もっと必死になりなさいよ!
「そんなの、いつになるか分からないじゃない」
悲しそうな姫の様子に胸が痛みますが、こればかりは先方のお気持ち次第です。感謝を強要することなどできません。
「ねえ、最初にアカリを召喚した方法じゃダメなの?」
「残念ながら、同じ事を行っても必ずアカリを召喚できるものではありませんから」
「そうか……そうよね」
「ですから地道に私は私のやるべきことを為し、多くの方のお役に立ってこの蒼を貯めていこうと」
「生ぬるい!」
姫が急に、ギッと私を睨みます。
「そんな生っちょろいこと言ってるから、いつまで経っても蒼が増えたり減ったりしてるのよ。貴方がこの調子じゃ、アカリはもう一年待たされる羽目になるわよ」
「だろうなぁ」
コールマンも呆れたように笑います。確かにこのところ王都近辺では大きな問題はあらかた片付けてしまったこともあり、蒼が貯まりにくくなっているのを感じています。
遅々として進まないことに、私も内心焦りを感じていました。
「神官長、貴方の真面目で誠実な部分は美点よ。そりゃあ民の尊敬を一身に集めてるわけだし、神の力の代行者として、貴方がどれだけ清廉であろうと努力してるかなんて、わたくしだって充分に分かっているわ。でも……!」
悔しそうに、悲しそうに、ユーリーン姫は拳を握りしめています。
「貴方だってひとりの人間なのよ。アカリがいなくなってしまってやつれ果ててしまうくらい、ごく普通の人間だわ。……ねえ、神官長。アカリに会いたいんでしょう?」
そんなもの、聞かれるまでもありません。私の答えはアカリが帰ってしまったあの日から、ずっと変わらないのですから。
「会いたいに決まっています。叶うのならば、今すぐにでも」
「それならもっと必死になりなさいよ! なりふりかまわず、この蒼を増やすことを考えなさいよ!」
姫から突きつけられる聖杖の蒼が、姫の言葉と共に私を叱るように、鼓舞するように煌めきます。姫は私に言い聞かせるように、強く言葉を発しました。
「心から欲しいもののために必死になることは、けして悪いことじゃない……!」
その言葉に既視感がある気がして、私はふと笑んでしまいました。敏感にそれを察知した姫が怪訝な顔で私を見ます。
「な、なによ急に」
「いえ……そういえば、女神エリュンヒルダ様にも似たようなお言葉をいただいたことを思い出しました」
言えば、ユーリーン姫とコールマンが顔を見合わせて吹き出しました。
「神官長ったら! 女神様にまでやきもきされていたのねぇ」
「ダメなヤツだなぁ」
本当にその通りです。思わず私も笑ってしまいました。どうやら私は、もっと自分に正直になる必要があるようです。
「ありがとうございます、ユーリーン姫。貴女のおかげで目が覚めました」
「神官長……!」
「王都を離れる許可をいただけませんか? 王都に戻る時間が惜しいのです。街や村をめぐりめぐって、この宝玉を蒼に染めねば」




