があるのですか?」



だとすれば、むしろ私は一刻も早くその街へ向かうべきでしょう。少しでも情報が欲しくて、私は彼女に質問で返します。



「あそこは滝の近くに作った街だからねぇ。崖と川に挟まれた立地だろう? 先だっての大雨で崖が崩れたらしいのさ」


「おおごとではないですか。けが人は出なかったのでしょうか」


「崖崩れでは出てないらしいけどねぇ。でも崩れた土砂が川を塞いで、街が水で浸かってるらしいよ」


「……!」


「そのせいで橋もやられちまって、もっと北の街とは行き来もできないって。こっちからも川をのぼって訪ねるのは難しいようだよ」


「陸路は残っているのですね?」


「でも、野盗がわんさか出るっていうよ。神官長様、ひとりで旅してるんだろう? 危ないよ、神官長様が死んじまうようなことがあったら、この国のみんなが不安になるじゃないか」



心配してくださるのはありがたいのですが、そんな苦境にある街を放っておける筈がありません。私はその足で、そのままアンズポトの街へむけ、歩を進めました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

下記は作者の別作品のリンクです。読んでみて気に入ったらぜひお買い上げください♡


『出戻り聖女の忘れられない恋』
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ