俺、こういうのがいい
間をつなぐようにやんちゃ君がポテチをひとかけ口に入れると、つられたようにクール君もポテチを口に運んだ。そのまま無言でポテチをぱくついていたクール君がふと、小さな声で言う。
「俺、こういうのがいい」
「こういうの?」
やんちゃ君が目を上げると、クール君はつまんだポテチをひらひらと見せながら笑った。
「前にさ、お前こういうお菓子の詰め合わせくれたじゃん」
「あー、あのヘンなパッケージのヤツばっかり集めた、ウケ狙いの?」
「うん、あれウケたわ。せっかくくれるんなら、あーいう面白いのがいい」
クール君の言葉に、やんちゃ君は目を白黒させている。よっぽど意外だったんだろう。
「えー? あんなんめっちゃ安いぞ」
「うん。でもあれ結構毎日楽しめたぞ。ひでー味なのも多かったけど」
「マジであんなんでいいの?」
「ああいうのがいい」
「そういえばお前、あの時確かにめっちゃ喜んでたな」
やっと思い当たったのか、急にやんちゃ君は納得の顔になった。そして、ちょっと唇を尖らせる。
「ちえー、なんだよ。あんなのがいいのか? 中学生になったから、せっかくプレゼントもグレードアップしようと思ったのに、お前もまだまだガキだよな!」
「ガキで悪かったな」
やんちゃ君が嬉しそうに笑ったのを見て、クール君も安心したように笑う。
それを見たあたしも、なんだか心がほっこりと温かくなった。これならきっと、やんちゃ君も自分が大好きなグループのコンサートに心置きなく行けるだろう。
「じゃあ、とびっきり面白い駄菓子系、めっちゃ探しとくから楽しみにしててくれよな」
「食えるレベルのヤツで頼む」
「一緒に食うから心配すんな」
「待て、それは誕生日プレゼントだよな? 全部一緒に食う気かよ」
「いや、責任もって食うべきかなって」
すっかりいつもの他愛ない会話になったことに安心して、あたしは自分の仕事に戻った。
気の置けない友達っていいよね。
ふふ、と笑ってからふと、今朝見たばっかりのユーリーン姫の涙が思い出された。
こんな時、自分で選んだこととはいえ、やっぱり物理的に離れてしまった距離が切なくなる。傍にいたら、姫の涙の理由だってすぐに聞けるのに。話せないような内容なんだったら、せめて傍にいることくらいはできるのに。
姫の涙が、神官長様の悲しそうな顔が、会えないだけにあたしをとても不安にさせる。
その日はずっと頭からそれが離れなくって、ベッドに入ったあたしは思わず女神エリュンヒルダ様に真剣に祈った。
どうか、あたしの大切な人たちが明日には笑顔で居られますように。




